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第一部
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トゥージャさんに拳骨を落とした大柄の男は、グリオンさんというらしく、店名にもなっているように、ここの工務店の店長さんのようだった。
彼に案内され、応接室のような部屋へと入る。ふかふかのソファに座るのは、わたしとイエリオさん。三人掛けのソファーだったが、ウィルフさんも含めるには少し狭かったようで、急遽椅子が一つ追加された。フィジャとイナリさんは、ソファーの後ろに立っている。なんだか、他の人が立っているにも関わらず、座っているというのは居心地が悪いのだが、わたし以外の皆はこれが当たり前、みたいな態度である。
家を買う際、ウィルフさんとイエリオさんが主にお金を出すから座る、というのは分かるのだが、何も立たせなくても……と思うのだが、獣人の常識におたおたするのは今に始まったことではない。
心の中では必死に謝りながらも、わたしは背筋を伸ばした。
わたしたちが座るソファーの正面に置かれたソファーへと、グリオンさんが座り、わたしたちのソファーと彼の座るソファーとの間に挟まれるようにして置かれた低いテーブルへと地図を広げた。
「まずは、ご結婚おめでとうございます。新居のご注文のようですが――今ですと、この辺りとこの辺りがおすすめですね」
トン、トン、と二か所が指差される。どうやら、開いている土地を管理するための地図らしい。四角がいくつも道沿いに書かれている。
まあ、正直場所を教えられても、どの辺にあたるのか、わたしには分からない。場所は適当に決めてもらおう。わたしは自分の部屋さえもらえれば、それで十分だ。
「こっちだと、私とフィジャの職場が近そうですね。こちらは冒険者ギルドが近いか……。どちらにしろ、イナリのところは今より遠くなってしまいますか……」
わたしがいまいち場所がピンと来ていないのが、イエリオさんにも伝わっているようで、家の立地は四人の都合で決まっていきそうだ。
しかし、四人の職業かあ。なんなんだろう。ウィルフさんが冒険者、というものなのは分かっているけれど、残り三人はまったく見当もつかない。イエリオさんは教師とか似合いそうだけど。見た目からの完全な偏見ではあるが。性格からすれば、研究者とか、そういう路線も考えられるか……。
「ちなみに、シーバイズ式の家を建てるならどちらの土地が都合よさそうですか?」
ぼけーっと別のことを考えていたら、急に話しかけられて肩がはねた。大げさに驚いたことに気恥ずかしさを感じながらイエリオさんを見ると、きらきらとした目でこちらを見ている。
うーん、期待しているところ悪いんだけど、それはちょっと難しいような……。
「イエリオさん、多分、フィンネルの建築様式とシーバイズの建築様式は仲悪いと思いますよ」
わたしは地図に目線を落とす。
「ほとんど細長い長方形で土地が区切られてる、ってことは、家の形もそんな感じ、ってことですよね?」
グリオンさんに聞いてみると、予想通り、肯定の言葉が返ってきた。
「奥様は他国出身なのですか? そうですね、基本的にフィンネル国は廊下の片面にしか部屋を作りません。なので、どうしても長方形になってしまうのです」
奥様、という言葉にどきり、と心臓が反応した。そうか、周りから見たらそういう関係だもんな。全然慣れない。奥様、なんて言葉にも焦ったが、他国出身、という言葉にも肝を冷やした。前文明のことに関してはあまり一般的に広がっていないようだが、千年前の人間、ということは正直知られたくない。
魔法のこともそうだが、獣人ではなく人間であることがバレてしまう。
「えー、あー、そうですね、わたしの故郷では、基本的に土地は正方形です」
わたしは何とか動揺を悟られまいと取り繕いながら、シーバイズの家の説明をする。
彼に案内され、応接室のような部屋へと入る。ふかふかのソファに座るのは、わたしとイエリオさん。三人掛けのソファーだったが、ウィルフさんも含めるには少し狭かったようで、急遽椅子が一つ追加された。フィジャとイナリさんは、ソファーの後ろに立っている。なんだか、他の人が立っているにも関わらず、座っているというのは居心地が悪いのだが、わたし以外の皆はこれが当たり前、みたいな態度である。
家を買う際、ウィルフさんとイエリオさんが主にお金を出すから座る、というのは分かるのだが、何も立たせなくても……と思うのだが、獣人の常識におたおたするのは今に始まったことではない。
心の中では必死に謝りながらも、わたしは背筋を伸ばした。
わたしたちが座るソファーの正面に置かれたソファーへと、グリオンさんが座り、わたしたちのソファーと彼の座るソファーとの間に挟まれるようにして置かれた低いテーブルへと地図を広げた。
「まずは、ご結婚おめでとうございます。新居のご注文のようですが――今ですと、この辺りとこの辺りがおすすめですね」
トン、トン、と二か所が指差される。どうやら、開いている土地を管理するための地図らしい。四角がいくつも道沿いに書かれている。
まあ、正直場所を教えられても、どの辺にあたるのか、わたしには分からない。場所は適当に決めてもらおう。わたしは自分の部屋さえもらえれば、それで十分だ。
「こっちだと、私とフィジャの職場が近そうですね。こちらは冒険者ギルドが近いか……。どちらにしろ、イナリのところは今より遠くなってしまいますか……」
わたしがいまいち場所がピンと来ていないのが、イエリオさんにも伝わっているようで、家の立地は四人の都合で決まっていきそうだ。
しかし、四人の職業かあ。なんなんだろう。ウィルフさんが冒険者、というものなのは分かっているけれど、残り三人はまったく見当もつかない。イエリオさんは教師とか似合いそうだけど。見た目からの完全な偏見ではあるが。性格からすれば、研究者とか、そういう路線も考えられるか……。
「ちなみに、シーバイズ式の家を建てるならどちらの土地が都合よさそうですか?」
ぼけーっと別のことを考えていたら、急に話しかけられて肩がはねた。大げさに驚いたことに気恥ずかしさを感じながらイエリオさんを見ると、きらきらとした目でこちらを見ている。
うーん、期待しているところ悪いんだけど、それはちょっと難しいような……。
「イエリオさん、多分、フィンネルの建築様式とシーバイズの建築様式は仲悪いと思いますよ」
わたしは地図に目線を落とす。
「ほとんど細長い長方形で土地が区切られてる、ってことは、家の形もそんな感じ、ってことですよね?」
グリオンさんに聞いてみると、予想通り、肯定の言葉が返ってきた。
「奥様は他国出身なのですか? そうですね、基本的にフィンネル国は廊下の片面にしか部屋を作りません。なので、どうしても長方形になってしまうのです」
奥様、という言葉にどきり、と心臓が反応した。そうか、周りから見たらそういう関係だもんな。全然慣れない。奥様、なんて言葉にも焦ったが、他国出身、という言葉にも肝を冷やした。前文明のことに関してはあまり一般的に広がっていないようだが、千年前の人間、ということは正直知られたくない。
魔法のこともそうだが、獣人ではなく人間であることがバレてしまう。
「えー、あー、そうですね、わたしの故郷では、基本的に土地は正方形です」
わたしは何とか動揺を悟られまいと取り繕いながら、シーバイズの家の説明をする。
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