言葉の通じない世界に転生した侯爵令嬢は、気が付いたら婚約破棄されて獣人騎士の新しい夫に愛されてました

ゴルゴンゾーラ三国

文字の大きさ
上 下
26 / 42

23

しおりを挟む
 ――……ん? 一度目? 一度目って何? 日をまたいでいないはずなんだけど……。

「しかし、僕自身が見たもの、君の様子を見ても、君が嘘を言っているようには思えない。そこで、再度ソルテラ家に話を持ちかけたんだ」

「――……話の腰を負って申し訳ないんですが……一度目、とか、再度、とか、どういうことですか?」

 この世界、前世みたいに、メールや電話でひょいっと簡単に長距離のやりとりが出来るような世界じゃなかったと思ったんだけど……。
 しかし、イタリさんはなんてことない、とでも言いたげに説明してくれた。

「確かに現代の通信機では、通話者が両方とも同じ国内に居なければ出来ない。技術的にも、法律的にも。しかし、ヴェスティエ王国とラトソール王国は陸地で繋がっている。中間に人を立てればいいだけのこと」

 いや、いいだけのこと、と言われても……。
 つまり、ソルテラの屋敷に直接出向いた人と、国境ぎりぎりでそのソルテラ家に直接交渉した人とイタリさんを繋いだ伝言役がいる、ってこと? よくそこまでするな……。

「ちなみに、ソルテラ家の屋敷に向かわせた人ってどこから来たんです?」

 わたしがソルテラ家の屋敷から、ミステラなんとかに向かうまで、馬車で何日もかかった。半日でどうこう出来る距離じゃない。直接会ったわけじゃなくて、対話も通信機器で済ませたんだろうか?
 ――なんて、思っていたのだが。

「世の中、知らなくてもいいことがある。むしろ、知らない方がいいことだらけだ」

 そんな風にはぐらかされてしまった。
 それってつまり、この国の騎士団と連絡を取るような人がソルテラ家の近くに居た、ってことだよね。もしかして、その、スパイ的な何某で、ラトソールのいたるところにそんな人がいたり、する、のか……?

 ――……。
 深く考えるのは辞めよう。

「すみません、続きをどうぞ」

 わたしが思った疑問を全てぶつけていったら、知らなくていいことまで知って、消されてしまいそうな気配がした。イタリさんのことだから、はぐらかしてはくれると思うけど、なんの力も後ろ盾もないのだから、余計なことは聞かないに限る。
 イタリさんも、賢明な判断だ、とでも言いたげな表情で続きを話してくれた。

「一度目は騎士団がアルシャ・ソルテラらしき人物を保護した、ということで、確認を取ったが、二度目は家名――ウィンスキーの名前を出した。君が死んだアルシャ嬢になりすました村娘だということになったら、君は何者でもなくなり、この家に置いておけないどころか、不審者として国から追い出さないといけなくなるからな」

 その言葉に、わたしはごくりと唾を飲み込んだ。追い出されるのは非常に困る。言葉が通じないあの国に戻ったところで、行き倒れになってそのまま死ぬ未来しか想像出来ない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結済】後悔していると言われても、ねぇ。私はもう……。

木嶋うめ香
恋愛
五歳で婚約したシオン殿下は、ある日先触れもなしに我が家にやってきました。 「君と婚約を解消したい、私はスィートピーを愛してるんだ」 シオン殿下は、私の妹スィートピーを隣に座らせ、馬鹿なことを言い始めたのです。 妹はとても愛らしいですから、殿下が思っても仕方がありません。 でも、それなら側妃でいいのではありませんか? どうしても私と婚約解消したいのですか、本当に後悔はございませんか?

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

加護を疑われ婚約破棄された後、帝国皇子の契約妃になって隣国を豊かに立て直しました

ファンタジー
幼い頃、神獣ヴァレンの加護を期待され、ロザリアは王家に買い取られて王子の婚約者となった。しかし、侍女を取り上げられ、将来の王妃だからと都合よく仕事を押し付けられ、一方で、公爵令嬢があたかも王子の婚約者であるかのように振る舞う。そんな風に冷遇されながらも、ロザリアはヴァレンと共にたくましく生き続けてきた。 そんな中、王子がロザリアに「君との婚約では神獣の加護を感じたことがない。公爵令嬢が加護を持つと判明したし、彼女と結婚する」と婚約破棄をつきつける。 家も職も金も失ったロザリアは、偶然出会った帝国皇子ラウレンツに雇われることになる。元皇妃の暴政で荒廃した帝国を立て直そうとする彼の契約妃となったロザリアは、ヴァレンの力と自身の知恵と経験を駆使し、帝国を豊かに復興させていき、帝国とラウレンツの心に希望を灯す存在となっていく。 *短編に続きをとのお声をたくさんいただき、始めることになりました。引き続きよろしくお願いします。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

【完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。 ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの? お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。 ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。 少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。 どうしてくれるのよ。 ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ! 腹立つわ〜。 舞台は独自の世界です。 ご都合主義です。 緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...