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第六部
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翌日、目を覚ますと随分と外が明るかった。朝、とはもう言えないような時間だ。
結局、なかなか寝ることが出来なくて、何度も寝返りして。あー、外が白み始めたなあ、なんて窓を見たあたりまでは覚えている。その後の記憶が全くないので、明け方にようやく眠ったのかもしれない。
この時間だと、もう皆仕事行っちゃったかな、なんて思いながらわたしは一応、リビングへと向かう。フィジャのお店はまだ開店していないので、準備をしていなければリビングにいるかも……と少しばかり緊張してリビングの扉を開けたが、そこには誰もいない。
少しばかりホッとするのと同時に、さみしさと、罪悪感が湧き出てくる。皆仕事してるのに、わたしばかり何もしていない……。
部屋の掃除でもしようかな、と思う反面、引っ越してきてそこまで時間が経っていないので、すぐに掃除も終わってしまいそうだ。
フィジャのお店が開店したら手伝うことにはなっているので、暇なのもあと一か月もないが、かといってだらだらしているのは時間がもったいないように思う。
とりあえず今は掃除でもしておこうかな、と思いながら、物置部屋へ足を運ぶ。今の時間、朝食には遅いし、昼食には早い。掃除でもして時間を潰そう。
物置部屋、と言っても、二人入ればもう満員、というくらいの、小さな場所だ。掃除用具とか、共用で使うもののストックが置かれている。
「……高いな」
わたしは洗剤を取ろうとして、棚を見上げてしまった。随分と高い位置に使いかけの洗剤がある。場所的に、イエリオかウィルフが置いたに違いない。あの二人は高身長なので、彼らが置きやすい高さに物を置かれると、わたしは届かないのだ。
フィジャとイナリだったら、わたしとそこまで身長がかけ離れていないので、わたしが届かないような場所に置かないし。
背伸びをすると、ギリギリ届きそうで届かない。キャップはしっかり閉まっているようだから、底にさえ指が届けばなんとか取れると思うんだけど……。
「あと、ちょっと……」
指先が底に届き、あとは引っ張るだけ、というとき――。
「おや、これですか?」
「ひゃっ!? でっ!」
ひょい、と背後から手が伸びてくる。あまりにびっくりしてしまい、恥ずかしくなるくらい、肩が跳ねたのが分かる。
ついでに膝を棚に強打した。痛い。
「な、なに……」
わたしは膝をすりながら振返る。そこにはイエリオがいて。
「び、びっくりした……。今日休み?」
「はい。ああ、すみません、驚かせるつもりはなかったんですが……」
誰もいない、と思ったのは勘違いだったらしい。たまたまわたしがリビングに入ったタイミングでは誰もいなかっただけのようだ。
シフト制で働いている人ばかりだし、情報共有出来るようにリビングにカレンダーでも置いて、休日と仕事の日を書いておいて貰おうかな……なんて考えていると、ふと気が付く。
「最近、休み多いね?」
前のお店を辞めて、開店準備をしているフィジャとは違い、イエリオは同じ仕事を続けているはず。なのに、以前、居候刺せてもらっていたときよりも、家にいる時間が増えているような気がする。
「元々休日返上で研究所に行くことが多かったもので。溜まっている代休を、このさい消化してしまおうかと思いまして」
「ああ、成程……」
仕事自体が好きなことのイエリオは、休日もなしに働く姿が簡単に想像できる。
……と、いうことは、しばらく日中、彼と過ごす時間が増えるということだろうか。
なら、今、話をするのに絶好のタイミングなのでは……とわたしは気が付き、イエリオから渡された洗剤を、つい、ぎゅっと握りしめてしまった。
結局、なかなか寝ることが出来なくて、何度も寝返りして。あー、外が白み始めたなあ、なんて窓を見たあたりまでは覚えている。その後の記憶が全くないので、明け方にようやく眠ったのかもしれない。
この時間だと、もう皆仕事行っちゃったかな、なんて思いながらわたしは一応、リビングへと向かう。フィジャのお店はまだ開店していないので、準備をしていなければリビングにいるかも……と少しばかり緊張してリビングの扉を開けたが、そこには誰もいない。
少しばかりホッとするのと同時に、さみしさと、罪悪感が湧き出てくる。皆仕事してるのに、わたしばかり何もしていない……。
部屋の掃除でもしようかな、と思う反面、引っ越してきてそこまで時間が経っていないので、すぐに掃除も終わってしまいそうだ。
フィジャのお店が開店したら手伝うことにはなっているので、暇なのもあと一か月もないが、かといってだらだらしているのは時間がもったいないように思う。
とりあえず今は掃除でもしておこうかな、と思いながら、物置部屋へ足を運ぶ。今の時間、朝食には遅いし、昼食には早い。掃除でもして時間を潰そう。
物置部屋、と言っても、二人入ればもう満員、というくらいの、小さな場所だ。掃除用具とか、共用で使うもののストックが置かれている。
「……高いな」
わたしは洗剤を取ろうとして、棚を見上げてしまった。随分と高い位置に使いかけの洗剤がある。場所的に、イエリオかウィルフが置いたに違いない。あの二人は高身長なので、彼らが置きやすい高さに物を置かれると、わたしは届かないのだ。
フィジャとイナリだったら、わたしとそこまで身長がかけ離れていないので、わたしが届かないような場所に置かないし。
背伸びをすると、ギリギリ届きそうで届かない。キャップはしっかり閉まっているようだから、底にさえ指が届けばなんとか取れると思うんだけど……。
「あと、ちょっと……」
指先が底に届き、あとは引っ張るだけ、というとき――。
「おや、これですか?」
「ひゃっ!? でっ!」
ひょい、と背後から手が伸びてくる。あまりにびっくりしてしまい、恥ずかしくなるくらい、肩が跳ねたのが分かる。
ついでに膝を棚に強打した。痛い。
「な、なに……」
わたしは膝をすりながら振返る。そこにはイエリオがいて。
「び、びっくりした……。今日休み?」
「はい。ああ、すみません、驚かせるつもりはなかったんですが……」
誰もいない、と思ったのは勘違いだったらしい。たまたまわたしがリビングに入ったタイミングでは誰もいなかっただけのようだ。
シフト制で働いている人ばかりだし、情報共有出来るようにリビングにカレンダーでも置いて、休日と仕事の日を書いておいて貰おうかな……なんて考えていると、ふと気が付く。
「最近、休み多いね?」
前のお店を辞めて、開店準備をしているフィジャとは違い、イエリオは同じ仕事を続けているはず。なのに、以前、居候刺せてもらっていたときよりも、家にいる時間が増えているような気がする。
「元々休日返上で研究所に行くことが多かったもので。溜まっている代休を、このさい消化してしまおうかと思いまして」
「ああ、成程……」
仕事自体が好きなことのイエリオは、休日もなしに働く姿が簡単に想像できる。
……と、いうことは、しばらく日中、彼と過ごす時間が増えるということだろうか。
なら、今、話をするのに絶好のタイミングなのでは……とわたしは気が付き、イエリオから渡された洗剤を、つい、ぎゅっと握りしめてしまった。
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