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第三部

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 朝食を済ませ、わたしたちはようやく、『ディンベル邸』と名づけられたこの屋敷に、調査として立ち入ることになった。
 わたしたちが調査に立ち入っている間、オカルさんはテント地で待機となる。屋敷が屋敷でかなり古いし、床が抜けて動けなくなる可能性があることは、容易に想像がつく――というか、実際わたしが以前ハマったし。

 あのときはなんとか自力で抜け出せたけど、今回はそうとも限らない。何かあったときの為に待機していて貰うのだ。ジグターさんとヴィルフさんは周囲の魔物への警戒をしてもらわないと困るので、そんなことは頼めないし、片方は次の担当時間に備えて睡眠を取らないといけないし。

「楽しみですねえ!」

 扉を開けると、そのまま扉が取れてしまうのではと不安になるほど軋んでも全然怖くないのか、イエリオさんの足取りは軽い。
 とりあえず探索は一階から。玄関を開けると左右に廊下が伸びている。右の突き当りには階段があるはずだ。

 前回は捜索〈ティザー〉の案内にしたがって、すぐに右手側に行ってしまったが、今回は左側から行った方がいいだろうか? 左側にも階段があるのかは知らないが、もしないのなら、突き当りから階段に向かって調べていくのが効率がいいような気がする。

 わたしの提案にイエリオさんが賛成し、わたしたちは左手側の突き当りを目指すことにした。

「それにしても、家の造りはどうやらフィンネルに似ていますねえ。いや、フィンネルがこの家の造りに似ているんでしょうか」

「確かに、こういった家が残っていて、それを真似したらそういう建築様式が受け継がれていってもおかしくないですね」

 この屋敷が一体いつからあるのかは分からないが。ただ、世界中を巻き込んで、文明や人類がほぼ壊滅するような災害が起きたのなら、それより後に作られたのではないだろうか。床が抜けそうで怖くはあるものの、結構形は保たれている。
 まあ、それも途中まで屋敷に保護魔法がかかっていたのならまた話は変わって来るだろうが。

「――そういえば、前文明を滅ぼした災害、ってどんなものだったんですか?」

 ふと、聞いていないな、と思ってイエリオさんに質問する。
 前世の記憶からしたら、災害と言えば地震や噴火のイメージが強いし、シーバイズの頃の記憶からしたら水害のイメージが強い。

「それが、ほとんど、『これ』といった記録がなくてですね。嵐や豪雪を始めとした異常気象、地震、火山噴火、津波など、多数の記録が残っているには残っているのですが、確実なものは分からないんです。ただ、これだけそういった記録が細々と残っているのなら、いっそ全てが正しいのでは、と私たちは考えています」

 そんなのが一度にくるなんて凄い地獄だな。考えたくもない。

「ただ、他に何かあるのでは、と私個人は考えています。確かに、それだけの災害が一度に起これば大変なことにはなるでしょが、『世界滅亡』という最悪な状況にまでなるのか、疑問なんです」

「それは……確かに」

 わたしはイエリオさんの言葉に納得する。国の一つや二つくらいならなくなってもおかしくなさそうなラインナップではあるが、だからといって世界中全てが、ほとんど文献や記録を残せないままに、滅んでしまうものなんだろうか。 
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