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第二部

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「ん、んん、どうしよう……」

 お米は当然の様になかったのだが、幸いにしてリンゴを一つ見つけたので、すりおろしリンゴにしよう! と頑張ってみたのだが。

「これ、すりおろしリンゴっていうより、リンゴジュースでは……?」

 すりおろす力をこめ過ぎたようで、随分と水分が多い、びしゃびしゃのすりおろしリンゴが出来上がってしまった。
 わたしの脳内フィジャが「だからマレーゼはやりすぎなんだってば」と苦笑いしていた。
 食べる部分がないわけじゃないけど、すりおろしリンゴってこれで正解なんだろうか……。はちみつかけた方がまだ食べ応えあるかな?

 いやでも、食欲がないなら水っぽい砲のが食べやすいかも……と、自分に言い訳しながら、すりおろしリンゴの入った皿やスプーン、水差しとコップをお盆に載せてフィジャの部屋へ向かう。
 こんな簡単なものすらまともに作れないとは、ちょっと自分の腕を過信していたようで、ショックである。安全に食べられるだけ最低ラインは何とかなっているが、それが基準ってどうなんだろう。駄目じゃない?

「フィジャ、開けるよー」

 扉をノックしながら声をかける。「うん」とガサガサな声が返ってきた。

「とりあえず、リンゴ、すりおろして来たから、食べられるだけ食べて、薬飲もう」

「……ん」

 のそ、とフィジャが起き上がる。いつの間にか服が寝巻に変わっていた。わたしがリンゴをすりおろしている間に、着替えたのだろう。

 静かな部屋に、フィジャがすりおろしリンゴを食べる音だけが響く。かちゃかちゃと食器の音だけが部屋を支配しているこの状況、ちょっと気まずい。
 わたしがこのすりおろしリンゴに対して負い目を感じているのもあるからだろうか。ごめんね、ちゃんとしたすりおろしリンゴにしてあげられなくて……。

「……ジュースみたいになっちゃって、ごめんね」

 相手は病人だし、あんまり話しかけるのも……と思っていたが、わたしはつい声に出してしまった。すりおろしリンゴもまともに作れない女で申し訳ない。

「気にしないでいいよぉ。ボクだって、最初の頃は失敗することも多かったし。作ってくれることが嬉しいから。……それに、こんなのは失敗の内に入らないよ」

 イエリオの作るご飯、今度食べてごらん、絶対もう失敗した! って気軽に言えなくなるから。と、フィジャは笑う。……そんなに凄いんだろうか?

「マレーゼの失敗なんて、可愛いものだよ。――成功するまで、何度だってボクが付き合うから」

 そう言って、フィジャは皿をお盆の上に戻した。
 そのお皿の中身は、綺麗に完食されていた。
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