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第五部

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 食事を終えて、しばらくすると、イエリオも積もる話があるのか、ララーペルさんとの雑談に盛り上がっていた。わたしを紹介しに来た、と言っても、常にわたしが会話の中心にいるわけではない。二、三人程度ならそうもなったかもしれないが、これだけの人数がいれば皆で常に会話をするわけじゃない。複数のグループに分かれもするものだ。

 ララーペルさんとイエリオ、それからイエリオの叔母さんであるシルシュさんの三人グループ、リディアさんとカヴァルさん、それからアリアナさんに、イエリオの兄に当たるカリウスさんの四人グループに分かれていた。

 わたしもどちらかのグループに入って声をかけたほうがいいかな、と考えていると、正面に座っていた、イエリオのおじいさん――バリオさんと目がぱちっと合ってしまった。
 とりあえず笑っておこう。にこっとしておけば、印象が悪くなることはないだろう、と思っていると、バリオさんにも柔らかく微笑みを返された。

「お嬢さん、よかったらこの爺と話をしてくれんかね」

 爺、と言うような歳でもないでしょう、と言い返したかったが、まあ、イエリオのおじいさんであることには違いない。
 わたしが「是非」と返事をすると、バリオさんは嬉しそうに話し始めた。

「イエリオは昔っから好奇心の塊でなあ。ぼくの書斎にこもっては、本を広げてこれはなに、どういう意味、と聞いてくる子だったよ」

 昔のイエリオ。彼自身の口から、幼い頃の話はあまり聞いたことがなかった。
 好奇心の塊のような子、か。すごく想像がつく。今のイエリオって、好奇心旺盛な子供が行動力と財力を手に入れたようなものだもん。今よりはもう少しおとなしかったかもしれないけど。

「でも、あの子の興味はいつでも本にあってなあ。それが終わったかと思えば、今度は前文明の……なんだ、遺跡とか、遺物とか、そういうものに興味が移ってここまで成長したんよ。でも、あんまり人には興味を持たなかったみたいで」

 今でこそ、仕事仲間や友人、それこそわたしのような人間など、親しい人はいるし、仲良くはしているものの、前文明のような『興味』は持つ様子がなかったという。
 かつて――今でこそ、そんな様子は欠片もないが、わたしとの子供を、獣人と人間の合いの子に興味がある、なんて言い方をしたのは、人間関係の興味ではなく、前文明の興味の延長だったのだろうか。
 なんとなく、『人に興味がなかった』というバリオさんの言い分に、納得がいく。

「だから、ぼく、イエリオが好い人を連れてきたのが嬉しくて、嬉しくて。あの子もそう言う風に他人へ興味を持てるようになったんだなあってね。――だから、イエリオを、見捨てないであげてほしいんだ」

 多分、他人に興味を持つことなんてそうそうない子だから、とバリオさんは言った。
 わたしが、イエリオの隣に立つのが正しい人間であるかどうかは分からない。でも、彼を大切にしたい、という気持ちに、偽りは、欠片もない。

「もちろんです」

 わたしは宣誓するように、バリオさんへと言った。
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