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第五部

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「永久剥奪って、効果範囲がすごく狭いんですよね」

「――狭い?」

 聞けば、冒険者の資格を永久剥奪する権利は、あくまでその書類に署名したギルド長が勤める冒険者ギルドがある街の中の話だけらしい。
 だから、例えば、ルーネちゃんにイナリの冒険者の資格の永久剥奪をしてもらっても、シャルベンの冒険者ギルドで冒険者になると申請を出せば、普通に冒険者になれてしまうらしい。

 ジェルバイドさんのように、国内どこのギルドでも冒険者の再申請が出来ないようにすることも可能ではあるけれど、それはあくまで犯罪者への対応であり、一般の冒険者ではかなり難しいらしい。
 加えて、もしそれをするとしたら、国内全ての街のギルド長に署名してもらうこととなる。ジェルバイドさんのときは、ウィルフの特級冒険者としての進級報酬の一環だったらから、いろいろ過程を飛ばしたり、領主を通さず直接国王にまで話を通せたから数週間でなんとかなったようで。

 もし、イナリが同じようなことをしようとしても、数年は、あるいは十数年はかかると言われてしまった。

「――それじゃあ……」

 それじゃあ意味がない、と思わず口から出てしまいそうで、わたしは慌てて口をつぐんだ。
 数年もかかるんじゃ意味がない。多分、その間にわたしは殺されるかもしれないし、もしかしたらイナリの心が折れて、本当は嫌なのに、シャシカさんに言われるがまま冒険者になるかもしれない。
 でも、それがその制度を利用することでかかる時間だと決められているなら、ルーネちゃんは悪くない。

 何か他に方法はないだろうか。

 シャシカさんが諦めれば問題はないのだ。その手段として、イナリが資格を永久剥奪されれば、と思いついただけなので、それは目的ではない。
 シャシカさんがイナリを冒険者にすることを諦めるのが、目標なのだ。

「なにかいいアイディアはない、かなあ」

 わたしはルーネちゃんに全部話して相談してみる。イナリからは相手がギルド長なら、調べようと思えば全部調べがつくだろうし、好きに話していい、と許可を貰っているので。
 一通り聞いたルーネちゃんは少し考え込んだ後、「イナリさんが冒険者に戻るのが一番手っ取り早い気もします」と言われてしまった。
 いや、そうならないために方法を探しているんだけど……と不満が表情に出てしまったらしい。ルーネちゃんは慌てだした。

「いえ、あの、違う、違います。結論から話してすみません、違うんです。戻るって言っても、あくまで一時的な話で……復帰ではありません!」

 可哀そうなくらいルーネちゃんがうろたえ始めた。……そんなに険しい顔、してしまったんだろうか。
 それにしても……一時的、とは?
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