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 わたしは、イタリさんの考え方ってちょっと変わってますよね、という話をしたかっただけなのだ。……いや、命の恩人に変わってますね、が失礼なのは分かってるんだけど……。
 わたしが困惑した気持ちを共感できればよかった、といえばいいのか。
 でも、コマネさんの驚きようは、また少し違う。わたしが想定していた展開とは、全然違う。

「……適当なことを言って、アルシャ嬢を言いくるめたんじゃないでしょうね」

 疑いの目をコマネさんがイタリさんの方に向けている。真剣な様子の疑惑、というよりは、幾分か、からかうような雰囲気もあるけれど。

「あ、あの、唐突な話ではありましたけど、イタリさんは悪くないです!」

 なんとか弁明しようとしたのに、「本当に何をしたんすか、団長」と、疑いが増したような声でコマネさんがイタリさんを見ている。どうして……?

 疑いの目を向けられているイタリさんは、わたしのように動揺することなく、何一つ取り乱さずに、「だから昨晩言っただろう」と一言だけ言葉にした。
 昨晩言った――周りにイタリさんとの婚約を知られたら、同情されるのはわたしのほう、というやつだろうか。

 あのときはかなり疑わしかったけど……でも、コマネさんの表情を見ると、それが事実なのだと、納得せざるを得ない。

「――アルシャ嬢。君にとって僕は命の恩人かもしれないが、僕のこの国での評価は、おおよそ『怖い人』というものが多い」

 怖い人――怖い人? どのあたりが……? 確かに顔立ちが整っている上に基本的な表情が無表情だから威圧感はあるけれど、怖い、というのは言いすぎじゃないだろうか。

「自覚があるならもう少し直してくださいよ」

 コマネさんの言葉には、イタリさんが言ったことを否定するような色はなく、むしろ、全面的に肯定していた。
 え、これ、わたしの方がおかしいの……? 言葉が通じない生活でおびえながら生きてきたから、恐怖の感覚が麻痺しているというのだろうか。

「アルシャ嬢も、団長に話しかけにくいでしょう?」

 コマネさんの言葉に、わたしは少し迷って首を横に振った。
 イタリさんが怖くない、ということを主張することで、イタリさんの評価がもう少しいいように変わらないかな、という、期待を込めて。
 なんて、思っていたのだが。

「……まあ、あれだけの目にあったのだ。多少のことは怖くなくなるだろう」

 イタリさんには全然通じなかった。そうじゃないのに!
 わたしなんかの意見一つじゃなにも変わらないというのか……。
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