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第二部
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その日の夜。よっぽど心配だったのか全力疾走でもしたようで、帰ってきたフィジャは肩で息をしていた。
「お、おかえりなさい……」
ぜえぜえと激しい息をしていたが、合間に、かろうじて「ただいま」と言ったのが分かった。
「もう少しゆっくり帰ってきてもよかったのに……」
「だ、だって! イエ、イエリオ、ホントに、止まんないんだよ。一度、話だすと、さあ!」
まあ確かに……目はずっときらきらと輝いていて、随分楽しそうにたくさんの質問をしてきたわけだが。一応、わたしが怪我人ということは忘れていなかったようで、休憩を挟まずぶっ通し、ということはなかった。お昼ご飯もちゃんと食べたし。
そう説明すれば、「そんなの、当たり前!」と言われてしまった。まあ、たしかにそれはそうなんだけど……。
「お水いる? 持ってこようか?」
文字通り、急いで帰ってきてくれたフィジャに何もしないのは流石に。わたしを心配してきてくれたわけだから。
しかし、へろへろとしたままフィジャはキッチンへと向かい、「自分でいれる……」と水を入れ、飲み始めた。
うーん、心配してくれるのはありがたいが、こうして毎日全力疾走で帰って来るつもりなんだろうか。
「イエリオは?」
「え、ああ。もう帰ったよ」
少し前、るんるんと浮かれた様子で、今日翻訳の終わった資料と、翻訳を書き留めた書類を持って帰っていった。
それが気に食わないのか、フィジャはむすっとした顔を見せる。
ようやく息が整ってきたようで、彼は口を開いた。
「……普通、怪我した嫁を放置して帰る? せめて他の夫が帰って来るまで面倒見るべきでしょ。そりゃあ、怪我させたのはボクだけど……」
自覚が足りない、と言わんばかりの言いぐさである。それはわたしにも飛び火した。
「マレーゼ、明日からはボクが帰って来るまでイエリオを家においといて。何かあったら困るし。勝手に家に来るんだから、そのくらいさせないと。困ったら頼るんだよ? イエリオじゃなくて、ボクにも、ちゃんと言ってね」
ちょっと説教じみた言い方。そう言われてしまうと、自分一人で頑張る方が失礼な気がしてくる。わたしは割と他人に甘えるほうだけど……。
「あ、じゃあ……一つお願いしていい?」
たいしたことじゃないけど、この流れでお願いしてしまおう。フィジャも、「ボクにできることなら」と言ってくれていることだし。
「フィジャの働いているお店、行ってみたいなあ、って」
そう言うと、ちょっと照れくさそうに、それでも嬉しそうにフィジャは「いいよ!」と言ってくれるのだった。
「お、おかえりなさい……」
ぜえぜえと激しい息をしていたが、合間に、かろうじて「ただいま」と言ったのが分かった。
「もう少しゆっくり帰ってきてもよかったのに……」
「だ、だって! イエ、イエリオ、ホントに、止まんないんだよ。一度、話だすと、さあ!」
まあ確かに……目はずっときらきらと輝いていて、随分楽しそうにたくさんの質問をしてきたわけだが。一応、わたしが怪我人ということは忘れていなかったようで、休憩を挟まずぶっ通し、ということはなかった。お昼ご飯もちゃんと食べたし。
そう説明すれば、「そんなの、当たり前!」と言われてしまった。まあ、たしかにそれはそうなんだけど……。
「お水いる? 持ってこようか?」
文字通り、急いで帰ってきてくれたフィジャに何もしないのは流石に。わたしを心配してきてくれたわけだから。
しかし、へろへろとしたままフィジャはキッチンへと向かい、「自分でいれる……」と水を入れ、飲み始めた。
うーん、心配してくれるのはありがたいが、こうして毎日全力疾走で帰って来るつもりなんだろうか。
「イエリオは?」
「え、ああ。もう帰ったよ」
少し前、るんるんと浮かれた様子で、今日翻訳の終わった資料と、翻訳を書き留めた書類を持って帰っていった。
それが気に食わないのか、フィジャはむすっとした顔を見せる。
ようやく息が整ってきたようで、彼は口を開いた。
「……普通、怪我した嫁を放置して帰る? せめて他の夫が帰って来るまで面倒見るべきでしょ。そりゃあ、怪我させたのはボクだけど……」
自覚が足りない、と言わんばかりの言いぐさである。それはわたしにも飛び火した。
「マレーゼ、明日からはボクが帰って来るまでイエリオを家においといて。何かあったら困るし。勝手に家に来るんだから、そのくらいさせないと。困ったら頼るんだよ? イエリオじゃなくて、ボクにも、ちゃんと言ってね」
ちょっと説教じみた言い方。そう言われてしまうと、自分一人で頑張る方が失礼な気がしてくる。わたしは割と他人に甘えるほうだけど……。
「あ、じゃあ……一つお願いしていい?」
たいしたことじゃないけど、この流れでお願いしてしまおう。フィジャも、「ボクにできることなら」と言ってくれていることだし。
「フィジャの働いているお店、行ってみたいなあ、って」
そう言うと、ちょっと照れくさそうに、それでも嬉しそうにフィジャは「いいよ!」と言ってくれるのだった。
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