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第六部

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 片付けをすませ、三人で昼食をすませるものの、微妙に気まずい雰囲気はぬぐえない。気まずい、というよりは、気恥ずかしい、だろうか。大切にする、という気持ちに変わりはないけれど、男として意識してしまうと、どうにも、駄目なのだ。

 こんな中で、文献を、と言われても、ちゃんと伝えることが出来るかな……なんて考えていたのだが、それは杞憂に終わった。

 読めないのである。

 イエリオが持ってきた文献は、どれもこれも、シーバイズ語で書かれたものではなかった。わたしはシーバイズ語以外は読めないのでどうしようもない。

「ええと……ごめん、イエリオ、これは読めないや。シーバイズ語じゃないっぽい」

「そうですか……」

 分かりやすく落胆するイエリオ。物が物だけに、なんとか読み解ければ良かったんだけど。

「どうにも、超大災害が起きたとされる時期より後の文献は、シーバイズ語のものが少ないようで……。似たような文字を探してきたんですが。でも、シーバイズ語じゃないとハッキリ分かっただけでも一歩前進でしょうか」

「…………」

 わたしはイエリオの言葉に黙ってしまった。もし、本当に師匠が魔法で超大災害を起こして、世界を滅ぼしたとなれば、おそらく中心地はシーバイズだろう。
 物はある程度残っても、シーバイズ語を知る人間は皆死んでしまったのかもしれない。
 そんなこと、考えたくもないけど。

 しかし、こうも、獣人と人間の間に子供が出来るかどうか分からないとなるとな……。逆に、獣人がどれだけ人間に近いか、という方面で調べるしかないんだろうか。
 確か、獣人は、魔法使いが魔法で動物を人間に変えたのが始まりだと聞いたし、その魔法の仕様が分かればある程度は予測が立つだろう。魔法陣や研究書があれば手っ取り早いんだけど。
 魔法の勉強は好きだったので、解析とか自体は結構得意な方なのだ。再現出来るかはまた別の話だが。

 後はまあ、最終手段として出来るまで試す、とか……。

 ……い、いや、これは本当に最終手段。これを言うのは、わたしにはまだ早い。早すぎる。
 でも結局はそこに行きついてしまうというか……だって、例えば人間と猿獣人だったら子供が出来るけど、人間と兎獣人とだったら出来ない、とかあるかもしれない。でも、前者の証拠しかなくて、出来ると思っていたら……みたいなことも考えられる。

 個人的には、蛇獣人で元々爬虫類系統のフィジャと、元魔物で、獣人よりさらに動物に近かったウィルフあたりはちょっと怪しいと思っている。哺乳類同士ならまだなんとかなりそうな気もするのだが……。いや、でも、ウィルフが希望〈キリグラ〉で獣人になっているのなら、そこの心配はない……のか?

 獣人同士でかけ合わさっているといっても、人間に近いほどモテる獣人なら、モテる獣人同士の子供はより人間に近くなる、となるなら、そういう獣人となら人間相手でも子供が出来る可能性が高まりそうだよなあ。

 そう考えると、魔法で獣人になった直後よりも、今の方がよっぽど人に近い……? 獣人が生まれて千年も経っているわけだし。

 獣人の先祖――。

 そこまでぐるぐると考えて、ふと、気が付く。
 獣人と人間の子供以前に、そもそもわたしが子供出来るの? という疑問に。
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