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第二部

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「王族や貴族、大きな商家など、跡取りがたくさん欲しい人は、その分たくさん奥さんを迎えますし」

 ああ、まあ、その辺は流石に理解出来る。確かにそれは道理というか、一夫多妻で一番イメージ出来るのが、そのパターンだ。

「逆に、少しでも財産を外に出したくないときは、兄弟姉妹で妻や夫を共有します」

 ……なる、ほど……? まあ、確かに、筋は通っている話の様に思える。そこまで金が大事か? とは思うが、理にかなっているといえばそう、なのかな……?

「私の知り合いに、絶対働きたくないから養ってくれる男を一杯探すって言って、夫を三人迎えた人もいます」

 ……雲行きが怪しくないか? いいのかそれは? でも実際三人も旦那がいるってことは、彼女の考えに賛同した男が三人いるってことで……。

「愛する人がたくさんいるって、素敵なことだと思いますけど、でも、現実はこんなもんなんです」

 一夫一妻の人は意外と重婚には愛があると夢見がちなんですよ、と言われてしまった。確かに、その例を聞けば、好きな人が同時にたくさんできて、同じように平等に愛することがどれだけ難しいかが分かる。
 だって、こんなにも重婚を当たり前のように考えていて、ましてや複数夫がいるルーネちゃんがこんな風に言うのだから。

「だから、もし、重婚のあり方が分からなくて悩んでいるのなら、この国に限っては、そんなこと、悩むだけ無駄というか、意味がないっていうか……。どうしても納得できないなら、納得できるまで話し合うべきだと、思います」

 まあ、確かに……。これだけいろんなパターンがあるのなら、わたしたちのように、魔法でどうしようもないから結婚するしかなかった、というのも、変じゃないのかもしれない。人に言えるかは別として。
 そもそも、フィジャはわたしが好きだと言ってはくれたけど、イエリオさんたちのことをどう思っているかは教えてくれなかった。

 重婚で、みんなまとめて家族になるのなら、そこのところも話し合うべきなのだろう。……イエリオさんはともかくとして、ヴィルフさんとイナリさんに関しては、交友関係自体の好感度を上げてからじゃないと話にならないような気もするけれど。

 でも、そうか、家族か。

 男女の愛――恋愛感情とか、そういうのはまだ分からないけど、でも、彼らが『家族』になってくれるというは、いい未来の様に思う。
 ……ほんの少しだけ、道が見えた――ような気がする。

「なる、ほど……。ちょっと納得出来たかも。ありがとう」

 わたしがお礼を言うと、ルーネちゃんはまた、「そんなにたいしたこと、言ってないです……」と謙遜した。

 その後も、あれこれ女子トークをして、すっかり仲良くなったわたしたちは、また遊ぼう、と連絡先を交換したのだった。
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