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 しかし、このホワイト・ネルリエがここに住んでいたとするなら、わたしたちがここを使おうとしたらホワイト・ネルリエを追い出すことになってしまうのだろうか。

「ねえ、わたしたち、ここを使いたいのだけれど、貴方、ここに住んでいるの?」

「ぷー?」

 わたしの言葉が理解できていないのか、頭をかしげるばかり。「ぷー?」と右側に頭を傾げたかと思えば、少しして、「ぷぷー?」と、今度は左側に頭を傾げる。それを繰り返していた。
 かわいい。とてもかわいいのだが……この可愛さに現実逃避していてはいけない。

「貴方、行くところはあるの?」

「ぷぷー!」

 ホワイト・ネルリエはすさまじい跳躍力で、またわたしの胸元に飛び込んでくる。思わずキャッチしてしまったが、これでは最初に逆戻りだ。

「ぷっぷっぷぅ」

 超ご機嫌である。

「女神……もう、貴女がその子の面倒をみたらどうだい? 随分と懐いているようだし」

 ウィルエールの言葉に思わず固まってしまう。まさかそんなことを言い出すとは。
 とはいえ、その存在自体が怪しまれている聖獣相手だ。保護法みたいなものはない。これはしない方がいい、あれはした方がいい、と決められるほどの情報がないのだ。
 仮に飼ったとしても、誰もわたしを咎めるものはいないのだ。それに、エンティパイアにもかつて聖獣と友人になり、共に過ごしていた令嬢の話がある。元ネタのあるおとぎ話として語られていたが、それが実在したのならば、わたしが面倒を見たところで、前例のない話、というわけにはならない。

「……貴方、わたしと一緒に暮らす?」

「ぷー!」

 試しに聞いてみると、それはそれは、元気でうれしそうな声が返ってきた。言葉が通じているのか通じていないのか、分からないな、と思っていたが、今回は通じたのだと思う。それほどまでに、タイミングがばっちりだった。

「じゃあ、名前がないとよね。そうねえ……」

 きらきらとわたしを見つめるホワイト・ネルリエの瞳を見ていると、ふと、一つの名前が頭に浮かんだ。
 ユキ。
 どうしてそうなったのかは分からないが、この名前しかないと思った。まあ、白いし、雪っぽく見えなくも……どうだろう。

「貴方の名前はユキにしましょう」

「ぷ! ぷー! ぷゆゆゆぅ!」

 よっぽど気に入ったのか、随分とご機嫌そうな鳴き声を上げる。

「貴方、この店の看板息子になるのね」

 聖獣がいる修理店だなんて、随分と目立つ。お客さんと福を運ぶ存在になるといいんだけれど。

「これからよろしくね、ユキ」

「ぷゆー!」

 まかせろ! と言わんばかりにホワイト・ネルリエ――ユキが鳴いた。
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