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 ギルドにたどり着くと、修理店にはウィルエールがいた。アルベルトと二人きりになってしまうと思っていたから、ちょっとだけほっとした。アルベルトが嫌いなわけではないが、今の彼と二人きりになるのは、少し気まずい。

「おや、女神。どうしたんだい」

 わたしに気が付くと、ウィルエールは作業を中断し、こちらを向く。

「ごめんなさい、邪魔をしたかしら」

「まさか! 女神のことなら、どんなことでも優先するさ! それで、ご用は?」

「アルベルトの剣を修理しに来たの。――あっ!」

 ポケットにしまい込んだフォイネシュタインを取り出そうとして、それを落としてしまう。
 それを拾おうと追いかけ、手を伸ばしたところで、アルベルトもまた、拾おうとしてくれたようで、彼と手が重なりそうになる――はずだった。

 ――ストン。

 わたしとアルベルトの手の間に、するりと鞘付きの剣が滑り込んできた。弾かれたフォイネシュタインが、カツン! と勢いよくどこかへと転がっていく。
 割り込んできた剣はアルベルトから預かっていたものだ。

「彼の剣ならここに」

 にっこりと笑いながら、アルベルトの剣を持つのはウィルエールだ。
 剣にはフォイネシュタインがはまっており、ちゃんと直っているようだ。

「今しがた直し終えたところだよ。丁度、フォイネシュタインが手持ちにあってね。これでもう、慣れない武器を使って、いちいち女神に相談しに来なくてよくなるね?」

 彼は残業でアルベルトの剣を修理してくれていたらしい。
 笑顔の圧が強くて怖い。

「おい、危ないだろ! フィーが怪我したらどうするんだ!」

「馬鹿だなあ。ぼくが女神に怪我させるわけないだろう。……貴方の手の甲か指が、砕ける未来はあったかもしれないけど」

 噛みつく様に怒鳴るアルベルトに、しれっとウィルエールは言う。その表情は全く悪びれる様子が見えず、むしろ、アルベルトに怪我がなかっただけ感謝してほしい、と言わんばかりの、挑発するような顔だった。
 バチバチとにらみ合う二人をよそに、わたしはそそくさとフォイネシュタインを拾う。
 先ほど、思い切り鞘に当たっていたが、ヒビ等の不具合は見られない。流石に、表面に少し傷がついていたが、このくらいなら研磨すれば問題ない。

「二人とも、あんまり喧嘩しないでくださる? ……アルベルト、これは返しておくわ」

 そう言って、わたしはアルベルトへフォイネシュタインを返した。彼の剣がもう直ったというのなら、これはお役御免ということだ。
 アルベルトがそれを受け取ると、ウィルエールは彼の剣を、アルベルトに押し付ける。

「ほら、とっとと代金払って帰るんだね」

「ちょっと、そう言う言い方はないでしょう!」

 仮にも相手は客である。そしてこっちは客商売。よっぽど相手が常識知らずで迷惑をかけるならまだしも、客相手にそんな態度はないだろう。
 アルベルトは、ウィルエールの様子を見て、深くため息を吐いた。

「一緒に店をやる店員がこれじゃあ大変だな、フィー。嫌になったらいつでも俺のところに来ていいからな」

 そう言って代金を払い、帰っていくアルベルトは、普段の彼の様に見えた。
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