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第五部
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その後も彼らから自己紹介を受ける。父親と兄弟姉妹かな、と思っていたのだが、どうやら父親と母親が二人、腹違いの兄と姉、それから叔母、という関係らしかった。そして一番驚いたのが、父親だと思っていた人が、イエリオの祖父だったことである。
全体的に皆若いというか……実年齢より少なくとも十から二十は若そうである。腹違いの兄弟、と言っていた方は年相応っぽいけど。イエリオの祖父は父方らしいから、父親側の血なのかな、と思わないでもないが、それだとリディアさんとララーペルさんの説明が付かない。
獣人って不思議……と思いながら、わたしは用意された料理に手をつける。テーブルマナーが分からない、とは事前に言ったものの、座って綺麗に食べられれば大丈夫、とリディアさんに言われてしまった。全然マナーが分からないけれど、とりあえずみっともなく見えないように、姿勢と食べ方にだけは気を付ける。
「それにしても、イエリオが結婚かあ。大丈夫? お金に物を言わせて、変なとこからさらってきてない?」
そんなことを言うのは、イエリオのお姉さんのアリアナさんだ。お姉さん、と言っても、異母姉弟なので、歳は同じで、生まれた日付が少し早いだけらしく、ほぼ双子のような扱いを受けていたそうだ。
お金に物を言わされたわけではないが、さらってきた、という言葉はあながち間違いじゃないので、思わずむせそうになる。
「そんなわけないでしょう」
さらっとイエリオが嘘をついたので、あまり怪しまれなかったが。嘘、と言っても、『お金に物を言わせていない』というのは本当なので、嘘とも言い切れない。
「彼女とは、たまたま街で会っただけですよ」
イエリオは、研究所にも言った、旅をしている最中にイエリオたちと出会った、という話をした。下手に設定をころころ変えるよりは、バレるリスクは少ないので、この設定をわたしたちは共有している。
本当のことを言わないのは心苦しい気持ちはあるが、「実はわたし、人間で千年前に生きていた人間です! 魔法でこの時代に来たんですよ!」なんて言えるわけもないし、信じて貰えるわけもない。
特に、イエリオの一家には、イエリオがわたしを洗脳したんじゃないか、って変な疑いをかけられそうで、下手なことは言えない。
「でも、安心しました。……孫が出来たら、祝集祭のときじゃなくても、見に行ったら駄目ですか?」
ララーペルさんの『孫』という言葉に、今度こそわたしはむせた。同時に、イエリオもむせたようだ。
ひとしきりむせて、ちらっとイエリオを見れば、彼もまた、こちらを見ていたようだ。――顔が、赤い。
バチっと思わず視線をそらせば、「若いっていいわねえ!」とリディアさんに笑われてしまうのだった。
全体的に皆若いというか……実年齢より少なくとも十から二十は若そうである。腹違いの兄弟、と言っていた方は年相応っぽいけど。イエリオの祖父は父方らしいから、父親側の血なのかな、と思わないでもないが、それだとリディアさんとララーペルさんの説明が付かない。
獣人って不思議……と思いながら、わたしは用意された料理に手をつける。テーブルマナーが分からない、とは事前に言ったものの、座って綺麗に食べられれば大丈夫、とリディアさんに言われてしまった。全然マナーが分からないけれど、とりあえずみっともなく見えないように、姿勢と食べ方にだけは気を付ける。
「それにしても、イエリオが結婚かあ。大丈夫? お金に物を言わせて、変なとこからさらってきてない?」
そんなことを言うのは、イエリオのお姉さんのアリアナさんだ。お姉さん、と言っても、異母姉弟なので、歳は同じで、生まれた日付が少し早いだけらしく、ほぼ双子のような扱いを受けていたそうだ。
お金に物を言わされたわけではないが、さらってきた、という言葉はあながち間違いじゃないので、思わずむせそうになる。
「そんなわけないでしょう」
さらっとイエリオが嘘をついたので、あまり怪しまれなかったが。嘘、と言っても、『お金に物を言わせていない』というのは本当なので、嘘とも言い切れない。
「彼女とは、たまたま街で会っただけですよ」
イエリオは、研究所にも言った、旅をしている最中にイエリオたちと出会った、という話をした。下手に設定をころころ変えるよりは、バレるリスクは少ないので、この設定をわたしたちは共有している。
本当のことを言わないのは心苦しい気持ちはあるが、「実はわたし、人間で千年前に生きていた人間です! 魔法でこの時代に来たんですよ!」なんて言えるわけもないし、信じて貰えるわけもない。
特に、イエリオの一家には、イエリオがわたしを洗脳したんじゃないか、って変な疑いをかけられそうで、下手なことは言えない。
「でも、安心しました。……孫が出来たら、祝集祭のときじゃなくても、見に行ったら駄目ですか?」
ララーペルさんの『孫』という言葉に、今度こそわたしはむせた。同時に、イエリオもむせたようだ。
ひとしきりむせて、ちらっとイエリオを見れば、彼もまた、こちらを見ていたようだ。――顔が、赤い。
バチっと思わず視線をそらせば、「若いっていいわねえ!」とリディアさんに笑われてしまうのだった。
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