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第六部

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 皆と話ができて、一か月くらいが経った。わたしが甘い雰囲気になると挙動不審になるからか、話をする前と、さほど変わりがない。分かりやすい、いかにも恋人や夫婦なようなスキンシップが少し増えたくらいだろうか。
 ここまで来るのに、既に一年以上経っているから、急がなくていい、とか、思ってくれているのかもしれない。

 こうしてスキンシップが増えると、四人が四人とも、反応が違うのが分かる。
 四人のうち、フィジャが一番積極的にアピールしてくる。言葉でも、行動でも。人懐っこい性格が分かりやすく出ている。

「マレーゼ、おはよぉ」

 ――こんな風に、よく抱き着いてくる。特に後ろから。

 びっくりして、顔を拭いているタオルを落とすところだった。

 最初のうちは、試し行動というか、抱き着いたり、頬にキスをしてきたり、そういうスキンシップの後に、わたしの様子をうかがうような視線を何度か感じたが、照れくささに負けないよう、頑張って同じように返していたら、それもすっかりなくなった。

 イエリオとか、他の誰かといるときは、ためらいなくひっついてくるくせに、二人きりだとちらちらと気にしているようだったから、頑張ったかいがあるというものだ。
 嬉しそうに、にこにことしているのを見ると、こういうのは下手に恥ずかしがらないほうがいいな、と思わされる。 

「……おはよ」

 わたしはタオルを片し、後ろから抱き着いているフィジャの頭を撫でる。フィジャとわたしはほとんど身長が変わらないので、わたしの頭のすぐ近くに頭がるので撫でやすい。

「今日、起きるの早いね? 休みでしょ?」

 今日はお店は定休日。フィジャは休みの日は普段より遅く起きるタイプなので、いつもと同じ時間に起きてくるとは思わなかった。

「ああ、うん。今日はデリバリー頼まれてるんだ」

 デリバリー? フィジャのお店でそんなのやってたっけ、と思ったら、どうやらウィルフに頼まれたらしい。なんでも、仕事中に怪我をした先輩の代わりに、連勤することになってしまって、昼食を持ってきてほしい、と言われたのだとか。

「いつも使ってるお店、今日が臨時休業なんだって」

「他のお店じゃ駄目なの?」

「目立つから嫌なんだって」

 言われてみれば、確かに、ウィルフさんと一緒にご飯屋に行くときは、客席が個室になっていたり、パーテーションでしっかり区切られていたり、視線が他の客に生きにくいような店ばかりだった気がする。全然気が付かなかった。

「今日暇だし、届けに行こうかなって。マレーゼも行く?」

 今日はわたしも特に用事はない。折角だし、作るところから一緒にやろうかな、と、フィジャの提案を受け入れることにしたのだった。
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