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96話 大規模ダンジョン攻略戦・攻略完了編
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ヴェルグからの突然の口づけに呆然としていると、突如後方からガラガラと音が聞こえてきた
まだ何かあるのか!?と振り向くと、ヴェルグが張った結界が音を立てて崩れ去っていた
結界の中から、ディストとリュミナが慌てて駆け付け、勇者(笑)一行は呆然としたままだ
「主!」
「ご主人様!」
「二人とも、無事か~」
気の抜けた声で、2人に尋ねる
ちなみに、俺はかなりボロボロだったりする
舐めていたわけでは無いが、慢心があったのは否めない
それは何故か?
実は、神具である防具を装備していなかったからだ
結果、死ぬような攻撃を食らい、満身創痍なのだから
服はあちこち斬られて破れており、拳を食らった部分は穴が空いていたりしている
え?途中で神具を装備すればよかったんじゃないかって?
そんな余裕があるわけないだろ
今、こうして無事なのも、ヴェルグが遊び感覚で戦っていたに過ぎないのだから
駆け付けたリュミナとディストは、こちらの惨状を確認した後
「申し訳ありませんでした。油断をしていたつもりはなかったのですが、まさかあれほどとは」
「ご主人様、直ぐに治癒しますね」
「気にするな、ディスト。ヴェルグは正真正銘、神に近し者か若しくは神そのものだ。リュミナも良く守ってくれた」
ディストは己が未熟を噛みしめ、リュミナは労いに嬉しそうに微笑む
そこに、勇者(笑)一行が近寄ってきて
「クロノアスさん!マジ、パネェっす!」
「私達のじゃ、殺されていたね」
「そもそも、ここまで来れてないわ」
「ははは、俺、何を意固地になってんだろう?」
「……」
八木が興奮して褒め、春宮と姫崎は今までを振り返り、阿藤は後悔の言葉を口にし、来栖は黙ったまま
4人の興奮は止まず、来栖はそれを黙ったまま聞いている
皆が談笑していると、地面から光が現れ、ヴェルグの姿が現れる
全員が一気に戦闘態勢に入るが
『や♪この映像が流れているってことは、僕は負けたんだね。それじゃ、簡潔に話すよ。まず、黒幕については、多分喋ってると思うから簡略するね♪賞品は適当に持って帰って行ってね♪」
その言葉を皮切りに、壁の一部分が崩れ、装備品や金銀財宝が現れる
俺を除く全員が「「「「「「「おおっ!!」」」」」」」と目の色を変えるが
『部屋に入れるのは、勝者だけだよ。規定量持ち出したら入れなくなるからね♪それと、10分後にはダンジョンは元に戻るから。ちょっと地響きするけど、許してね♪その後は、魔法陣が光るから、それで入り口まで戻れるよ。そうそう!いくつかの階層は消滅するから、その階層にいる人間は、先に脱出させとくねぇ♪それじゃ、最後に一言、ダンジョン完全攻略おめでとう!』
そして光は収まり、映像が消える
映像が消えた後、7人は部屋に向かって走り
ガンッ!!
見えない壁にぶち当たる
それも勢いよく
ふぎゃっ!って声が聞こえ、額や鼻など、顔を抑えて蹲る
「何で、入れないんだ!」
来栖よ、お前は映像の言葉を聞いて無いのか?
だが、それは来栖だけではなかったようで
「お宝が、目の前にあるのに!」
「く、悔しいです」
ディストやリュミナまで来栖みたいになる始末
前世のラノベや転生後の書物で、話半分に思っていたが、〝竜がお宝好き〟というのは本当だったらしい
それも、理性を若干忘れるほどには
残り4人も同じようになってはいるが、思い出したようで
「ああ、そっか。ディストさんやリュミナさんも無理って事は、さっきの映像の子と戦って勝った、クロノアスさんしか権利が無いのか」
「思わず走ってしまったわ。恥ずかしい」
「あれだけの金銀財宝を見たら、仕方ないよ」
「くそ~、目の前にあるのに~」
八木が正論を言い、姫崎が恥ずかしがり、春宮は達観
阿藤は今にも血の涙を流しそうだ
ディストとリュミナも八木の言葉に納得し、恥ずかしそうに見えない壁から離れる
しかし、ブレない男が一人
「何を言ってるんだ?皆でクリアしたんだから、俺達も貰えて当たり前だろ?・・・そうか!お前が独り占めするために、壁を作っているんだな!」
そう言って俺を睨む来栖
6人は口を開け、ポカーンとした顔をする
ホント・・こいつはどこまでご都合主義で頭お花畑なんだ?
呆れしか出てこない
もう、お宝とかどうでも良いや・・・
お宝部屋に背を向け、今はまだ、黒ずんだままの魔法陣へ向かう
その様子を見た4人は
「え!?持って帰らないんですか!?」
「勿体ないですよ!」
「せっかく苦労したんですし・・」
「そうですよ!持って帰りましょうよ!」
口々にお宝を持ち帰るべきと言ってくる
ディストとリュミナも欲しそうな顔をしてる
そこで俺は、折れた魔剣の柄と刃を拾い上げ
「これで十分だ。後は要らない」
一言でばっさり切り捨てる
そもそも、ヴェルグを殺したのは俺だ
そんな俺が、勝者とはいえ、死者の部屋を荒らすようなことはしたくない
敗者は勝者に全て奪われると言うが、それは間違いだと思う
この世界は弱肉強食で、命が軽い世界だけど、最低限の敬意は払うべきだ
それに、彼女は言うほど憎めない相手だった
生まれや育ちが違えば、きっと良い友人になれたのでは?と思ってしまったのだから
ただ、相容れない関係性があり、殺し合うしかなかっただけに過ぎない
俺には大切な、愛してる人達がいるから、殺されるわけにはいかなかっただけなのだから
しかし、まだ何か来栖が喚いている
「自分だけ魔剣を拾うとか卑怯だ」とか「部屋から武器を取ってきてよこせ」とか
俺が、折れたとはいえ魔剣を回収したのは、確実に危険だと判断したに過ぎない
それにこれは、勝者の報酬ではなく、彼女の墓標に過ぎない
だから、俺はつい言ってしまった
「お前って、人として最低だな」と
キレるでもなく、呆れるでもなく、侮蔑ですら無い
たった一つ思った事・・寂しい奴だな、と
その言葉に全員が黙り込む
来栖ですら「なっ!」と驚いた
それ以降、誰も喋らなくなった
そして・・・地響きが起こり、ダンジョンが元に戻っていくと誰もが感じた
それと同時に、魔法陣が光を放つ
俺は無言で魔法陣を潜り、それを追いかける様に、皆も続く
来栖も結局、最後に魔法陣を潜り、俺達は最下層を後にした
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
誰もいなくなった最下層で、声が響く
『ラフィ・・やっぱり、かっこいいよねぇ♪・・・・・・よし、決めた!都合が良い事に、鎖も楔も消え去ったし、神喰いとしての力もほとんど消えたしね。まぁ、使えないわけじゃないけど。とは言っても、身体の再生にはちょっと時間は必要かな?・・・後は、全部込めないといけないよね。次死んだら復活は出来ないけど、それも仕方ないかな。もっと大事な物を見つけちゃったしね♪問題は・・・』
そして、声は消える
自身が決めた行動に移るために
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
魔法陣を潜り、ダンジョン入口に戻ってきた俺達は、同じく戻ってきた生き残りの冒険者達と再び顔を合わせた
「おお!無事だったか!で、どうなった!?」
「待て待て、まずはここの監視員に話をしてからだろう」
「その前に、お礼を言うべきでしょう」
「そうですよね。皆さん!声を合わせていきますよ!」
「「「「「ありがとうございました!!」」」」
上階層で指揮を執っていた冒険者が詰め寄り、中階層で勇者(笑)達といた冒険者が報告が先だと言い、他の冒険者はお礼を述べる
来栖を除く一行は「足手まとい以下だった」「何も役に立たなかった」等々、自分たちはお礼を言われるべきではないと固辞し、俺へ視線を向ける
来栖はどこか誇らしげで、当たり前だ!みたいな態度でいるが、中階層の冒険者達は来栖の悪態を知っているので無視を決め込む
ディストとリュミナも俺へと視線を向け「全ては我らが主が」「私もお礼を言われるほどの事は」と話してから、誰が全てを成しえたのかを語る
それを聞いた上階層冒険者達も察したのか、来栖の態度をガン無視する
耐えかねた来栖が声を上げようとして、4人に取り押さえられる
そこに監視員とタマモがやってきて
「兄様!」
「皆さん!よくぞ御無事で!」
来栖を除く全員が再会を喜び合った
ダンジョン入り口前で話をするにも狭いので、軍の駐屯地へと移動を開始する
移動しながら、先に結果を報告しとくべきと考え、タマモへ伝言を頼むことにした
「タマモ、悪いんだけど、先にミリア達に状況を伝えに言ってくれないか?ミリア達に話せば、色々と進めてくれるだろうし」
「わかりました!兄様はどうされるのですか?」
「俺もある程度、話をしたら戻るよ。あ、伝言はギルド側にも話すように伝えてくれな」
「了解です!」
ビシッ!と敬礼をし、召喚陣からミリア達の元に戻るタマモ
しかしタマモよ・・その敬礼は何処で覚えたんだ?
一つ謎が残ってしまったが、まぁ良いかな?
タマモに伝言を任せた後は、軍駐屯地で休息を取りながら、監視員と軍駐屯地の幹部を交えた聞き取り調査が行われる
尤も、幹部は全員から聞き取り調査をするわけでは無い
現在、指揮所天幕内に呼ばれたのは、上階層で指揮をしていた冒険者、中階層でリーダー格だった冒険者、それと俺達8人だ
天幕に向かう道中、俺は4人に視線を送り、4人もその視線に頷く
そのやり取りの内容は『来栖は任せた、任されました』である
ぶっちゃけた話、色々と言われても困るわけだ
なので、事前にディストとリュミナを含めた6人へ、視線で合図を送っておいた
来栖が暴走しそうになったら止め、俺の話を肯定する
但し、抜けていたり、補足説明が必要な場合は、来栖以外の誰かが行う事で合意したのである
そして、報告会という聞き取り調査が行われる
最初に、異変前の話から始まり、次に俺達が突入後の話
そこから上階層での生き残りに出会うまで話、上階層冒険者と俺達3人で話を合わせて進める
次に別れてからと中階層冒険者達との話に入る
そして、勇者(笑)一行の話に入り、来栖が「嘘だ!」とか「でたらめ言うな!」等と吠えるも、来栖以外の全員が概ねこちらの言葉を肯定しており、来栖の話は無視された
簡単な話、虚言、妄想の類と判断されたわけだ
その後は、中階層冒険者と別れてからの話になり、来栖の言葉は無視され、最後の話に
ここで俺は、一つだけ嘘をつくことにした
「以上が、事の経緯です。その後、地響きがし始め、魔法陣が起動したので帰還しました」
「他には何かなかったのか?攻略の証とか」
「いえ、特に何もなかったですよ。恐らくですが、今回の攻略の証は無事に帰還することが証ではないかと」
「ふぅむ・・・異変があったわけだし、証自体も特殊だと考えれば、その話も間違いではないか・・本当に何も無かったんだな?」
「ええ。何も無かったですよ」
ディスト、リュミナ、八木、阿藤、姫崎、春宮も同意する
そこで来栖が何か言おうとして、春宮にアババババされ、姫崎に拳骨を落とされ、八木と阿藤が口を塞ぐ
その様子を見ていた監視員と幹部は
「・・・・・分かった。上には、そう報告を上げておく」
監視員も幹部も深く、とても深ぁ~い溜息をついて、こちらの話を調査報告として纏め上げた
そう、俺が付いた嘘とは〝戦利品について〟である
金銀財宝のあった部屋は無かったことにし、魔剣の回収も話さなかった
魔剣については、危険がある可能性もあったからだが
聞き取り調査も終わり、全員の聞き取り調査が終わるまでは待機して欲しいと言われ、俺達8人は一つの天幕の中で休んでいた
尚、来栖は未だに気絶中である
そんな中、4人が質問を投げかける
「えっと・・・本当に嘘ついて良かったんですか?」
「流石に、魔剣については話せないしな。色々誤魔化していたのは、春宮だって気付いていただろう?」
「はい。ただ、何と言うか・・・」
「優華の言いたいことは、わかるわよ。それで、クロノアスさんは何故、あの部屋の事も内緒にしたんですか?」
「あの部屋については、何となくかな。今後、他の冒険者が踏破して、見つけた場合は仕方ないけど、今はそっとしておきたかったんだ」
「あれを見たので、理解は出来ますけど・・・」
「まぁ、クロノアスさんが一番の功労者だしなぁ。俺も勿体ないって気持ちはまだあるけど、あれはなぁ」
「強いからモテるのか、イケメンだからモテるのか、何か魅力があるのか・・・どうしたら、モテますか?」
「八木の気持ちは分からなくもないけどな。後、阿藤、俺はイケメンではないぞ」
「嘘だっ!!イケメンはみんなそう言うんだ!来栖も顔だけは良いからモテるし!」
阿藤が某鉈少女みたいな言い方をし、可愛い女の子をお持ち帰りぃ!したい!と、今にも血の涙を流しそうな勢いになる
俺が宥めると逆効果な気もするので、3人に任せておく
ちなみに、4人が言っている(阿藤は別の意味で)あれとは、ヴェルグが最後にしてきたキスの事である
そう!全員に目撃されていたのだ!
当初、ディストとリュミナは「呪いは大丈夫ですか!?」「毒物検知!呪い検知!・・何も無い?そんなわけがあるはずない!」と大混乱し、結構荒れた
5人に至っては呆然とし、我に返った阿藤が、血の涙を流しそうになったのは言うまでもない
春宮と姫崎は顔を赤らめさせ、八木は「さっすが、クロノアスさん!」と煽る始末
来栖に至っては「敵と通じていたのか、この裏切り者!」と見当違いな言葉を発し、ディストにマジギレされ、半殺しの目にあっていたりする
尚、そんな来栖を治療したのはリュミナと春宮だ
そして俺も、正気に戻ってから冷や汗がブワッ!と吹き出し、小刻みに震えていたらしい
らしいと言うのは、自覚が無かったからだ
その時に俺が思っていた事とは
(ヤバいヤバいヤバい!ミリア達にバレたら、またあの怖い笑顔になる!目が単一色になる!)
である
万が一、バレた場合の言い訳を必死に考えてもいた
そして、ゾクッと悪寒がする
まさか・・・もうバレたんじゃないよな?
タマモには話していないし、聞き取り調査の時も話していない
大丈夫だ・・バレるはずがない
結論だけ言うと、近い将来にバレた事だけ言っておく
そんなこんなで休息を取りながら話をし、その後は雑談に
雑談の途中で、他の冒険者の聞き取り調査が終わったと伝令が来て、来栖を強制的(物理)に目を覚まさせ、全員が外に出る
外には聞き取り調査が終わった冒険者(寄生虫冒険者はいなかった)が集合しており、これからの事を話し合う
「さて、俺達は皇都に戻っても良いらしいんだが」
「1日くらいは、休息を取りたいよなぁ」
「ああ。それで、そっちはどうなんだ?」
「俺達か。そう言えば何も言われてないな」
ふむ、聞きに行くか
そう考えたところで、幹部の一人がこちらへとやってくる
「失礼、伝え忘れをしていたので。クロノアス卿一行も皇都への帰還を許可します。ただ・・・」
「ただ?なんですか?」
「非常に言いにくいのですが、上に報告した所、帰還後は速やかに皇城へ来られたしと。他の冒険者の方々も、ギルドへ出頭する様にと通達が」
この場にいる全員の顔が、嫌そうな顔になったのは、仕方の無い事だろう・・・もう一回言う、仕方が無いと俺は思う
さて・・ここで冒険者が言ったさっきの言葉「1日くらいは、休息を取りたいよなぁ」が全員の心を占める
しかし、現実は無慈悲だった
「出来る事なら、早急に戻ってきて欲しいと・・・」
どこのブラック企業だよ
いや・・この世界はある意味、ブラック企業だらけだよなチクショウ!
俺がゲートを使えることは軍にバレているので、全員が渋々、皇都に戻る旨を良しとした
明日は、おやすみになると良いなぁ・・・・
まだ何かあるのか!?と振り向くと、ヴェルグが張った結界が音を立てて崩れ去っていた
結界の中から、ディストとリュミナが慌てて駆け付け、勇者(笑)一行は呆然としたままだ
「主!」
「ご主人様!」
「二人とも、無事か~」
気の抜けた声で、2人に尋ねる
ちなみに、俺はかなりボロボロだったりする
舐めていたわけでは無いが、慢心があったのは否めない
それは何故か?
実は、神具である防具を装備していなかったからだ
結果、死ぬような攻撃を食らい、満身創痍なのだから
服はあちこち斬られて破れており、拳を食らった部分は穴が空いていたりしている
え?途中で神具を装備すればよかったんじゃないかって?
そんな余裕があるわけないだろ
今、こうして無事なのも、ヴェルグが遊び感覚で戦っていたに過ぎないのだから
駆け付けたリュミナとディストは、こちらの惨状を確認した後
「申し訳ありませんでした。油断をしていたつもりはなかったのですが、まさかあれほどとは」
「ご主人様、直ぐに治癒しますね」
「気にするな、ディスト。ヴェルグは正真正銘、神に近し者か若しくは神そのものだ。リュミナも良く守ってくれた」
ディストは己が未熟を噛みしめ、リュミナは労いに嬉しそうに微笑む
そこに、勇者(笑)一行が近寄ってきて
「クロノアスさん!マジ、パネェっす!」
「私達のじゃ、殺されていたね」
「そもそも、ここまで来れてないわ」
「ははは、俺、何を意固地になってんだろう?」
「……」
八木が興奮して褒め、春宮と姫崎は今までを振り返り、阿藤は後悔の言葉を口にし、来栖は黙ったまま
4人の興奮は止まず、来栖はそれを黙ったまま聞いている
皆が談笑していると、地面から光が現れ、ヴェルグの姿が現れる
全員が一気に戦闘態勢に入るが
『や♪この映像が流れているってことは、僕は負けたんだね。それじゃ、簡潔に話すよ。まず、黒幕については、多分喋ってると思うから簡略するね♪賞品は適当に持って帰って行ってね♪」
その言葉を皮切りに、壁の一部分が崩れ、装備品や金銀財宝が現れる
俺を除く全員が「「「「「「「おおっ!!」」」」」」」と目の色を変えるが
『部屋に入れるのは、勝者だけだよ。規定量持ち出したら入れなくなるからね♪それと、10分後にはダンジョンは元に戻るから。ちょっと地響きするけど、許してね♪その後は、魔法陣が光るから、それで入り口まで戻れるよ。そうそう!いくつかの階層は消滅するから、その階層にいる人間は、先に脱出させとくねぇ♪それじゃ、最後に一言、ダンジョン完全攻略おめでとう!』
そして光は収まり、映像が消える
映像が消えた後、7人は部屋に向かって走り
ガンッ!!
見えない壁にぶち当たる
それも勢いよく
ふぎゃっ!って声が聞こえ、額や鼻など、顔を抑えて蹲る
「何で、入れないんだ!」
来栖よ、お前は映像の言葉を聞いて無いのか?
だが、それは来栖だけではなかったようで
「お宝が、目の前にあるのに!」
「く、悔しいです」
ディストやリュミナまで来栖みたいになる始末
前世のラノベや転生後の書物で、話半分に思っていたが、〝竜がお宝好き〟というのは本当だったらしい
それも、理性を若干忘れるほどには
残り4人も同じようになってはいるが、思い出したようで
「ああ、そっか。ディストさんやリュミナさんも無理って事は、さっきの映像の子と戦って勝った、クロノアスさんしか権利が無いのか」
「思わず走ってしまったわ。恥ずかしい」
「あれだけの金銀財宝を見たら、仕方ないよ」
「くそ~、目の前にあるのに~」
八木が正論を言い、姫崎が恥ずかしがり、春宮は達観
阿藤は今にも血の涙を流しそうだ
ディストとリュミナも八木の言葉に納得し、恥ずかしそうに見えない壁から離れる
しかし、ブレない男が一人
「何を言ってるんだ?皆でクリアしたんだから、俺達も貰えて当たり前だろ?・・・そうか!お前が独り占めするために、壁を作っているんだな!」
そう言って俺を睨む来栖
6人は口を開け、ポカーンとした顔をする
ホント・・こいつはどこまでご都合主義で頭お花畑なんだ?
呆れしか出てこない
もう、お宝とかどうでも良いや・・・
お宝部屋に背を向け、今はまだ、黒ずんだままの魔法陣へ向かう
その様子を見た4人は
「え!?持って帰らないんですか!?」
「勿体ないですよ!」
「せっかく苦労したんですし・・」
「そうですよ!持って帰りましょうよ!」
口々にお宝を持ち帰るべきと言ってくる
ディストとリュミナも欲しそうな顔をしてる
そこで俺は、折れた魔剣の柄と刃を拾い上げ
「これで十分だ。後は要らない」
一言でばっさり切り捨てる
そもそも、ヴェルグを殺したのは俺だ
そんな俺が、勝者とはいえ、死者の部屋を荒らすようなことはしたくない
敗者は勝者に全て奪われると言うが、それは間違いだと思う
この世界は弱肉強食で、命が軽い世界だけど、最低限の敬意は払うべきだ
それに、彼女は言うほど憎めない相手だった
生まれや育ちが違えば、きっと良い友人になれたのでは?と思ってしまったのだから
ただ、相容れない関係性があり、殺し合うしかなかっただけに過ぎない
俺には大切な、愛してる人達がいるから、殺されるわけにはいかなかっただけなのだから
しかし、まだ何か来栖が喚いている
「自分だけ魔剣を拾うとか卑怯だ」とか「部屋から武器を取ってきてよこせ」とか
俺が、折れたとはいえ魔剣を回収したのは、確実に危険だと判断したに過ぎない
それにこれは、勝者の報酬ではなく、彼女の墓標に過ぎない
だから、俺はつい言ってしまった
「お前って、人として最低だな」と
キレるでもなく、呆れるでもなく、侮蔑ですら無い
たった一つ思った事・・寂しい奴だな、と
その言葉に全員が黙り込む
来栖ですら「なっ!」と驚いた
それ以降、誰も喋らなくなった
そして・・・地響きが起こり、ダンジョンが元に戻っていくと誰もが感じた
それと同時に、魔法陣が光を放つ
俺は無言で魔法陣を潜り、それを追いかける様に、皆も続く
来栖も結局、最後に魔法陣を潜り、俺達は最下層を後にした
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
誰もいなくなった最下層で、声が響く
『ラフィ・・やっぱり、かっこいいよねぇ♪・・・・・・よし、決めた!都合が良い事に、鎖も楔も消え去ったし、神喰いとしての力もほとんど消えたしね。まぁ、使えないわけじゃないけど。とは言っても、身体の再生にはちょっと時間は必要かな?・・・後は、全部込めないといけないよね。次死んだら復活は出来ないけど、それも仕方ないかな。もっと大事な物を見つけちゃったしね♪問題は・・・』
そして、声は消える
自身が決めた行動に移るために
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魔法陣を潜り、ダンジョン入口に戻ってきた俺達は、同じく戻ってきた生き残りの冒険者達と再び顔を合わせた
「おお!無事だったか!で、どうなった!?」
「待て待て、まずはここの監視員に話をしてからだろう」
「その前に、お礼を言うべきでしょう」
「そうですよね。皆さん!声を合わせていきますよ!」
「「「「「ありがとうございました!!」」」」
上階層で指揮を執っていた冒険者が詰め寄り、中階層で勇者(笑)達といた冒険者が報告が先だと言い、他の冒険者はお礼を述べる
来栖を除く一行は「足手まとい以下だった」「何も役に立たなかった」等々、自分たちはお礼を言われるべきではないと固辞し、俺へ視線を向ける
来栖はどこか誇らしげで、当たり前だ!みたいな態度でいるが、中階層の冒険者達は来栖の悪態を知っているので無視を決め込む
ディストとリュミナも俺へと視線を向け「全ては我らが主が」「私もお礼を言われるほどの事は」と話してから、誰が全てを成しえたのかを語る
それを聞いた上階層冒険者達も察したのか、来栖の態度をガン無視する
耐えかねた来栖が声を上げようとして、4人に取り押さえられる
そこに監視員とタマモがやってきて
「兄様!」
「皆さん!よくぞ御無事で!」
来栖を除く全員が再会を喜び合った
ダンジョン入り口前で話をするにも狭いので、軍の駐屯地へと移動を開始する
移動しながら、先に結果を報告しとくべきと考え、タマモへ伝言を頼むことにした
「タマモ、悪いんだけど、先にミリア達に状況を伝えに言ってくれないか?ミリア達に話せば、色々と進めてくれるだろうし」
「わかりました!兄様はどうされるのですか?」
「俺もある程度、話をしたら戻るよ。あ、伝言はギルド側にも話すように伝えてくれな」
「了解です!」
ビシッ!と敬礼をし、召喚陣からミリア達の元に戻るタマモ
しかしタマモよ・・その敬礼は何処で覚えたんだ?
一つ謎が残ってしまったが、まぁ良いかな?
タマモに伝言を任せた後は、軍駐屯地で休息を取りながら、監視員と軍駐屯地の幹部を交えた聞き取り調査が行われる
尤も、幹部は全員から聞き取り調査をするわけでは無い
現在、指揮所天幕内に呼ばれたのは、上階層で指揮をしていた冒険者、中階層でリーダー格だった冒険者、それと俺達8人だ
天幕に向かう道中、俺は4人に視線を送り、4人もその視線に頷く
そのやり取りの内容は『来栖は任せた、任されました』である
ぶっちゃけた話、色々と言われても困るわけだ
なので、事前にディストとリュミナを含めた6人へ、視線で合図を送っておいた
来栖が暴走しそうになったら止め、俺の話を肯定する
但し、抜けていたり、補足説明が必要な場合は、来栖以外の誰かが行う事で合意したのである
そして、報告会という聞き取り調査が行われる
最初に、異変前の話から始まり、次に俺達が突入後の話
そこから上階層での生き残りに出会うまで話、上階層冒険者と俺達3人で話を合わせて進める
次に別れてからと中階層冒険者達との話に入る
そして、勇者(笑)一行の話に入り、来栖が「嘘だ!」とか「でたらめ言うな!」等と吠えるも、来栖以外の全員が概ねこちらの言葉を肯定しており、来栖の話は無視された
簡単な話、虚言、妄想の類と判断されたわけだ
その後は、中階層冒険者と別れてからの話になり、来栖の言葉は無視され、最後の話に
ここで俺は、一つだけ嘘をつくことにした
「以上が、事の経緯です。その後、地響きがし始め、魔法陣が起動したので帰還しました」
「他には何かなかったのか?攻略の証とか」
「いえ、特に何もなかったですよ。恐らくですが、今回の攻略の証は無事に帰還することが証ではないかと」
「ふぅむ・・・異変があったわけだし、証自体も特殊だと考えれば、その話も間違いではないか・・本当に何も無かったんだな?」
「ええ。何も無かったですよ」
ディスト、リュミナ、八木、阿藤、姫崎、春宮も同意する
そこで来栖が何か言おうとして、春宮にアババババされ、姫崎に拳骨を落とされ、八木と阿藤が口を塞ぐ
その様子を見ていた監視員と幹部は
「・・・・・分かった。上には、そう報告を上げておく」
監視員も幹部も深く、とても深ぁ~い溜息をついて、こちらの話を調査報告として纏め上げた
そう、俺が付いた嘘とは〝戦利品について〟である
金銀財宝のあった部屋は無かったことにし、魔剣の回収も話さなかった
魔剣については、危険がある可能性もあったからだが
聞き取り調査も終わり、全員の聞き取り調査が終わるまでは待機して欲しいと言われ、俺達8人は一つの天幕の中で休んでいた
尚、来栖は未だに気絶中である
そんな中、4人が質問を投げかける
「えっと・・・本当に嘘ついて良かったんですか?」
「流石に、魔剣については話せないしな。色々誤魔化していたのは、春宮だって気付いていただろう?」
「はい。ただ、何と言うか・・・」
「優華の言いたいことは、わかるわよ。それで、クロノアスさんは何故、あの部屋の事も内緒にしたんですか?」
「あの部屋については、何となくかな。今後、他の冒険者が踏破して、見つけた場合は仕方ないけど、今はそっとしておきたかったんだ」
「あれを見たので、理解は出来ますけど・・・」
「まぁ、クロノアスさんが一番の功労者だしなぁ。俺も勿体ないって気持ちはまだあるけど、あれはなぁ」
「強いからモテるのか、イケメンだからモテるのか、何か魅力があるのか・・・どうしたら、モテますか?」
「八木の気持ちは分からなくもないけどな。後、阿藤、俺はイケメンではないぞ」
「嘘だっ!!イケメンはみんなそう言うんだ!来栖も顔だけは良いからモテるし!」
阿藤が某鉈少女みたいな言い方をし、可愛い女の子をお持ち帰りぃ!したい!と、今にも血の涙を流しそうな勢いになる
俺が宥めると逆効果な気もするので、3人に任せておく
ちなみに、4人が言っている(阿藤は別の意味で)あれとは、ヴェルグが最後にしてきたキスの事である
そう!全員に目撃されていたのだ!
当初、ディストとリュミナは「呪いは大丈夫ですか!?」「毒物検知!呪い検知!・・何も無い?そんなわけがあるはずない!」と大混乱し、結構荒れた
5人に至っては呆然とし、我に返った阿藤が、血の涙を流しそうになったのは言うまでもない
春宮と姫崎は顔を赤らめさせ、八木は「さっすが、クロノアスさん!」と煽る始末
来栖に至っては「敵と通じていたのか、この裏切り者!」と見当違いな言葉を発し、ディストにマジギレされ、半殺しの目にあっていたりする
尚、そんな来栖を治療したのはリュミナと春宮だ
そして俺も、正気に戻ってから冷や汗がブワッ!と吹き出し、小刻みに震えていたらしい
らしいと言うのは、自覚が無かったからだ
その時に俺が思っていた事とは
(ヤバいヤバいヤバい!ミリア達にバレたら、またあの怖い笑顔になる!目が単一色になる!)
である
万が一、バレた場合の言い訳を必死に考えてもいた
そして、ゾクッと悪寒がする
まさか・・・もうバレたんじゃないよな?
タマモには話していないし、聞き取り調査の時も話していない
大丈夫だ・・バレるはずがない
結論だけ言うと、近い将来にバレた事だけ言っておく
そんなこんなで休息を取りながら話をし、その後は雑談に
雑談の途中で、他の冒険者の聞き取り調査が終わったと伝令が来て、来栖を強制的(物理)に目を覚まさせ、全員が外に出る
外には聞き取り調査が終わった冒険者(寄生虫冒険者はいなかった)が集合しており、これからの事を話し合う
「さて、俺達は皇都に戻っても良いらしいんだが」
「1日くらいは、休息を取りたいよなぁ」
「ああ。それで、そっちはどうなんだ?」
「俺達か。そう言えば何も言われてないな」
ふむ、聞きに行くか
そう考えたところで、幹部の一人がこちらへとやってくる
「失礼、伝え忘れをしていたので。クロノアス卿一行も皇都への帰還を許可します。ただ・・・」
「ただ?なんですか?」
「非常に言いにくいのですが、上に報告した所、帰還後は速やかに皇城へ来られたしと。他の冒険者の方々も、ギルドへ出頭する様にと通達が」
この場にいる全員の顔が、嫌そうな顔になったのは、仕方の無い事だろう・・・もう一回言う、仕方が無いと俺は思う
さて・・ここで冒険者が言ったさっきの言葉「1日くらいは、休息を取りたいよなぁ」が全員の心を占める
しかし、現実は無慈悲だった
「出来る事なら、早急に戻ってきて欲しいと・・・」
どこのブラック企業だよ
いや・・この世界はある意味、ブラック企業だらけだよなチクショウ!
俺がゲートを使えることは軍にバレているので、全員が渋々、皇都に戻る旨を良しとした
明日は、おやすみになると良いなぁ・・・・
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