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第五部
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イエリオの一家と会って、数日。今日はウィルフと出かける日だった。といっても、彼の両親は街にいない為、街を散策するだけである。
正直、すごく楽しみだけど。
イエリオやフィジャ、イナリの両親と会うのが嫌、というわけじゃない。それはそれで、緊張するけど、同時に楽しみ、という気持ちがある。
でも、会う場所が決まっていて、そこで食事会をすることになっているから、街を歩くことはないのだ。
折角あれこれ屋台がでてお祭りモードなのに、屋台を楽しめないのは残念だと思っていたのだが、ウィルフが「俺は両親とかいねえから、適当に街を周るだけになるぞ」と言ったのだ。
ウィルフは祭りのときでも浴衣とか着なさそうなタイプだよな~と、わたしも普段着で待ち合わせの場所に行ったのだが。
「ちゃ、ちゃんと祝集祭の服を着ている……!?」
めちゃくちゃしっかり着込んでいた。まさか着てくるだなんて、思ってなかったのだ。花は一本も刺さっていなかったけど。
ウィルフもウィルフで、わたしが着てこないとは思わなかったのだろう、じとっとこっちを見られてしまった。
「この服、祭りに参加する奴は着ないと駄目なんじゃなかったのか」
「え? いや、着る人が多いってだけで、必須じゃないってイナリは言ってたけど……」
前世の夏祭りにおける浴衣みたいなものだとわたしは解釈していた。雰囲気を楽しむなら着た方がいいが、別に着ないと参加できないわけじゃない。
イナリが言っていた、というのはウィルフの中では信ぴょう性が高いと判断するに値するらしく、「騙された……」と呟いていた。
「誰から聞いたの?」
「……警護団の先輩」
そんな話をするくらいには、警護団に打ち解けられているのだろうか。それはそれでいいことだと思うけど。
「あ、わたし、着替えてこようか。ごめんね、普段着で」
洗濯はしてあるし、すぐにでも着られる状態だ。一度イナリの家には戻らないといけないけど……。
「……いい。時間がまたかかるだろ」
そう言って、ウィルフは近くの花売りから一本の花を買う。
「ほらよ。これでいいだろ」
そう言って、わたしの髪にその生花をさした。
「あ、ありがと……」
「これで俺も悪目立ちもしないだろ」
なんでそう言うこというかなあ、もう。なんだか素直に喜んだ自分が馬鹿みたい、と思うが、でも、ウィルフもウィルフで楽しそうだから、まあ、いっか。
「次はちゃんと着てくるからね」
「……、そうかよ」
五年後。今回の服が入るかは分からないけど、ちゃんと着てくるようにしようと、わたしは心の中でひそかに誓ったのだった。
正直、すごく楽しみだけど。
イエリオやフィジャ、イナリの両親と会うのが嫌、というわけじゃない。それはそれで、緊張するけど、同時に楽しみ、という気持ちがある。
でも、会う場所が決まっていて、そこで食事会をすることになっているから、街を歩くことはないのだ。
折角あれこれ屋台がでてお祭りモードなのに、屋台を楽しめないのは残念だと思っていたのだが、ウィルフが「俺は両親とかいねえから、適当に街を周るだけになるぞ」と言ったのだ。
ウィルフは祭りのときでも浴衣とか着なさそうなタイプだよな~と、わたしも普段着で待ち合わせの場所に行ったのだが。
「ちゃ、ちゃんと祝集祭の服を着ている……!?」
めちゃくちゃしっかり着込んでいた。まさか着てくるだなんて、思ってなかったのだ。花は一本も刺さっていなかったけど。
ウィルフもウィルフで、わたしが着てこないとは思わなかったのだろう、じとっとこっちを見られてしまった。
「この服、祭りに参加する奴は着ないと駄目なんじゃなかったのか」
「え? いや、着る人が多いってだけで、必須じゃないってイナリは言ってたけど……」
前世の夏祭りにおける浴衣みたいなものだとわたしは解釈していた。雰囲気を楽しむなら着た方がいいが、別に着ないと参加できないわけじゃない。
イナリが言っていた、というのはウィルフの中では信ぴょう性が高いと判断するに値するらしく、「騙された……」と呟いていた。
「誰から聞いたの?」
「……警護団の先輩」
そんな話をするくらいには、警護団に打ち解けられているのだろうか。それはそれでいいことだと思うけど。
「あ、わたし、着替えてこようか。ごめんね、普段着で」
洗濯はしてあるし、すぐにでも着られる状態だ。一度イナリの家には戻らないといけないけど……。
「……いい。時間がまたかかるだろ」
そう言って、ウィルフは近くの花売りから一本の花を買う。
「ほらよ。これでいいだろ」
そう言って、わたしの髪にその生花をさした。
「あ、ありがと……」
「これで俺も悪目立ちもしないだろ」
なんでそう言うこというかなあ、もう。なんだか素直に喜んだ自分が馬鹿みたい、と思うが、でも、ウィルフもウィルフで楽しそうだから、まあ、いっか。
「次はちゃんと着てくるからね」
「……、そうかよ」
五年後。今回の服が入るかは分からないけど、ちゃんと着てくるようにしようと、わたしは心の中でひそかに誓ったのだった。
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