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第六部

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「そ、それで、えっと、あの……」

 次は何を言おう。わたしは、力の抜けた手を組んで、ぎゅっと握りしめた。

「は、話を立ち聞きしてて申し訳ないって、何度でも言うけど、あの、わたしが複数人の恋愛に向いていそう、ってフィジャが話していたところも聞いちゃって、それで――ふぃ、フィジャの言葉を信じようかな、って思って……」

 言ってから、会話の流れが支離滅裂で繋がっていないことに気が付いた。言いたいことが一杯あるのだ。思いついたままに話しかけていたらこうなる。
 時間をかければ順序立てて話すことも出来るだろうけど、わたしは、全部フィジャに伝えることを選んだ。

「わたしは、わたし自身が一夫多妻とか、一妻多夫とか、そういう制度に馴染めるか自信がないけど、でも、フィジャの言葉なら、信じられる、っていうか……」

 フィジャの言葉なら信じられる――というか、わたしはフィジャたちの誰かに「大丈夫」と言って欲しかったのだと思う。すごく情けないことではあるが。
 でも、複数人での恋愛を知らないわたしの背中を押してくれるには、十分な言葉だった。

「そ、それに、その……だ、誰かにフィジャを取られたくない、って思っちゃった、というか、あの、いや、フィジャだけじゃないけど、具体例がいるのがフィジャだけだから、こういう言い方になるっていうか」

 本当なら、わたしじゃない誰かが、フィジャ達を幸せにしたのかもしれない。わたしみたいに、希望〈キリグラ〉で、丁度よさげな女として用意されたわたしなんかじゃなくて。ひとり一人、それぞれを愛してくれるような人が、個々に出来たかもしれない。
 今よりもっと、素敵な未来が、皆にはあったかもしれない。

 そう思うこと自体が最低なことではあるけれど、変にネガティブになって、そんなことを考えずにはいられない。

 でも、そんな未来が嫌だと思ってしまったなら――もう、覚悟を決めるしかない。

「わたし、皆がいなくなるの、嫌よ。フィジャも、イエリオも、ウィルフも、イナリも、誰一人、他の女に取られたくないって、思っちゃったの」

 ずっと、わたしで良かったのかな、って、思い悩むかもしれない。文化に馴染めなくて、正しいのかどうか、気にし続けるかもしれない。
 千年という時の壁と、種族の差は、いつまでもわたしについて回るだろう。

 それでも――今は、フィジャの言葉を信じたい。

「今更、こんなことを言うのも変だけど――わたしと、結婚してください」

 全て言い切って、わたしはようやく顔を上げた。
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