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第六部

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 某日。わたしは久々に、ルーネちゃんとカフェに来ていた。すごく久しぶりな感じがする。いや、実際に久しぶりか。ここ一、二か月は、引っ越しだの、フィジャのお店だのでバタバタしていて、遊びに行く精神的な余裕がなかった。……皆のことも、意識してばっかりだったし。

 今日のカフェは、初めて来たところだけど、やっぱりルーネちゃんが選ぶだけあって、ゆめかわな雰囲気がある。リボンたっぷり、ピンクたっぷり、女の子! という雰囲気のお店。

「と、いうわけで、その……なんとか、なりました」

 散々ルーネちゃんには相談させて貰っていたから、無事になんとかなった、という報告を今日、していた。
 長いまつげをぱちぱちと、ルーネちゃんは驚いたように目を瞬かせていた。

「もうとっくに解決したんだと、ルー……こほん、私、思ってました」

「エッ」

 ルーネちゃんのまさかの発言に、わたしのほうがびっくりしてしまう。

「眼鏡――ああ、えっと、イエリオさん、だったかな。うん、そう、そのはず。えっと、イエリオさんを調べているときに、マレーゼちゃんが命がけで助けたって話、聞きましたし、冒険者ウィルフの報告書にも、命かけて戦っていた、助けて貰ったと書かれていましたし」

 前者の話は分かるが、後者の話は初耳である。ウィルフ、そんなこと書いてたのか……。

「大事な夫だから命をかけて助けたのだとばかり、ル、私は思ってた……んですけど」

 えっ違うの? と言いたげなルーネちゃんの表情が、だんだんと見れなくなる。ちょっと……だいぶ……かなり恥ずかしい。

「違うんですか?」

「ち……違わない、けどぉ」

 大事、ではあった。あのときから、夫婦としてやっていくなら、皆を大事にしよう、という思いは、あった。
 でも、それは恋愛感情じゃなくて、こう……わたしという人間を変えてくれたから、しっかり向き合いたい、という思いでそうなっただけで……。

 ――……本当に、そうなのかな。

 ただそれだけだったら、あそこまで、必死になったのだろうか。わたしって、そんなに義理堅い人間だったっけ。
 もしかしたら、もう、だいぶ前から、彼らのことを好きだったのかもしれない。恋愛的な意味で。ただ、一夫一妻が当たり前だから、気が付けなかっただけで。

 自分でも気が付かなかった心の変化を分かりやすくルーネちゃんの指摘され、いたたまれない。

「ふふ、恋っていいですね」

 珍しくからかうような、ルーネちゃんの声。
 わたしはその声に、反論出来なかった。彼女の言うことに、どこか納得してしまったので。
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