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第四部

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「それで? 別の冒険者とは誰なんだね。邪魔をする、というのが依頼であればすぐに調べはつく。私情ならば話は別だがね」

「シャシカだ」

 シャシカさんの名前を出すと、ギルド長はすぐに思い当たったらしい。彼女はそれなりに名が知られている冒険者のようだ。

「彼女か……。ここ三年近く一人で依頼を受けていたはずだな。パーティーを組まない冒険者は数が少ないから、すぐに調べはつくだろう」

 こちらで調べるから、これ以上追わないように。
 釘を刺すようにギルド長は言った。まあ、下手に冒険者同士でことを解決しようとすると、揉め事になるだろうしね。実際、東の森で殺し合い寸前までいったわけだし……。

 これで報告は終わりかな、と思っていたら、「それと」とギルド長が言葉を続けた。
 まだ何かあったっけ?

「『壁喰い』に関してはなにか情報はあったのかね?」

 ――壁喰い。すっかり忘れていた……わけではない。忘れてはいないって。
 行きまでは覚えていたのだから。森に着いてからは……まあ、お察しだが。
 とはいえ、思い返してみてもなにか情報になるようなものはなかったと思う。
 ウィルフさんも、特に思い当たるものがなかったのか、「何もなかったな」と返答していた。

「そうか……東の森でも特に見つからなかったか」

 ギルド長曰く、国内の全冒険者ギルド、研究所の両者で全力で調査を進めているらしいが、壁喰いの二体目すら見つかっていないのだという。近隣国のデータにすら、存在しない魔物なのだとか。
 遥か遠い国の魔物が運び込まれたか、それとも突然変異か。

「危険度は暫定で中級に決まった。なんでも食べる性質があるがゆえに、城壁すら食し穴を開ける、というのは非常に危険だが、本体はそこまで強くないのでね」

 特級冒険者であるウィルフさんが討伐に駆り出されることは、今後ないらしい。もっと下のクラスの冒険者でも討伐できると判断した、とギルド長はいう。
 もっとも、壁喰いが大量発生するような状況になれば話は別らしいが――二体目すら見つかっていない今の状況からしたら、あまり考えられる未来ではないだろう。

「とはいえ、情報だけは気にかけておいてくれるとこちらも助かる」

「――……ああ」

 ほんの少し、妙な間があった。なんだろう。
 わたしが疑問を口にするよりも早く、ウィルフさんが会話を繋げた。

「それじゃ、今回はこんなところで大丈夫か?」

「ああ。ご苦労だった。続きはこちらの調べが済み次第、追って連絡をする」

 もう二言、三言話を続け、報告は本当に終わりとなる。
 病院に行き、ウィルフさんが治療を受けたら街へと帰ることとなる。

 ――随分長い旅だったな、と、つい、溜息のように長い息を吐いてしまうのだった。
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