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第三部

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 あの後、しばらくすると冒険者の人がやってきて、わたしが見た魔物は討伐されたことを教えてくれた。
 ただ、魔物の侵入経路が分かっていないので、研究所は一時的に閉鎖となり、極々一部の人間以外は事件が解決するまで休暇を取ることになったそうで。

 あれから何日か経ったものの、事件は特に進展を見せず、イエリオは家で暇そうにしていた。ある程度仕事を持ち帰っていたが、それもあまり量を持ち出せなかったようで、すぐに終わらせてしまったようだ。

 街の中にも、城壁内に魔物が侵入している、という話が広まり、外に出る人は少なくなっている。
 殺伐とした空気というか、全体的にピリピリしていて、食料の買い出し以外で外出する気にもなれない。

「いつになったら元に戻るのかなあ……」

 わたしはひと気のない外を窓から眺めて、思わず呟いた。ここは住宅街で、昼前である今の時間帯は元々人通りはないものの、流石にもっと明るい雰囲気があった。
 することもなく、暇を解消するべくリビングを掃除してばかりいるわたしと違って、ソファに座り本を呼んで過ごしていたイエリオがふと顔を上げる。

「前回は二週間くらいで元に戻りましたから――あれから民間警護団にも冒険者が増えましたし、あと一週間もあれば元通りになりますよ」

「……前回?」

 前にもこんなことがあったんだろうか。魔物を街に入れない為の城壁じゃないのか……と思ったが、フィジャへ危害を加えた三人組が初手で逮捕されなかった理由を聞いたときに、たびたび城内でも魔物が発見され事件が起きる、と言っていたっけ。

「前は……確か、駆け出しの冒険者が素材として持ち込んだ魔物の死体にまだ息があって、逃げ出したのが意外と回復してしまって、城壁内で暴れた、という事件だったはずです」

 ああ、なるほど、別に壁にほころびがあって魔物が侵入して来るわけではないのか。

「とはいえ、一番酷い事件では半年くらい回復まで時間を要しましたが……。流石にそこまでかからないとは思います。……いや、思いたいですね」

「は、半年!?」

 結構な長さではないか。どれだけの大事件だったんだ。

「確か――四年か三年くらい前だったかと。おかげで冒険ギルドのギルド長が代替わりして、民間警護団がほぼ壊滅、冒険者で補填する羽目になったんですよ」

 めちゃくちゃな大事件じゃないか。よくもまあ、それを半年で立て直したものだ。
 というか、それがわたしが肋骨を折っても犯人が捕まらなかった原因のきっかけなのか……。ちょっと気になるな。

 そう思っていると「そう言えば、詳細は前回話していませんでしたね」とイエリオが言う。前回、民間警護団の半分が冒険者になった理由の説明を省いたのを思い出したらしい。

「たいした話でもありませんが、暇ですし、興味があるならお話しますよ」

「……ちょっと、気になるので、問題がないなら聞きたい」

 そう言うと、イエリオは「分かりました」と、開いたままだった、彼の手元の本を閉じた。
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