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第二部

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 一夫多妻も一妻多夫も、制度として存在するのなら、別に珍しくないはずなのに、何故か実際に会えるということを想像出来ないでいたわたしに気が付いて、逆に驚いてしまった。それほどまでに、わたしにとって重婚というのは、しっくりこない話しだったのだ。

 めちゃくちゃ話を聞きたい。

 今、丁度一妻多夫について悩んでいるのだ。相談とか、すごいしたい。
 でも、恩人である彼女に、面と向かってずけずけ聞くのも、失礼に当たる気がしてためらわれる。
 えっ、ていうか結婚してるっていうことはそこそこの歳……? 結構年下に見ちゃってたんだけど、歳が近かったりするんだろうか。初対面で馴れ馴れしく話すべきじゃなかったか?

 話したいことの取捨選択が上手く出来ず、わたしは口ごもってしまった。
 でも、その考えが全部顔に出ていたのか、「何か聞きたいことが……?」と気を使われてしまった。

「い、嫌なら答えなくていいんですけど……あの、一妻多夫って、どんな感じ……なのかなって」

 ここで何でもない、と答えたところで、なんでもなくないことは分かり切っている顔をしてしまったはずなので、わたしは素直に白状した。

「あ、この間の、お連れの人……えっと、確か、蛇種の人、でしたよね? あの人以外にも、夫を迎えようというお話ですか?」

 ルーネちゃんは特に気分を害した様子を見せず、普通に話してくれる。……やっぱり、当たり前の様に重婚が浸透してるんだな、この国では。

「新たに、っていうか、同時に結婚する事情が出来たというか……。でも、わたし、一夫一妻制度の国出身なので、その、そういうの、どうなんだろう、っていうか……。わたしに出来るのかなって」

 婚姻制度どころか、年代も文化も違う出身であるのだが、そこは伏せておく。
 別に、重婚文化を馬鹿にしているというか、忌避しているわけじゃないが、それがわたしに出来るかは、また別の話。
 まあ出来るだろ、と適当に受けてしまったし、実際受けるしかない状況だったのだが、先日のフィジャの様子を見て、どうにも、適当なままにしておくのが失礼な気がしたのだ。

 ――けれど、ルーネちゃんが発したのは、意外な言葉だった。

「多分ですけど、重く考えすぎというか、受け取りすぎというか、ええと……うーん、なんて言えばいいのかな……そう、なんとかなると思いますよ、だいたいのことは」

 めちゃくちゃ軽かった。

「あ、いえ、あの、結婚なので、そうはずみで決めることでもないと思います。そこは真剣に考えた方がいいと思います。でも、結婚すると決めたなら、どんな形でも、そんなに大差ないっていうか、ええと……夫が何人いても、妻が何人いても、夫婦の形は人それぞれですから」

 意識してか、無意識なのか、ルーネちゃんは首輪のチャームをいじった。ちゃりちゃりという音がする。

「重婚するのなら、平等に愛するのが理想ではありますけど、でも、それってやっぱり理想っていいますか。一夫一妻でも、離婚する人は離婚して、再婚する人は再婚します。子供を作りたいほど愛する人を複数作ることは、悪いことじゃないですし」

 ……確かに、言われてみれば。一生の愛を誓って結婚しても、数年で離婚して、また別の人と結婚して、みたいな話、別に珍しくない。前世で生きていた頃だって、父親違いの兄弟を抱えるシングルマザーが親戚にいたし。

 いや、でも、同時にはまた別な話の気も……。

「そもそも、お金のために重婚する人もいるので、愛だけが全てじゃないと思いますよ」

 ……凄いことを聞いてしまった気がする。えっ、夫婦の形は人それぞれって、そういう……?
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