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第四部

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「ま、そんなわけで、ボクらとしてはウィルフが魔物だとしても全然大丈夫、ってことで。なんなら話が終わったあと、時間余ったねって椅子買いに行ったくらいだし」

 話し合いは早々に終わっていたらしい。でも、わたしがすっかり寝入っていたから、起こすのも可哀そう、と、わたし用の椅子を買いに行って起きるのを待っていたけれど、帰ってきても寝ていて、じゃあ先に晩御飯作ろうか、という運びになったらしい。
 本当にぐっすりだったんだな、わたし……。

 でも、無事に話し合いが終わってよかった。一安心だ。
 安心したら、お腹が空いてきたので、ようやくフィジャの料理に手をつける。手のひらよりも少し小さい、ピザみたいなパンにかぶりつく。久しぶりのフィジャのご飯だ。美味しい。

 フィジャに感想を伝えながら、パンを食べていると、ふと、イエリオさんが口を開いた。

「それにしても意外でしたね。ウィルフが、『時間が余ったならあいつの椅子を買いに行くか』なんて言い出したのは」

 ウィルフさんの声音を真似しながら、イエリオさんは言う。似ている、と絶賛するほどじゃないけど、特徴を捕らえているので、物まねとしてはかなり高度だとおもう。意外な特技だ。
 確かに、今までのウィルフさん――というより、東の森の調査に行く前のウィルフさんだったら絶対に言わなかっただろう。

「悪いかよ」

 じと、とこちらを睨んでくるウィルフさん。酔いが回り始めたのか、少し目がすわっている。

「今回の礼も兼ねてるし――仲間に入れて欲しかったんじゃないのかよ」

「――!」

 仲間に入れてほしい。言わずもがな、東の森に行く前、酒場で泣きわめいたときの話のことだろう。
 嬉しい、覚えてくれてたのか、と思ったのもつかの間だった。

「仲間に入れてほしいってなんの話?」

「それはこいつが――」

「わ、わー! うわー!」

 フィジャの質問へ、律義に答えようとするウィルフさんの声を、叫びでさえぎった。
 飲みなれない度数の高いお酒を飲んでベロベロに酔っ払い、ぎゃんぎゃん泣いて絡み酒をした挙句、わけの分からない理論を展開してキスをした上に、最後は吐いたかもしれない、なんて話、されてたまるか!
 流石のウィルフさんも全部、そっくりそのまま話すことはないだろうが、どこを切り取って話したとしても、恥ずかしいところしかない。

 わたしをからかうためなのか、にやっと笑ったウィルフさんがフィジャに話をしようとする。そのたびにわたしが叫んで止めて、というのを数度繰り返し、わたしは奥の手を使った。

「そう言えばイエリオ、この間、東の森で、イエリオの言っていた東の森の遺跡らしき建物を見つけたんだけど」

「詳しくお願いします」

 予想通り、というか、案の定、イエリオはわたしの話に食いついた。ウィルフさんは、うげ、という表情を隠しもしないが、もう遅い。
 ぺらぺらと話すイエリオによってわたしの情けない話が話題になることは避けられたが、かなりイエリオの独壇場な場になってしまい。

 これで良かったのかは微妙だが、まあ、話題をそらせたので良しとしよう。
 余談ではあるが、話すことに夢中になってなかなか酒を飲まず、普段より長く起きていたイエリオの話に付き合ったわたしたちが解放されたのは、日付がとっくに変わったころの話である。
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