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第五部

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 二週間ある祝集祭も折り返し。それでも、やはり毎年ある祭りじゃないからか、それとも全員が同じ日に家族と集まるわけじゃないからか、一週間経っても依然として街は賑やかなままだ。

 今日はフィジャと待ち合わせ。本当は最終日付近が忙しくなるイナリの方と先に、という話の流れだったが、今日じゃないとフィジャの都合がつかないので、今日になったのだ。
 なったのだが……。

「や、やばい、ここどこ……?」

 わたしは絶賛迷子だった。迷子になってもいいようにと、祝集祭の待ち合わせには、早めに家から出るようにしていたのに。街中は屋台であふれていて、普段と様子が全然違うから、絶対迷うだろうな、と思って。

 イエリオとウィルフのときはちゃんと待ち合わせの時間までにたどり着けていたから、慢心していたのかもしれない。
 フィジャとの待ち合わせは、あんまり知らない場所じゃなかった。何度か行ったことのある場所。だから、余計に気が抜けてたのかも。

「やばいやばい……」

 街中にある時計を見れば、待ち合わせ時間を既に過ぎていた。
 さっきから人に聞いているのに、普段なら道案内の目印になるようなものが、立ち並ぶ屋台に隠れていくつも消えていて、わたしは道を行ったり来たりしていた。そして、多分、何度か道を一本間違えて、元の道にすら戻れなくなっている気がする。

 わたしの迷子癖は皆知っているから多分、今待ち合わせ場所にいるフィジャは、迷子になってるんだろうなぁ、と思っているかも知れないが、フィジャの家族はそうじゃない。
 もうここまで来たら、方向音痴を認めざるを得ない。方向音痴でいいから、とにかくフィジャのところへ行きたかった。

「あ、あのっ! すみません」

 わたしはすぐ近くにいた、赤髪の人に声をかける。もう何人に声をかけたのかさっぱりだ。

「サルマン通りの公園ってどう行けば――」

「あれ、あんた……」

 えっ、と思わず、言葉を止めてしまった。明らかに、わたしを知っているような反応である。
 誰だっけ……。

「あんた、フィジャの嫁だろ」

「え、あ、はい……」

 フィジャの知り合い? あ、でも、確かにどこかで見たことあるような……。
 わたしが、この赤髪の男性が誰なのか、いまいちピンときてないことが、表情で伝わったらしい。

「俺だよ、俺。トゥージャ」

 トゥージャ……。あっ、フィジャの兄弟の人だ!?
 言われて分かれば、確かに工務店で見た顔だった。

 そう言えば、今日の集まりには、フィジャの両親とトゥージャさんが来るって、フィジャが言っていたっけ。フィジャと会うよりも先にトゥージャさんに会ってしまうとは……。

 でも、助かった。トゥージャさんだったら、フィジャとも会うんだから、待ち合わせ場所まで連れて行って貰っても問題ないだろう。
 わたしは、ほぼ初対面にも関わらず、「迷子なので助けてください!」と彼に頼み込むのだった。
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