127 / 452
第三部
126
しおりを挟む
ガタゴトと揺られながら平原を行く。ある程度道が舗装されているからか、多少揺られる程度で、酷い揺れは起きない。荷車に乗るからには、もっとがたがたするかと思っていたが、全然そんなことはなかった。何も敷いていないとおしりがいたくなりそうだが。
ヴィルフさんは外を見ることもなく、じっと隅に座っている。たまーに耳が動くので、全く警戒していないわけじゃないんだろうけど。
わたしはと言えば、最初のうちはぼーっと外を眺めていたが、景色が変わらないのでイエリオさんと会話に興じていた。
会話、というか、イエリオさんがいつの間にか持ち込んでいた、文献のコピーを見せられながらの質問攻めに答えているだけだが。多分、これはわたしが肋骨を負って、フィジャの家で療養している間、暇を潰す用にと持ってきてくれたあの段ボールたちの続きなんだろう。
朝早めにでて、屋敷に到着する予定時刻は日が沈む少し前。前回よりは圧倒的に早くつくものの、何もしないで待つには暇すぎるので、こうして時間が潰せるのなら質問に答え続ける方のがマシというものだ。
「――マレーゼさんは、本当にシーバイズの文化を受け継いでいるんすね」
わたしとイエリオさんが話している横で、ふと、オカルが言った。
シーバイズの文化について詳しすぎただろうか、とわたしは内心で冷や汗をかく。わたしにとってはつい最近まで生きていた時代だが、彼らにとっては千年も前の話。
わたしが人間でシーバイズ時代の生まれだということを隠し通したいのなら、魔法以外にもいろいろと気を使わないと行けなかったのに。
流石にやりすぎただろうか、と、言い訳を考えていたが、どうやら少し違うらしい。
「イエリオは研究所の中でも桁違いに『前文明好き』っすから。話についていけるのが、もう、すげーなって。自分だって前文明に興味を持ってこの研究を始めましたけど、イエリオは話が止まらないから疲れるんすよ」
本人の前でそう言ってしまうのはどうなんだろう……と思ったが、イエリオさん自身はあんまり気にしていないように見える。
もしかして、言われなれてるんだろうか。まあ、ヴィルフさんを連れてくる際に、脅しにくるくらいだもんな。ある程度、自覚はしているのかも。
「まあ、確かに話は長いですけど、それなりに楽しいですよ。少なくとも、今はぼーっと外を眺めるよりは、こっちの方がいいかなって」
イエリオさんと前文明の話をしていると、シーバイズ時代のことを思い出せて、なつかしさみたいなものを感じるのだ。多分、シーバイズの話をあれこれしても、ある程度分かってくれるのは、四人の中ではイエリオさんだけ。
元の時間に戻ることもすぐに諦めたけど、分かってくれない人ばかり、というのがさみしくないわけじゃない。まあ、今ここでの時間がそれなりに楽しいので、さみしさになかなか目が行かないだけだが。
ヴィルフさんは外を見ることもなく、じっと隅に座っている。たまーに耳が動くので、全く警戒していないわけじゃないんだろうけど。
わたしはと言えば、最初のうちはぼーっと外を眺めていたが、景色が変わらないのでイエリオさんと会話に興じていた。
会話、というか、イエリオさんがいつの間にか持ち込んでいた、文献のコピーを見せられながらの質問攻めに答えているだけだが。多分、これはわたしが肋骨を負って、フィジャの家で療養している間、暇を潰す用にと持ってきてくれたあの段ボールたちの続きなんだろう。
朝早めにでて、屋敷に到着する予定時刻は日が沈む少し前。前回よりは圧倒的に早くつくものの、何もしないで待つには暇すぎるので、こうして時間が潰せるのなら質問に答え続ける方のがマシというものだ。
「――マレーゼさんは、本当にシーバイズの文化を受け継いでいるんすね」
わたしとイエリオさんが話している横で、ふと、オカルが言った。
シーバイズの文化について詳しすぎただろうか、とわたしは内心で冷や汗をかく。わたしにとってはつい最近まで生きていた時代だが、彼らにとっては千年も前の話。
わたしが人間でシーバイズ時代の生まれだということを隠し通したいのなら、魔法以外にもいろいろと気を使わないと行けなかったのに。
流石にやりすぎただろうか、と、言い訳を考えていたが、どうやら少し違うらしい。
「イエリオは研究所の中でも桁違いに『前文明好き』っすから。話についていけるのが、もう、すげーなって。自分だって前文明に興味を持ってこの研究を始めましたけど、イエリオは話が止まらないから疲れるんすよ」
本人の前でそう言ってしまうのはどうなんだろう……と思ったが、イエリオさん自身はあんまり気にしていないように見える。
もしかして、言われなれてるんだろうか。まあ、ヴィルフさんを連れてくる際に、脅しにくるくらいだもんな。ある程度、自覚はしているのかも。
「まあ、確かに話は長いですけど、それなりに楽しいですよ。少なくとも、今はぼーっと外を眺めるよりは、こっちの方がいいかなって」
イエリオさんと前文明の話をしていると、シーバイズ時代のことを思い出せて、なつかしさみたいなものを感じるのだ。多分、シーバイズの話をあれこれしても、ある程度分かってくれるのは、四人の中ではイエリオさんだけ。
元の時間に戻ることもすぐに諦めたけど、分かってくれない人ばかり、というのがさみしくないわけじゃない。まあ、今ここでの時間がそれなりに楽しいので、さみしさになかなか目が行かないだけだが。
11
お気に入りに追加
612
あなたにおすすめの小説
転生したら美醜逆転世界だったので、人生イージーモードです
狼蝶
恋愛
転生したらそこは、美醜が逆転していて顔が良ければ待遇最高の世界だった!?侯爵令嬢と婚約し人生イージーモードじゃんと思っていたら、人生はそれほど甘くはない・・・・?
学校に入ったら、ここはまさかの美醜逆転世界の乙女ゲームの中だということがわかり、さらに自分の婚約者はなんとそのゲームの悪役令嬢で!!!?
美醜逆転の異世界で私は恋をする
抹茶入りココア
恋愛
気が付いたら私は森の中にいた。その森の中で頭に犬っぽい耳がある美青年と出会う。
私は美醜逆転していて女性の数が少ないという異世界に来てしまったみたいだ。
そこで出会う人達に大事にされながらその世界で私は恋をする。
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
男女比が偏っている異世界に転移して逆ハーレムを築いた、その後の話
やなぎ怜
恋愛
花嫁探しのために異世界から集団で拉致されてきた少女たちのひとりであるユーリ。それがハルの妻である。色々あって学生結婚し、ハルより年上のユーリはすでに学園を卒業している。この世界は著しく男女比が偏っているから、ユーリには他にも夫がいる。ならば負けないようにストレートに好意を示すべきだが、スラム育ちで口が悪いハルは素直な感情表現を苦手としており、そのことをもどかしく思っていた。そんな中でも、妊娠適正年齢の始まりとして定められている二〇歳の誕生日――有り体に言ってしまえば「子作り解禁日」をユーリが迎える日は近づく。それとは別に、ユーリたち拉致被害者が元の世界に帰れるかもしれないという噂も立ち……。
順風満帆に見えた一家に、ささやかな波風が立つ二日間のお話。
※作品の性質上、露骨に性的な話題が出てきます。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける
朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。
お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン
絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。
「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」
「えっ!? ええぇぇえええ!!!」
この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。
気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。
sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。
気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。
※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。
!直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。
※小説家になろうさんでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる