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第六部
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こわ……えっ、こわ……。
わたしはベッドの横に腰かけたまま、イエリオの手首を握って脈を計った。……うん、大丈夫、死んでない。生きてる生きてる。
わたしがイエリオの脈をはかっているのに気が付いた師匠が「もう解くから大丈夫」と言った。これから解く、と言っている時点で少し信用できない。今すぐにでも解いてくれ。
「君を攫って手籠めにしたのなら全員漏れなく殺してやろうと思ったけど」
だから言っていることが過激すぎるんだよ! そして同時に、簡単にそれを実行できてしまうだけの力を持っているから余計に怖い。
「絶対やめてくださいよ! それに手籠めって、まだ最後までしてないし!」
「ほう、『まだ』『最後まで』……ね。……やっぱり殺しておこうかな」
声音こそ冗談めいているが、目が笑っていない。
「セクハラ!」
「お前が言い出したんだろう」
いや、手籠めとか言い出したのは師匠の方だ。
「……もう帰る」
寝ているイエリオを担いで帰るのは大変そうだが、前例がないわけじゃない。気絶して意識のないイエリオを担いで動くのは本当に大変だったけど、やってやれないことはなかったので、頑張ればいける。
「ここ、どこですか。どうやって出るんです」
「どこ……か。今だと――確か東の森、とか呼ばれていたな。あそこの家の地下だよ」
「地下?」
東の森にあった家。イエリオが遺跡だと呼んでいた、あの家のことだとは思うけど……地下に続く階段なんてあっただろうか。探すのが甘かったか。でも、隠れる場所はないかと、扉は一通り開けた記憶があるんだけど。
――いや、一か所だけ、あった。
クローゼットだと思われる、折れ戸の扉。あそこは開けられていない。シャシカさんの殺気が凄かったから。
……そう言えば、ベッドの下に潜って隠れていたとき、あの扉から誰か出てきて、また戻っていくのが見えたはず。あの折れ戸の先に何があるか確認していなかったから、あの脚の持ち主もまた、クローゼットの中に隠れていたのかと思っていたけれど……もしかしたら、あそこが地下へ繋がる扉だった、ということだろうか。
オカルさんだけでなく、シャシカさんもまた、師匠の協力者だった、ということか。だとするならば――シャシカさんは、あの扉をずっと、守っていたのか。謎の護衛依頼を受けていたはずだったけど、依頼主は師匠だったのか。
師匠が護衛依頼の依頼主だった、というのなら、納得もいく。
わたしを殺しかけた後に再開したシャシカさんは、随分とぼろぼろだった。わたしのせいだ、と彼女は言っていたけれど……あの傷をつけたのが、師匠、ということなのか。
こうしてイエリオを攫い、殺そうとしていたくらいだ。わたしに害をなそうとした彼女を痛めつけてしまうくらい、あり得ない話ではない。
わたしはベッドの横に腰かけたまま、イエリオの手首を握って脈を計った。……うん、大丈夫、死んでない。生きてる生きてる。
わたしがイエリオの脈をはかっているのに気が付いた師匠が「もう解くから大丈夫」と言った。これから解く、と言っている時点で少し信用できない。今すぐにでも解いてくれ。
「君を攫って手籠めにしたのなら全員漏れなく殺してやろうと思ったけど」
だから言っていることが過激すぎるんだよ! そして同時に、簡単にそれを実行できてしまうだけの力を持っているから余計に怖い。
「絶対やめてくださいよ! それに手籠めって、まだ最後までしてないし!」
「ほう、『まだ』『最後まで』……ね。……やっぱり殺しておこうかな」
声音こそ冗談めいているが、目が笑っていない。
「セクハラ!」
「お前が言い出したんだろう」
いや、手籠めとか言い出したのは師匠の方だ。
「……もう帰る」
寝ているイエリオを担いで帰るのは大変そうだが、前例がないわけじゃない。気絶して意識のないイエリオを担いで動くのは本当に大変だったけど、やってやれないことはなかったので、頑張ればいける。
「ここ、どこですか。どうやって出るんです」
「どこ……か。今だと――確か東の森、とか呼ばれていたな。あそこの家の地下だよ」
「地下?」
東の森にあった家。イエリオが遺跡だと呼んでいた、あの家のことだとは思うけど……地下に続く階段なんてあっただろうか。探すのが甘かったか。でも、隠れる場所はないかと、扉は一通り開けた記憶があるんだけど。
――いや、一か所だけ、あった。
クローゼットだと思われる、折れ戸の扉。あそこは開けられていない。シャシカさんの殺気が凄かったから。
……そう言えば、ベッドの下に潜って隠れていたとき、あの扉から誰か出てきて、また戻っていくのが見えたはず。あの折れ戸の先に何があるか確認していなかったから、あの脚の持ち主もまた、クローゼットの中に隠れていたのかと思っていたけれど……もしかしたら、あそこが地下へ繋がる扉だった、ということだろうか。
オカルさんだけでなく、シャシカさんもまた、師匠の協力者だった、ということか。だとするならば――シャシカさんは、あの扉をずっと、守っていたのか。謎の護衛依頼を受けていたはずだったけど、依頼主は師匠だったのか。
師匠が護衛依頼の依頼主だった、というのなら、納得もいく。
わたしを殺しかけた後に再開したシャシカさんは、随分とぼろぼろだった。わたしのせいだ、と彼女は言っていたけれど……あの傷をつけたのが、師匠、ということなのか。
こうしてイエリオを攫い、殺そうとしていたくらいだ。わたしに害をなそうとした彼女を痛めつけてしまうくらい、あり得ない話ではない。
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退会済ユーザのコメントです
とっても面白くて一気に読んでしまいました!!
これからも応援しています!☺️✨