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「なあ、ノーザン、うちのパーティーから抜けてくれないか?」
依頼をこなし、ギルド近くの酒場で食事をとっていた夜。冒険者パーティーのリーダーであるシャルドに言われ、僕はフォークを取りこぼした。
「え、何……なにゆえ……?」
「邪魔だからさっさと抜けろって言ってんのよ、そんなことも分からないの、このグズ」
先ほどのシャルドより、何倍もキツイ言い方で、同じくパーティーメンバーである、女シーフのルネイルが言った。シャルドが「言いすぎだ」と彼女をたしなめる、どうにもそれが表面上の、形だけとりあえず、という風にしか見えない。
「魔術師を名乗ってるくせに、たいした魔術が使えないし、貧弱だから荷物持ちもろくに出来ない。絵にかいたような役立たずじゃない! アンタもそう思うでしょ、エリシア」
「い、言いすぎだよぉ、ルネちゃん……」
そうは言うものの、否定はしない、回復魔術師のエリシア。
待て待て待て、どうしてこんな流れになった? ついさっきの依頼まで、普通に冒険者としてやってきたはずだ。
「じょ、冗談じゃろ……?」
「……オレたち、もっと上のランクに行きたいんだ。冒険者パーティーは四人まで。なら……分かるだろ?」
足手まといを切り捨てて、有力なメンバーを入れたい。そう言うことだろう。
上手くやれていると思っていたのは、僕だけだったのか。
「ていうか、あと、アンタ古語なまりキモイんだよ。ろくに魔術使えないのに、口だけは達者って? ウッザ」
「おい、ルネイル!」
仕方ないだろ、と言いたかったが、仕方ない理由を僕は話せない。
ずっと憧れていた、冒険者パーティー。それなのに、こんな形で夢の生活が壊れてしまうなんて……。
「わ、分かった……。脱退、する……」
泣きわめきたい気持ちを抑えながら、僕はそう言い、首から下げた冒険者タグの三枚の内、一枚のプレートを外して渡した。
冒険者タグは、冒険者ギルドに登録してある情報と照会できるプレートと、冒険者ランクを現すプレートの二対で構成されており、どこかのパーティーに加入すると、パーティー構成員である証に一枚のプレートが追加される。
このパーティーに招待されて、初めて貰ったパーティープレートは、嬉しくて貰った日にずっと眺めていたものだ。
それが今、無慈悲にも、シャルドの手によって、真っ二つに割られた。
「……これは、オレがギルドに出しておくから。悪いな、ノーザン」
「いや、こっちこそ……ウン……たいして、役にたてなくて……ウン……すまんかったな……。これ、僕の飯代」
テーブルの上に銅貨を数枚置き、まだ残っている夕食をそのままに、僕は席を立つ。
「それじゃあ、達者でな……」
ふらふらと僕は店を出ようとする。
店を出る瞬間、ずっとすまなそうな顔をしていたはずのシャルドが「役立たずがいなくなってせいせいしたぜ」と言っている声が、聞こえた。
多分、向こうは僕に聞こえないと思って、言ったのだろう。ばっちり聞こえて閉まったが。
振り返ってもよかったが、僕はそのまま走り出し、外へ出る。
走って、走って、誰もいない路地で、僕は泣きながら――古代転移魔術を発動した。
「ちくしょーーーー! もうしらんわーーーー! ばーかばーかぁあああ! 《記録転移(レコード・テレポート)》ぉおお」
どこでもいいから、この場所から逃げ出したくて、隠し続けてきた古代魔術を、惜しげもなく使った。
依頼をこなし、ギルド近くの酒場で食事をとっていた夜。冒険者パーティーのリーダーであるシャルドに言われ、僕はフォークを取りこぼした。
「え、何……なにゆえ……?」
「邪魔だからさっさと抜けろって言ってんのよ、そんなことも分からないの、このグズ」
先ほどのシャルドより、何倍もキツイ言い方で、同じくパーティーメンバーである、女シーフのルネイルが言った。シャルドが「言いすぎだ」と彼女をたしなめる、どうにもそれが表面上の、形だけとりあえず、という風にしか見えない。
「魔術師を名乗ってるくせに、たいした魔術が使えないし、貧弱だから荷物持ちもろくに出来ない。絵にかいたような役立たずじゃない! アンタもそう思うでしょ、エリシア」
「い、言いすぎだよぉ、ルネちゃん……」
そうは言うものの、否定はしない、回復魔術師のエリシア。
待て待て待て、どうしてこんな流れになった? ついさっきの依頼まで、普通に冒険者としてやってきたはずだ。
「じょ、冗談じゃろ……?」
「……オレたち、もっと上のランクに行きたいんだ。冒険者パーティーは四人まで。なら……分かるだろ?」
足手まといを切り捨てて、有力なメンバーを入れたい。そう言うことだろう。
上手くやれていると思っていたのは、僕だけだったのか。
「ていうか、あと、アンタ古語なまりキモイんだよ。ろくに魔術使えないのに、口だけは達者って? ウッザ」
「おい、ルネイル!」
仕方ないだろ、と言いたかったが、仕方ない理由を僕は話せない。
ずっと憧れていた、冒険者パーティー。それなのに、こんな形で夢の生活が壊れてしまうなんて……。
「わ、分かった……。脱退、する……」
泣きわめきたい気持ちを抑えながら、僕はそう言い、首から下げた冒険者タグの三枚の内、一枚のプレートを外して渡した。
冒険者タグは、冒険者ギルドに登録してある情報と照会できるプレートと、冒険者ランクを現すプレートの二対で構成されており、どこかのパーティーに加入すると、パーティー構成員である証に一枚のプレートが追加される。
このパーティーに招待されて、初めて貰ったパーティープレートは、嬉しくて貰った日にずっと眺めていたものだ。
それが今、無慈悲にも、シャルドの手によって、真っ二つに割られた。
「……これは、オレがギルドに出しておくから。悪いな、ノーザン」
「いや、こっちこそ……ウン……たいして、役にたてなくて……ウン……すまんかったな……。これ、僕の飯代」
テーブルの上に銅貨を数枚置き、まだ残っている夕食をそのままに、僕は席を立つ。
「それじゃあ、達者でな……」
ふらふらと僕は店を出ようとする。
店を出る瞬間、ずっとすまなそうな顔をしていたはずのシャルドが「役立たずがいなくなってせいせいしたぜ」と言っている声が、聞こえた。
多分、向こうは僕に聞こえないと思って、言ったのだろう。ばっちり聞こえて閉まったが。
振り返ってもよかったが、僕はそのまま走り出し、外へ出る。
走って、走って、誰もいない路地で、僕は泣きながら――古代転移魔術を発動した。
「ちくしょーーーー! もうしらんわーーーー! ばーかばーかぁあああ! 《記録転移(レコード・テレポート)》ぉおお」
どこでもいいから、この場所から逃げ出したくて、隠し続けてきた古代魔術を、惜しげもなく使った。
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