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第二部
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その後のことは、正直あまり覚えていない。
なんかめちゃくちゃに緊張して、シャワーを浴びるのすら警戒していたような記憶がある。すごく今更だけど。昨日までのわたしは、どうやってリラックスして生活できていたのか、まったく分からない。
けれど、ぎこちないわたしとは裏腹にフィジャはいつも通りだった。びっくりするくらいに。
「おはよぉ」
朝、朝食を作り始めていたフィジャはけろりとしていて、昨日とんでもない発言を聞いたのが夢だったんじゃないかと思えてきた。
「お、おはよ……」
どんな顔をして、どんな話をすればいいのか分からない。露骨に意識してます、みたいのも恥ずかしい。
今はこうして顔を合せるだけでテンパってしまうけれど、そのうち慣れるんだろうか。時間が解決してくれるんだろうか。
いや、でも、いつかはまともにフィジャと向き合えないと困るし、向き合いたいし――それに、フィジャが終わったところでまだ三人もわたしには……その、夫がいるのだ。
一妻多夫ってすげえな……。
こっちに希望〈キリグラ〉で来たときは、まあ希望〈キリグラ〉なら仕方ないな、とあっさり諦めたものだが、じわじわと実感が追い付いてくるにつれ、これやばいのでは……? という気持ちになってくる。
本当に、今更だ。正直、今でも希望〈キリグラ〉じゃあ覆らないだろうしという諦めは強いけれど。
「今日はボク仕事だけど、マレーゼはどうする?」
「え、あ、こ、この辺散策でもしようかな……? 余裕があれば図書館まで行くかも。体調は大丈夫なの?」
「うん、もう元気!」
にっこりと笑うフィジャは、いつも通り、少し子供っぽくって人懐っこいフィジャだった。ちょっとこっちだと安心する。
勉強はわたしが肋骨を折ったことによってほとんどストップしていた。なので、数字や単語を少しだけ、という段階で止まっているので、図書館に行ったところで本を読めるわけでもないけど、道のりを覚えるのは無駄じゃないはず。
イエリオさんの家がどこかは分からないし、イナリさんとヴィルフさんの家から図書館の道のりもよくわからないけれど、図書館の場所と周辺を完璧に把握できれば、フィジャの家を出て行ったとしてもたどり着くことが出来るだろうから。
「じゃあ、お昼は用意しなくて大丈夫そうだね」
「あ、うん。……ていうか、わざわざ気にしなくても、自分でなんとか出来るよ。もういい歳だし、骨も完治したし」
チョーカーを買った余りのお金と、フィジャからもらったお小遣いで、それなりにお金はあるので。
「そう? でも、ボクが好きでしてることだから。マレーゼこそ気にしないで大丈夫だよ」
……ただの会話のはずなのに、フィジャの口から『好き』という単語が出るだけで変に意識してしまう。今のは全然わたしのことなんかじゃないのに。
本当に重症だな、と思いながらも、この状況にいち早く慣れるべく、わたしはフィジャの朝食作りを手伝うのだった。
なんかめちゃくちゃに緊張して、シャワーを浴びるのすら警戒していたような記憶がある。すごく今更だけど。昨日までのわたしは、どうやってリラックスして生活できていたのか、まったく分からない。
けれど、ぎこちないわたしとは裏腹にフィジャはいつも通りだった。びっくりするくらいに。
「おはよぉ」
朝、朝食を作り始めていたフィジャはけろりとしていて、昨日とんでもない発言を聞いたのが夢だったんじゃないかと思えてきた。
「お、おはよ……」
どんな顔をして、どんな話をすればいいのか分からない。露骨に意識してます、みたいのも恥ずかしい。
今はこうして顔を合せるだけでテンパってしまうけれど、そのうち慣れるんだろうか。時間が解決してくれるんだろうか。
いや、でも、いつかはまともにフィジャと向き合えないと困るし、向き合いたいし――それに、フィジャが終わったところでまだ三人もわたしには……その、夫がいるのだ。
一妻多夫ってすげえな……。
こっちに希望〈キリグラ〉で来たときは、まあ希望〈キリグラ〉なら仕方ないな、とあっさり諦めたものだが、じわじわと実感が追い付いてくるにつれ、これやばいのでは……? という気持ちになってくる。
本当に、今更だ。正直、今でも希望〈キリグラ〉じゃあ覆らないだろうしという諦めは強いけれど。
「今日はボク仕事だけど、マレーゼはどうする?」
「え、あ、こ、この辺散策でもしようかな……? 余裕があれば図書館まで行くかも。体調は大丈夫なの?」
「うん、もう元気!」
にっこりと笑うフィジャは、いつも通り、少し子供っぽくって人懐っこいフィジャだった。ちょっとこっちだと安心する。
勉強はわたしが肋骨を折ったことによってほとんどストップしていた。なので、数字や単語を少しだけ、という段階で止まっているので、図書館に行ったところで本を読めるわけでもないけど、道のりを覚えるのは無駄じゃないはず。
イエリオさんの家がどこかは分からないし、イナリさんとヴィルフさんの家から図書館の道のりもよくわからないけれど、図書館の場所と周辺を完璧に把握できれば、フィジャの家を出て行ったとしてもたどり着くことが出来るだろうから。
「じゃあ、お昼は用意しなくて大丈夫そうだね」
「あ、うん。……ていうか、わざわざ気にしなくても、自分でなんとか出来るよ。もういい歳だし、骨も完治したし」
チョーカーを買った余りのお金と、フィジャからもらったお小遣いで、それなりにお金はあるので。
「そう? でも、ボクが好きでしてることだから。マレーゼこそ気にしないで大丈夫だよ」
……ただの会話のはずなのに、フィジャの口から『好き』という単語が出るだけで変に意識してしまう。今のは全然わたしのことなんかじゃないのに。
本当に重症だな、と思いながらも、この状況にいち早く慣れるべく、わたしはフィジャの朝食作りを手伝うのだった。
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