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第四部
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ウィルフさんは自宅にいなくて、わたしは久々に索敵〈サーヅ〉を使った。魔法をあまり使わない、と決めた矢先にこれではあるが、回復量が落ちただけで回復しないわけじゃないし……街を歩き回って探すより効率的だし……と探した結果、一度も訪れたことのない区域にまで、魔法の飛翔体は飛んで行った。
出来た『道』をたどった先には、冒険者ギルドに似た、でも、向こうよりは遥かに新しく感じる、大きな建物があって。
その建物から、丁度ウィルフさんが出てくるところだった。
「――ウィルフさん!」
思わず声をかけると、彼はぎょっとしたように、少し目を見開いた。
「なんでお前、こんなところにいるんだよ」
「ぼ、冒険者辞めちゃうって、聞いて、びっくりして、探しました」
「誰からその話――ああ、お前、ギルド長と仲良かったんだっけか」
ウィルフさんはわたしの方に歩いて来ながらそんなことを言った。
おろおろとするわたしとは対照的に、ウィルフさんは落ち着いている、というより、辞めることなんてどうってことない、と言わんばかりの態度だった。
「ここ出入り口で邪魔だから、少し歩くぞ」
ウィルフさんに言われ、わたしたちは移動する。確かに、じろじろ見られるわけじゃないけど、ちらっとした視線はさっきから感じる。
移動した先はちょっとした広場だった。噴水と人が座るためのベンチがいくつか並んでいて、遊ぶためではなく休憩する為の公園、と言ったところだろうか。
時間的な問題か、あんまり人通りはなくて、散歩のために通った、という人がちらほらいるくらい。
そんな中、ウィルフさんはベンチの一つに座ったので、わたしもその隣に座る。
「別に、今すぐ辞めるつもりじゃねえよ。辞める予定がある、ってだけだ」
座ってすぐ、ウィルフさんはそう言った。
「イエリオの失敗した実験の埋め合わせとして採集依頼を受けたのがいくつかあるし、それが終わったら辞める予定ではあるが、その頃に俺じゃねえと受けられねえような討伐依頼があったら流石に断るわけにはいかねえし」
あと数か月は続けるし、もしかしたら家が建った後も多少は続けることになるかもな、とウィルフさんは言った。
「元々、冒険者になったのはジェルバイドの情報を集めるためと当面の資金のためだったし、特級冒険者になると決めてからは、ジェルバイドを解放するのが目的で――そのあとは辞めようと思ってたんだよ」
長く続けるつもりはない、という話を、フィジャ達にはもともと言っていたらしい。終わりがあることを親しい人には言っていて、そのつもりで生活してきたから、今更、わたしに言うのを忘れていたそうで。
出来た『道』をたどった先には、冒険者ギルドに似た、でも、向こうよりは遥かに新しく感じる、大きな建物があって。
その建物から、丁度ウィルフさんが出てくるところだった。
「――ウィルフさん!」
思わず声をかけると、彼はぎょっとしたように、少し目を見開いた。
「なんでお前、こんなところにいるんだよ」
「ぼ、冒険者辞めちゃうって、聞いて、びっくりして、探しました」
「誰からその話――ああ、お前、ギルド長と仲良かったんだっけか」
ウィルフさんはわたしの方に歩いて来ながらそんなことを言った。
おろおろとするわたしとは対照的に、ウィルフさんは落ち着いている、というより、辞めることなんてどうってことない、と言わんばかりの態度だった。
「ここ出入り口で邪魔だから、少し歩くぞ」
ウィルフさんに言われ、わたしたちは移動する。確かに、じろじろ見られるわけじゃないけど、ちらっとした視線はさっきから感じる。
移動した先はちょっとした広場だった。噴水と人が座るためのベンチがいくつか並んでいて、遊ぶためではなく休憩する為の公園、と言ったところだろうか。
時間的な問題か、あんまり人通りはなくて、散歩のために通った、という人がちらほらいるくらい。
そんな中、ウィルフさんはベンチの一つに座ったので、わたしもその隣に座る。
「別に、今すぐ辞めるつもりじゃねえよ。辞める予定がある、ってだけだ」
座ってすぐ、ウィルフさんはそう言った。
「イエリオの失敗した実験の埋め合わせとして採集依頼を受けたのがいくつかあるし、それが終わったら辞める予定ではあるが、その頃に俺じゃねえと受けられねえような討伐依頼があったら流石に断るわけにはいかねえし」
あと数か月は続けるし、もしかしたら家が建った後も多少は続けることになるかもな、とウィルフさんは言った。
「元々、冒険者になったのはジェルバイドの情報を集めるためと当面の資金のためだったし、特級冒険者になると決めてからは、ジェルバイドを解放するのが目的で――そのあとは辞めようと思ってたんだよ」
長く続けるつもりはない、という話を、フィジャ達にはもともと言っていたらしい。終わりがあることを親しい人には言っていて、そのつもりで生活してきたから、今更、わたしに言うのを忘れていたそうで。
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