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第四部
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話も終わり、冒険者ギルドを出たわたしに、ウィルフさんがぽつりと言う。
「納得いってねえ、って顔だな」
「そりゃあ、まあ」
前回と違い、明らかに調査をぶった切られて、気にならないと言えば嘘になる。調査を無理にでも続けたいわけじゃないけど、こんな露骨な切れ方されたら、気になってしまうものだろう。
「あんまり首突っ込まねえ方がいいぞ」
「……ウィルフさんは気にならないんですか?」
諦めろ、と言われているようで、なんだかもやっとする。別に、元より首を突っ込むつもりはない。でも、すっきり忘れられるかと言えば、それも難しい話で。
「気にならない、と言えば嘘になるが、冒険者ギルドが終わりだと言ったのなら終わりなんだ。強行したところでろくなことにならねえから、忘れるに限る」
まあ、それはそうだ。冒険者ギルドがこうもあっさり諦めるのなら、わたしたちが無理になにかしたところできっと守ってくれないだろう。
「それに、イエリオがうるせえから、正直調査が中止になってくれて助かったってのもある」
「なんですか、それ」
思わず少し笑ってしまう。まあ、確かに、東の森の遺跡に関して、他の前文明関連のものと同じように興味を示していたし、あんまりイエリオの長い話に付き合うのが好きじゃないウィルフさんにとっては、今回の件はラッキーだった、ということなのかも。
「まあ、イヌがどこから来たか考えれば、ほとんど答えは出たようなもんだろ」
「それは……」
イヌ、という魔物は、ペットとして買いやすいように品種改良されたものだと聞いている。――品種改良された、ということは原種がどこかにいるはずで。
そしてそれは言わずもがな、十中八九、ペロディアの血が混じっているんだろう。
ということは、シャルベンの研究所側からすると、ペロディアが全くいなくなるのは困るが、同時に東の森を徹底的に調査されるのも困る、ということなのかも。
……そんな非人道的なことが行われているとは思えないけど。ウィルフさんにひっついてきたペロディアを見る限り、随分人懐っこく、なんの疑いもなく生きていて。
生まれたばかりで好奇心が旺盛、ということを差し引いても、虐げられている地で育ったのなら、もっと警戒心を持つだろう。
どちらかと言えば、ペロディアをいじくって知られたくないことがある、というよりは、利権とか、そういう、黒い大人の事情が絡み合っているのを公の場に出したくない、ということかもしれない。
……でも、こうして調査が行われなかった、ということはあそこはイエリオの言っていた東の森の遺跡じゃないのかもしれない。そうやって頻繁に人の出入りがあるのなら、調査隊が全滅するほどの危険な場所には思えない。
「俺らに出来るのはここまでだ。とっとと帰るぞ」
「……はい」
べしっと軽く背中を叩かれ、わたしは歩き出した。
「納得いってねえ、って顔だな」
「そりゃあ、まあ」
前回と違い、明らかに調査をぶった切られて、気にならないと言えば嘘になる。調査を無理にでも続けたいわけじゃないけど、こんな露骨な切れ方されたら、気になってしまうものだろう。
「あんまり首突っ込まねえ方がいいぞ」
「……ウィルフさんは気にならないんですか?」
諦めろ、と言われているようで、なんだかもやっとする。別に、元より首を突っ込むつもりはない。でも、すっきり忘れられるかと言えば、それも難しい話で。
「気にならない、と言えば嘘になるが、冒険者ギルドが終わりだと言ったのなら終わりなんだ。強行したところでろくなことにならねえから、忘れるに限る」
まあ、それはそうだ。冒険者ギルドがこうもあっさり諦めるのなら、わたしたちが無理になにかしたところできっと守ってくれないだろう。
「それに、イエリオがうるせえから、正直調査が中止になってくれて助かったってのもある」
「なんですか、それ」
思わず少し笑ってしまう。まあ、確かに、東の森の遺跡に関して、他の前文明関連のものと同じように興味を示していたし、あんまりイエリオの長い話に付き合うのが好きじゃないウィルフさんにとっては、今回の件はラッキーだった、ということなのかも。
「まあ、イヌがどこから来たか考えれば、ほとんど答えは出たようなもんだろ」
「それは……」
イヌ、という魔物は、ペットとして買いやすいように品種改良されたものだと聞いている。――品種改良された、ということは原種がどこかにいるはずで。
そしてそれは言わずもがな、十中八九、ペロディアの血が混じっているんだろう。
ということは、シャルベンの研究所側からすると、ペロディアが全くいなくなるのは困るが、同時に東の森を徹底的に調査されるのも困る、ということなのかも。
……そんな非人道的なことが行われているとは思えないけど。ウィルフさんにひっついてきたペロディアを見る限り、随分人懐っこく、なんの疑いもなく生きていて。
生まれたばかりで好奇心が旺盛、ということを差し引いても、虐げられている地で育ったのなら、もっと警戒心を持つだろう。
どちらかと言えば、ペロディアをいじくって知られたくないことがある、というよりは、利権とか、そういう、黒い大人の事情が絡み合っているのを公の場に出したくない、ということかもしれない。
……でも、こうして調査が行われなかった、ということはあそこはイエリオの言っていた東の森の遺跡じゃないのかもしれない。そうやって頻繁に人の出入りがあるのなら、調査隊が全滅するほどの危険な場所には思えない。
「俺らに出来るのはここまでだ。とっとと帰るぞ」
「……はい」
べしっと軽く背中を叩かれ、わたしは歩き出した。
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