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第一部

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 というわけで、遅めの昼食を終え、わたしたち五人はアクセサリーショップへと来ていた。
 店内はきらびやかで、並んでいる装飾品はどれも高そうだ。ショーケースの中に並ぶのが、どれもこれも、指輪ではなく首輪なのが、本当に獣人の間では首輪が人気なんだな、というのが見て取れる。人気、というか、品物の大半が首輪なので、これが当たり前なのだろう。

 ちなみに、お金はちゃんと調達してきた。わたしが持っていた、買い物のおつりを売り飛ばしてきたのである。わたしとしては、たいした金額にはならないだろうな、と焦っていたのだが、ここの国では、わたしの持つ硬貨は千年前のもの。「こんなにいい状態のものは見たことがない!」と非常に高値で買ってもらいました。まあ、保存状態がいいもなにも、つい先日までわたしが実際に使っていたものだしな。

 なお、イエリオさんが欲しい! とごねたため、シーバイズ硬貨を各一種類づつ差し上げました。持っててもここの国じゃ使えないし、シーバイズの硬貨は金銀を使ってないので、単体としてはあまり価値がない。

 閑話休題。

「どんなものがいい、とかありますか?」

 イエリオさんはショーケースの中身を見ながら、わたしに話しかけてきた。挙動不審で、あからさまにこういったところへ来たことがない、という風なフィジャとイナリさん、帰りたいと今にも言い出しそうなほどの虚無顔のウィルフさんと違って、イエリオさんは落ち着いている。こういう場所、慣れているのかな。

「うーん、小さめの宝石がついてると助かるかな……。あ、わたしが皆さんに送る分の話ですよ」

 魔法付与は天然もので、かつ、小さくて固いものに付けやすい。これはわたし個人の話だけどね。人によってやりやすいものは変わるけど、わたしは石がやりやすい。自然のものだと魔法が入っていきやすいし、小さいと魔力もそこまで消費しない。丈夫であればあるほど、多少無理に魔法を付与しても壊れないので、神経を使わなくていい。
 せっかくなら宝石の色を瞳の色に合わせるのもありだな……。

 でもなあ、どれもこれも、分かりやすく首輪なんだよな!!

 いかにもな首輪にに宝石がついてるとちょっと趣味じゃないんだよな、と思いながら、なるべく動物用ぽくないものを探す。

 ふと、一つのチョーカーが目に入る。いかにも動物用の首輪、というものが多く並ぶ中、片隅に置かれたそのチョーカーは、太い黒の革とゴールドの細いチェーンの二連チョーカー。チェーン方は、宝石のチャームが付いている。
 これ、かなりいいのでは!?
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