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第四部

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「……なんでお前の方が後から来るんだ」

「いや、あの……なんでもないです」

 あの後、結局迷子になって、ようやく冒険者ギルドにたどり着いたと思ったら、既にウィルフさんがいた。どれだけ迷っていたんだろう……。
 方向音痴のつもりはない。この国の道が入り組んでいるのが悪いのだ。

 シーバイズは割と田舎な国なので建物は少ないし、回廊を基準に作られている正方形な家ばかりなので、ほとんどの道がまっすぐに作られている。右に曲がって、と言われれば右しかなく、そこに斜め右が介入する余地はないのだ。

 慣れないだけで決して方向音痴じゃない。こっちにきてもう半年以上経つが、慣れていないだけで方向音痴じゃない。
 という言い訳をしても、鼻で笑われる未来しか想像出来なかったので、黙っておくことにした。

「……ちゃんと話できたんですか」

 わたしが方向音痴であるかどうかの話なんてどうでもいいのだ。
 わたしは話題を切り替えるようにウィルフさんに質問した。

「ああ。全部話した」

 そう言うウィルフさんは、どこかすっきりとした表情だった。

「よかったですね」

 彼の事情は、ほとんど聞いているので多くは聞かない。表情や態度からして、悪い結果にはならなかったようだし。
 無事に、彼が長年抱えてきたものを解消できたのなら何よりだ。

「さて、ようやくお前も来たことだし、ギルド長のところに行くか」

「言い方~! もう少しなんとかならないんですか」

 からかうような声音に、わたしは拗ねたような声で返すが、その実、ちょっとだけこのやりとりが楽しくて嬉しかった。
 こんな風なやりとりができるとは、出会ったばかりのウィルフさんでは考えられなかったので。あの頃はすごくとげとげしていたし。

「今度はつまづかないように気をつけろよ」

「分かってますって」

 流石にそう何度もつまづいてたまるか。つまづくような段差があると、そっちに意識していればそうそうつまづくこともない。はず。
 かくして、無事にギルド長の執務室の前にたどり着いたわけだが――。

「……大丈夫だと思いますか」

「大丈夫だろ、多分」

 前回、前々回と、潔癖症であるシャルベンのギルド長のチェックに合格出来なくて、わたしは一度も彼の執務室の扉をくぐれていない。
 隅々までチェックしたつもりだが、どうにも不安だ。後ろを見たり、スカートの裾をチェックしたり。今日は橋の上で這いつくばるようなアクシデントもあったので、気が付かないだけでどこか汚しているかもしれない。

「めんどくせえな、駄目だったらここから会話すればいいだろ。冒険者のほとんどがそんなもんだ」

「ええ……でも、あ、ちょっと!」

 わたしの静止の言葉を聞かずにウィルフさんはドアをノックした。
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