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「フィー! 久しぶりだな!」

 にこにこと楽しそうにやってくるアルベルト。そして彼は何の迷いもなく、わたしの隣に座る。わたしの隣、というか、わたしの席が六人席の右端なので、彼の位置はいわゆるお誕生日席、という奴だが。

「アルベルト、どうだった? 依頼は」

「今回もぬかりなく。しっかりこなしてきたぜ」

 ロルメと特に自己紹介のやり取りもないままに、会話をするアルベルト。どうやらここは知り合いらしい。まあ、不思議ではないか。わたしもアルベルトの交友関係をすべて把握しているわけではない。
 というか、むしろわたしから会いに行くことはあまりなく、彼が会いに来ることばかりで、そういう時は大抵一人なので、マルシ以外の交友関係をほとんど知らない。
 わたしから会いに行かないのは、扱いが雑なのではなく、わたしから会いに行く必要がないくらい、頻繁にわたしのところへ顔を出しにくるのだ。

「そう言えばアルベルト、代用の剣はまだ使えそう?」

「え? ああ、うん。今のところは、まあ。でも少し魔力が減ってきたから、また込めてくれると嬉しい」

 そう言ってアルベルトは剣をこちらに渡してくる。依頼帰りにそのままこの酒場に寄ったのだろうか。
 わたしはそれを受け取ると、きゅ、と柄を握り、魔力を流し込む。このくらいなら道具もなく、この場で出来る。

「フィオディーナ、真面目ねえ。こんなところでも仕事してるなんて」

「貴女も似たようなものでしょう。さっきのスレムルムの話の時なんて、普通に受付嬢の顔、してたわよ」

 そんな話をルディネーとしていると、ふと、なんてことない様に、ギルド職員のカゼンが「術具修理って大変そうだな」と言った。

「オレは術具修理なんてさっぱりだけど、アルベルトの剣の修理にこれだけ時間がかかるんだもんな。そりゃあ、あの未修理の術具の山さばくのに時間かかるってもんだ」

「ああ、アルベルトの剣は、フォイネシュタインが手に入ればすぐにでも直せますわよ」

 わたしがそう言うと、カゼンは「えっ」という顔をしていた。なんだろう。
 まだフォイネシュタインは手に入ってない、よね? だって貰っていないし、手に入ったから新しく修理依頼がきていないのだから。
 わたしが混乱しているのが伝わったのか、カゼンもカゼンでよくわかっていないようで、混乱している様子がうかがえた。
 そんな中、事情を知っているのか、マルシが呆れたようなため息を吐く。

「アル、諦めろよ」

「ぐっ……」

 アルベルトが視線を泳がせたかと思うと、一つ咳ばらいをした。

「……その、ごめん、フィー。本当はもうフォイネシュタインあるんだ」

 ……なんですって?
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