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第二部

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 いやもう、地獄である。
 骨折を舐めていた。
 座っているのはしんどいが、寝ていても起き上がるときが地獄なので、それを思うと座っている方が気持ち的には楽。

 これでも女なので、痛みには強い方だと思っていたが、呼吸する度に痛むので、もやは息すらしたくない。
 これが足とか腕ならまた違うんだろうな……。息苦しさを感じるのは、肋骨をぽっきりやってしまったからに違いない。

 それにしても、完治するまで文字の勉強とか考えたくもない。
 一分一秒、早く過ぎて二か月後になってくれと願う日々だ。
 入院生活がもう終わろうとしているが、一週間、フィジャは毎日仕事前か、仕事終わりに顔を見せてくれていた。

 とはいえ、わたしはまともに会話する元気がないので、フィジャが一方的に話して行くだけなのだが。わたしに怪我をさせてしまったと負い目があるのか、いつも悲しそうな笑顔を浮かべていた。
 気にしなくてもいいのにな。
 折れた肋骨は痛くて、胸は常に苦しいけど、別にフィジャに対して恨みはない。だって彼は何も悪くないのだから。

 あるとすれば、咄嗟の判断が出来なかった自分と、フィジャを突き落とした奴らに対してだけである。
 そう言いたいのだが、いかんせん、極力しゃべりたくない状況下で、うまく言葉をかいつまんで伝えられた自信がない。伝わってたらフィジャはこんな顔をしていない。
 早く元気になるのが一番か。

 そういえば、あの三人組だが、結局捕まったらしい。司書さんが頑張ってとっ捕まえてくれたそうだ。なので治療費の心配はしなくていいようだ。彼らが払ってくれるようだから。
 あんな暴挙にでた理由だが、わたしがフィジャと一緒にいるのが気に食わなかったらしい。
 わたしがスコティッシュフォールドが好き、というだけでそれをイメージして変態〈トラレンス〉したのだが、どうやらスコティッシュフォールドの獣人はモテるみたいだ。まあ、耳小さいもんな……。
 しっぽもスカートで隠れていたしで、わたしはかなりの美人に見えていたようだ。

 だからこそ、どちらかと言えば非モテなフィジャと一緒にいるのが気に食わなくて、本を選んでいたフィジャに突っかかって文句を言っているうちに、突き落とすところまで発展したそうだ。
 アホらしい……。

 美醜観がいまいちこちらと合わなくてピンとこない。
 いやこれは美醜観が同じになっても理解できることじゃないか。付き合っているのが気に食わないからって突き落とすような思考回路は一生理解できないし、したくもない。
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