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第六部
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「気に入った?」
フィジャがわたしに聞いてきた。
シンプルめで、確かにわたしが好きな感じのネックレスだ。主張が激しくないから、どんな服でもあいそう。
「うん、すごくいいと思う。……でも、急にどうしたの?」
新居に引っ越した記念、なんだろうか。不思議に思っていると、「忘れたの?」とイナリが、自身の首をトントンとつついた。
「オーダーメイドのやつ。ようやく出来たから、昨日、取りに行ったんだよ」
オーダーメイド。イナリの仕草も合わせて、ようやく思い出す。
これ、最初に皆で首輪を買いに行ったときのやつなんだ。確かに、わたしは店舗で購入したけど、フィジャたちはオーダーメイドを注文していた。
いろんなことがあって、すっかり忘れてしまっていた。
「あ、ま、待って! わたしも持ってくる」
わたしはネックレスを片手に、自分の部屋へと戻る。皆に買ったチョーカー。魔法付与は済ませてあるので、いつでも渡せる状態だ。
すぐに取り出せる場所に置いてあったのはいいが――紙袋を持って、そう言えば包装をしていないことに気が付いた。もちろん、むき出しで置いているわけではなく、ケースには入っているけれど、フィジャたちのように、綺麗なラッピングをしているわけじゃない。
でも、持ってくる! と行ってしまった手前、手ぶらで戻るのもどうかと思い、わたしは紙袋のままリビングへと戻った。
「ご、ごめん、ラッピングまだだった……」
一応、そう断りを入れる。魔法付与を終わらせたら、すぐにラッピングをしておけばよかった。でも、皆気にした様子はない。
「じゃあ、マレーゼがつけてよ!」
そう笑ったのはフィジャだ。「つけて貰う分には平等でしょ」と言う。まあ、フィジャには皆に内緒で一度つけているんだけど。わざわざ言う必要もないので、言わないが。
「皆がいいなら……」
わたしがそう言うが、当然、皆から文句の言葉は出てこない。
「つけてもらう順番は、平等にじゃんけんで決めましょうか」
イエリオの提案で、順番が決まる。一番に勝ったのは、フィジャだった。ちょっとだけ、笑顔がひきつっている。
一度、内緒で付けたことがある手前、最初を譲ろうとしたのかもしれない。でも、既につけたことがある、というのは秘密だし、言えないのだろう。折角勝ったのに、わざわざ譲ると言い出したら、不自然でしかない。
少しだけ気まずさを滲ませながらも、フィジャが、「マレーゼ、お願い」と椅子に座って、軽く髪を上げてうなじを見せてくる。
二度目だから、すぐ付けられるかな、なんて思っていたのに、妙に緊張して、手先が震えていた。
フィジャがわたしに聞いてきた。
シンプルめで、確かにわたしが好きな感じのネックレスだ。主張が激しくないから、どんな服でもあいそう。
「うん、すごくいいと思う。……でも、急にどうしたの?」
新居に引っ越した記念、なんだろうか。不思議に思っていると、「忘れたの?」とイナリが、自身の首をトントンとつついた。
「オーダーメイドのやつ。ようやく出来たから、昨日、取りに行ったんだよ」
オーダーメイド。イナリの仕草も合わせて、ようやく思い出す。
これ、最初に皆で首輪を買いに行ったときのやつなんだ。確かに、わたしは店舗で購入したけど、フィジャたちはオーダーメイドを注文していた。
いろんなことがあって、すっかり忘れてしまっていた。
「あ、ま、待って! わたしも持ってくる」
わたしはネックレスを片手に、自分の部屋へと戻る。皆に買ったチョーカー。魔法付与は済ませてあるので、いつでも渡せる状態だ。
すぐに取り出せる場所に置いてあったのはいいが――紙袋を持って、そう言えば包装をしていないことに気が付いた。もちろん、むき出しで置いているわけではなく、ケースには入っているけれど、フィジャたちのように、綺麗なラッピングをしているわけじゃない。
でも、持ってくる! と行ってしまった手前、手ぶらで戻るのもどうかと思い、わたしは紙袋のままリビングへと戻った。
「ご、ごめん、ラッピングまだだった……」
一応、そう断りを入れる。魔法付与を終わらせたら、すぐにラッピングをしておけばよかった。でも、皆気にした様子はない。
「じゃあ、マレーゼがつけてよ!」
そう笑ったのはフィジャだ。「つけて貰う分には平等でしょ」と言う。まあ、フィジャには皆に内緒で一度つけているんだけど。わざわざ言う必要もないので、言わないが。
「皆がいいなら……」
わたしがそう言うが、当然、皆から文句の言葉は出てこない。
「つけてもらう順番は、平等にじゃんけんで決めましょうか」
イエリオの提案で、順番が決まる。一番に勝ったのは、フィジャだった。ちょっとだけ、笑顔がひきつっている。
一度、内緒で付けたことがある手前、最初を譲ろうとしたのかもしれない。でも、既につけたことがある、というのは秘密だし、言えないのだろう。折角勝ったのに、わざわざ譲ると言い出したら、不自然でしかない。
少しだけ気まずさを滲ませながらも、フィジャが、「マレーゼ、お願い」と椅子に座って、軽く髪を上げてうなじを見せてくる。
二度目だから、すぐ付けられるかな、なんて思っていたのに、妙に緊張して、手先が震えていた。
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