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第三部

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 買い物を一通りすませて、フィジャと共にイエリオさんの家に向かう。
 イエリオさんの家は、なんというか……高級住宅街っぽいところに存在していた。周りの家はどれもこれも大きいし、装飾もなんとなく、今まで見てきた家のどれとも違う。豪華、っていう言葉がぴったりである。
 本当にお金持ちの人なんだなあ、と辺りをついきょろきょろしてしまう。

 ――この状況、前もあったな。

 そう思ったのは、少し遅くて。ハッと周りを見るのをやめると、笑いを堪えるフィジャが目に入った。スーパーに行ったとき、周りが物珍しくてきょろきょろしてしまったときと同じである。

「……珍しいものばっかりなんだから、仕方ないじゃない!」

「何も言ってないよぉ」

 確かに何も言ってないけど! でも顔が言っているのだ。馬鹿にするような笑いではなく、ほほえましいものを見るような笑いなのがまたむずがゆい。

「――っと、ここだよ、フィジャの家」

 ぴた、とフィジャが歩いていた足を止める。
 そこには、周りよりも少し小さめの、それでも高そうな家があった。他の家と比べてコンパクトなのは、お金がないからではなく、単に住む人数の違いなんだろう、と思わせるくらいには、すごく高そう。

 フィジャがインターフォンを鳴らすと、キンコーンと一般的ではない音が鳴った。高い家というのは、音からして違うのか……?
 少しして、イエリオさん本人が出迎えてくれる。

「お待たせしました、どうぞ」

 完全にオフなのか、普段みたいにパリッとシャツと白衣を着こなしているわけではなく、ゆったりとした服を着ている。……もしかして、いつもは研究所帰りだったりするんだろうか。
 いつも白衣のイメージが強いから、ちょっと新鮮な感じだ。

 案内されて部屋に上がると、中はすごくごちゃっとしていた。イナリさんの部屋みたいに、散乱している汚部屋っていうわけじゃなくて、結構掃除されているけど、フィジャの部屋よりは整頓されていない印象を受ける。単純に物が多いんだろう。

「……あ」

 ふと、棚に飾られている一つの置物に目が行く。シーバイズ時代の飾り箱に似ているものを見つけた。

「気が付きましたか?」

「うわっ」

 わたしの小さな呟きを聞き逃さなかったのか、すぐ背後からイエリオさんが声をかけてくる。すごく近い。ヴィルフさん程ではないけれど、イエリオさんもなかなか身長があるので、近くに立たれると圧がある。

「これは以前、出土された前文明の遺物のレプリカなんです。流石に本物は高くて買えず……残念です」

「そ、そうなんですか」

 この飾り箱、ちょっとした物を収納するだけの物で、わたしからしたらそこまで価値のある物ではない。冬に時間を持て余す手先の器用な人が副業でちゃちゃっと作るようなものなのだが、時代が変わると本物は高くて買えない遺物、になってしまうのか……。というか作り方をわたしも知っているので、綺麗な売り物レベルでなくていいならわたしだって作れるような代物だ。
 ……作れることは黙っておこ。

 というかよく見れば、シーバイズで使っていたようなものが、あれこれ飾られている。日用品や消耗品までもが美術品のように飾られているのはちょっと笑ってしまうが、どこか懐かしい。フィンネルに来てからは、どれもこれも見慣れないものばかりだったので、少しだけ安心感を覚える。

 まあ、少しくらいならまだしも、これを一つ一つ説明していくのは疲れるので、ここに飾られているものたちを知っていることは、聞かれるまで黙っておこう。
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