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第三部
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「そんな大事件、よく半年でどうにかなりましたね」
「今の冒険者ギルドの長がそれだけ優秀だった、ということです。普段は気弱で他人と話すのも苦手な方のようですが、人を見る力というか……采配の能力に非常に長けている人でして」
人を動かすのが非常に上手な人の様で、的確に指示を出しては猛スピードで事件の後処理をしていったらしい。凄いなあ。
「まあ、そんなわけで、今は城壁内で起こる魔物関連の事件も迅速に解決されるようになっていますし、多少怪我人は出ますが、犠牲者と呼ばれるような人はでないようになっていますから」
それが今の冒険者ギルド長と、民間警護団の半数が冒険者になった結果得られた物だとするなら、確かに皆、軽い傷害事件をなかったことにされるのも、黙認してしまうのかもしれない。
怪我をするのは嫌なことだが、死ぬことに比べたら……となってしまうのは普通だろう。
まあ、それに、弁護士の手腕は凄かったし……。イエリオの親族の人が凄いだけかもしれないが、あっという間に犯人を絞り上げて、取れるものは取って、接近禁止をガチガチに固めて、ちょっとかわいそうになるくらい凄かった。同情はしないけど、何も思わないでいられない程には。
ただ泣き寝入りしなければいけないわけじゃない分、黙認されることが普通になってしまっているのだろう。
まあ、でも、すぐに解決するのなら安心だろう。どこから侵入したかが分かれば……どこから侵入したんだろう。
「あの、イエリオ、アティカって、翅がないんだよね」
「……急にどうしました?」
アティカはアリの体がベースに見えるものの、あくまで『アティカ』という種類の虫なので、オスだから翅がある、とか、そういうことはなく、雌雄どちらも翅がない。
故に、飛ばない虫である。
「で、アティカの脚って変わってて、つるつるした場所じゃないと壁とかはのぼれないんだ」
主たる餌のトバラルのツルが、さらっとしているというか、つるつるしているというか、そういう手触りなので、それをつたってのぼりやすいようにアティカの足ができているので、でこぼこした表面のものをのぼるのは苦手なのだ。木の幹とか――城壁の建材である、煉瓦とか。だから、トバラルを管理する倉庫は煉瓦造りのものがほとんどだった。
「なので、もしあの魔物が城壁の外からやってきたとして……どこから入ったと思う?」
「それは――……」
元のアティカならいざ知れず、わたしが研究所で見たあの魔物は少なくとも荷物にまぎれるようなサイズじゃない。
誰か意図的に招き入れたか――もしくは。
「考えすぎならいいんですけど、どこか城壁に穴が空いているってことは……ない、よね?」
「それは流石に……考えすぎでは?」
そう言うイエリオだったが、顔は笑っていなかった。わたしの意見を否定しながらも、可能性を考えてしまっている。
そうだよね、ありえないよね。
そう言おうとしたわたしの言葉を、ガシャン! と、どこかの窓ガラスが割れる音がかき消した。
「今の冒険者ギルドの長がそれだけ優秀だった、ということです。普段は気弱で他人と話すのも苦手な方のようですが、人を見る力というか……采配の能力に非常に長けている人でして」
人を動かすのが非常に上手な人の様で、的確に指示を出しては猛スピードで事件の後処理をしていったらしい。凄いなあ。
「まあ、そんなわけで、今は城壁内で起こる魔物関連の事件も迅速に解決されるようになっていますし、多少怪我人は出ますが、犠牲者と呼ばれるような人はでないようになっていますから」
それが今の冒険者ギルド長と、民間警護団の半数が冒険者になった結果得られた物だとするなら、確かに皆、軽い傷害事件をなかったことにされるのも、黙認してしまうのかもしれない。
怪我をするのは嫌なことだが、死ぬことに比べたら……となってしまうのは普通だろう。
まあ、それに、弁護士の手腕は凄かったし……。イエリオの親族の人が凄いだけかもしれないが、あっという間に犯人を絞り上げて、取れるものは取って、接近禁止をガチガチに固めて、ちょっとかわいそうになるくらい凄かった。同情はしないけど、何も思わないでいられない程には。
ただ泣き寝入りしなければいけないわけじゃない分、黙認されることが普通になってしまっているのだろう。
まあ、でも、すぐに解決するのなら安心だろう。どこから侵入したかが分かれば……どこから侵入したんだろう。
「あの、イエリオ、アティカって、翅がないんだよね」
「……急にどうしました?」
アティカはアリの体がベースに見えるものの、あくまで『アティカ』という種類の虫なので、オスだから翅がある、とか、そういうことはなく、雌雄どちらも翅がない。
故に、飛ばない虫である。
「で、アティカの脚って変わってて、つるつるした場所じゃないと壁とかはのぼれないんだ」
主たる餌のトバラルのツルが、さらっとしているというか、つるつるしているというか、そういう手触りなので、それをつたってのぼりやすいようにアティカの足ができているので、でこぼこした表面のものをのぼるのは苦手なのだ。木の幹とか――城壁の建材である、煉瓦とか。だから、トバラルを管理する倉庫は煉瓦造りのものがほとんどだった。
「なので、もしあの魔物が城壁の外からやってきたとして……どこから入ったと思う?」
「それは――……」
元のアティカならいざ知れず、わたしが研究所で見たあの魔物は少なくとも荷物にまぎれるようなサイズじゃない。
誰か意図的に招き入れたか――もしくは。
「考えすぎならいいんですけど、どこか城壁に穴が空いているってことは……ない、よね?」
「それは流石に……考えすぎでは?」
そう言うイエリオだったが、顔は笑っていなかった。わたしの意見を否定しながらも、可能性を考えてしまっている。
そうだよね、ありえないよね。
そう言おうとしたわたしの言葉を、ガシャン! と、どこかの窓ガラスが割れる音がかき消した。
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