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66話 封印の聖域と勇者?

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収穫祭も終わり、夜が明け、朝になる

祭りの時と変わらず、朝から商業区は活気に満ちていた

俺達もそんな商業区から冒険者区を通り抜け、郊外へ出る

途中、ナユの両親と会った

祭りを最後まで堪能して、今から帰るそうだ

門まで一緒に行き、挨拶をして別れる



6竜達は既に寝床から移動して待っていた



「待たせたか?」



と、声を掛けると



「それほど待っておりません」



と返事をし、出発の準備に入る



リュミナとシンティラが俺達が乗りやすいよう身体を屈かがめる

俺はリュミナの背に、ナユとリアはシンティラの背に乗る

俺がシンティラの背に乗るとリュミナが拗ねるのだ

シンティラもそれをわかっているので文句は言わない

文句は言わないが不満はあるので



「お前は読める龍だな」



と、褒めておく

読めるとは勿論【空気が読める】だ

その言葉でシンティラは機嫌が良くなり、何事も無く出発となる

居残り4竜に留守を任せると伝え、留守番のミリア達に「行ってくる」と言い、俺達は聖域へと出発する

今日はナリアのメイド長初日だが、ミリア達もいるし、完璧超人メイドのナリアだし、大丈夫だろう



王都を出て1時間ほどで、封印の聖域外縁部へと到着する

俺以外は外縁部で帰りを待つので、野営の準備をしていくないと

空間収納から拡張馬車を出して寝床代わりにする

シンティラとリュミナの食糧には、時空間魔法で1日おきに魔法が解除される様にしておき、食糧の腐敗を止めておく

あっ!と思い出した俺は、馬車に認識阻害魔法をかける

これで居残り組以外に基本馬車は認識されない

二人が馬車から出降りした時に見られたりしたら認識されてしまうが大丈夫だろう

シンティラとリュミナもいるし、俺もそこまで時間をかける予定も無いしな

ただ、何かあってからでは遅いので、保険は掛けておく

15分程で全ての作業を終わらせ、少し休憩してから聖域へ進むことにした



正午に聖域の中へと一人で入り、中心部を目指す

30分程歩き、中心部である封印の祠へ着くが・・・

なんだこれ?聞いてた話と違って、明らかに雰囲気がおかしい

王妃の話では、祠があり、最奥に剣が突き刺さっていると聞いていた

魔物等もいないと言っていたが、この気配はどう考えても魔物がいる

警戒度を引き上げて中に入ると・・空間が歪み、迷宮が姿を現した

チッ!と舌打ちするが時既に遅く、俺は迷宮内に囚われてしまった

何階層あるかは知らないがとりあえず先に進むことにする



1階層目は然程強くない魔物が多い

しかも無駄に広いので、あまり先に進まない

クソッ!また行き止まりだ

ちょっとイライラしてきたので、普通に攻略するのは止めて、一気に突破する

探索魔法と反響魔法を組み合わせ、階層を全て把握する事にした

ついでに魔物位置も特定し、一気に攻略を開始する



・・・・・2時間で7階層迄突破して状況を整理する

この迷宮?ダンジョン?だが、どうも地下や上層に繋がってるわけではなく、空間歪曲と転移に拡張が組み合わさってるぽいな

階段が存在せず出口であるアーチを抜けると別の場所へと繋がっている

何故、階層を攻略できてると言えるのか?

それは、魔物の種類が変わるからだ

3階層辺りまではゴブリンやコボルトが多かったが、6階層からはオークなどが目立つようになってきた

まぁ、戦闘は苦にならないので順調に攻略中だ



更に1時間が経過して10階層に辿り着くと、そこは小さな部屋と目の前には大きな扉があり、部屋の中には5人の人間が休んでいた

ここはランシェス王国の土地で王家の直轄地であり、秘匿地でもある

許可が無ければ立ち入りは許されておらず、俺以外の人間がこの場にいるのは何かの罠か?

俺は一気に警戒度を最大まで引き上げ接触を試みる



「お前達は何者だ?何故ここにいる?」



唐突に声を掛けられた5人は驚き、こちらを振り向く

相手もこの場所に誰か来るとは思っていなかった様で、警戒し始める

編成は男3人に女2人で、いずれも16~18歳位か

俺の登場に驚き、警戒するも、リーダーらしき豪華な鎧を着た青年がこちらの問いに答える



「俺は来栖光闇くるすこうあん。この世界へ呼ばれた勇者だ」



勇者だと?いや、問題はそこじゃない!こいつは今、なんて言った!?

呼ばれたと言ったはずだ!・・つまりは、召喚されたと言ったな!?

異世界人の召喚などあり得ない

いや、待て・・こいつの名前・・・まさか日本人か!

全智神核、思考超加速、並列演算を使い、あらゆる可能性を模索するも情報が足りない

少々危険だが、仕方ない・・・

俺は情報を得る為に、自分の情報を一部だけ開示する事にした



「俺はグラフィエルだ。この場所には王家の依頼でやってきている。お前達は誰の依頼でここにいる?」



「俺達は依頼を受けていない。ここに聖剣があると聞いて来た」



「その情報は誰から聞いて、どこからの情報だ!?」



「怒鳴らないで欲しいな。それに、言えるわけ無いだろう」



「言わないなら・・ここで捕え、不法侵入罪で王都へ連行する。この場所は王家の直轄地であり、王家の許可が無い者は入ってはいけない。ここはランシェス王国内だ。こちらの法が適用される。もう一度聞く・・情報の出所を言え!」



俺は明らかに動揺し、何とか情報を引き出そうとしていた

相手の勇者と名乗る来栖と言う青年も、王家の直轄地で許可制だとは知らなかった様で、逮捕、連行と言う言葉に動揺していた

(ここは、こちらが少し折れた方が早そうだ)と瞬時に判断し、譲歩をする



「今、ここで、こちらの質問に全て答えれば、今回の件は不問にすることも出来なくはない。仲間と相談したいならしてもいい。但し、罪に問わないだけで一度は王都に来てもらう。これがこちらの最大譲歩だ」



「・・・仲間と相談はさせて欲しい」



「わかった。但し、逃げようとしたらこの場で処分する。それだけは覚えておけ」



そして、来栖と名乗った男は仲間たちと相談を始めた

俺は逃げられない様に出入り口の前に立つ

待つ事10分、相談を終えた彼らは声を掛けてきた



「まずは、こちら全員の事項紹介からしたいんだが・・」



「問題ない。名前の確認は、どちらにしろ行う予定だったからな」



言葉が少しきつめなのは、彼ら全員が現在の所は不法侵入者であり、俺は王国貴族として対応しないといけない為だ

彼らは警戒しながらも、俺の言葉に話し合う余地はあると見たのだろうか?安堵の息が漏れていた

5人は来栖光闇、阿藤玲次、八木宗太、春宮優華、姫崎桜花と名乗った

5人の名前がわかったところで次の質問に入る



「所属国、又はどこから来たのか。嘘と判断した場合はわかってると思うが」



「所属国・・かはわからないが、住んでいる国はダグレスト王国だ」



その言葉に俺は顔をしかめ、警戒度を更に上げる

ダグレスト王国はランシェス王国と敵対している国である

ここ十数年は主だった戦争はしてないが、裏では色々とお互い動いている

冒険者もダグレストから来た者は監視下に置かれるほどだ

俺は思考し、次の質問に入る



「どうやって5人で入った?ここは選ばれた者が1人でしか入れないはずだ」



「情報を持ってきた奴が紋章を5人分渡してきた」



そう言って見せた紋章は、間違いなくランシェス王家の家紋が入った魔道具だった

結界突破の魔道具が何故外部に流れた?いや・・流れたのではなく奪われた?それとも国の内部に裏切り者が?

思考しながら王妃の話を思い出し、俺は奪われたと仮定した

依頼した冒険者が戻らず、行方不明だと言っていたが、殺されて奪われたのなら仮定した内容の辻褄もいくつか合う

そうなると・・呼ばれた時期だな



「次だ。呼ばれたと言っていたが何時頃だ?そして誰が呼んだ?」



「呼ばれたのは半年位前だと思う。呼んだのは・・神様じゃないのか?」



答えたのは阿藤玲次で、王道だろ?みたいな感じだった

こいつ、夢と現実の区別はついているのだろうか?

考えても仕方ないので次の質問をする



「何故、神が呼んだと思った?理由がある筈だ」



「俺達は隣国のランシェスは邪教徒の国だと聞かされた」



そう答えたのは、八木宗太だ

彼は現状をきちんと把握しているな

彼から話を聞いた方が良さそうだ



「誰が言った?国王か?それとも・・・」



「国王に宰相や将軍に他にも色々だ。俺達は邪教徒に奪われた聖剣を取り返して欲しいと」



「・・・・・・それを鵜呑みにしたと?」



「・・・他にも国があるのは学んでわかったけど、ダグレストからは出た事が無かったから・・」



「で、戦争になったらランシェスの人間を殺すと?」



「何をバカな事を言っているんだ!ランシェス王族は邪神の手先だから殺さないといけないが、他の人達を殺すわけがない!俺は勇者だぞ!!洗脳されてる人々を助けるのが俺達の役目だ」



割り込んで入った勇者(笑)の言葉に思わずキレそうになり・・ギリギリ抑えた

あの王族が邪神の手先だと?ふざけたことぬかしやがる!!

どうやら殺気が漏れていた様で彼らは脅えていた

気絶しなかったのはそれなりに実力があるからか

殺気を消して、俺は再び彼らに問う



「神に呼ばれたと言っていたな?神に呼ばれたなら証拠がある筈だ。それを見せろ」



「証拠って・・何を見せれば・・・」



「ステータス魔法は知っているな?フルオープンさせて見せれば良い」



「出来るわけ無いだろう!!」



脅えながらも質問する八木に返答するが、またもや噛みつく勇者(笑)

こいつのせいでさっきブチキレそうになったので最終通告を出す



「出来なければ、これ以上の問答は不要だ・・全員を拘束して連行する」



最終通告に彼らは再び相談し合い、こちらの要求に渋々応じる

特段変わったところは無いが・・・

阿藤玲次、八木宗太、春宮優華、姫崎桜花の4人は、常人より遥かに高いステータスとスキルを要していたが、俺が警戒する内容ではなかった

4人は共通して召喚転移者という称号があり、何か気になったのでその称号だけ、神力を纏わせた鑑定を使って調べる

どんな内容が書かれているかわからないしな



称号を見て・・・俺は目を疑った!

召喚転移者(隷属の魂印)と出たのだ

こいつら、魂を縛られている!?驚愕してる俺に訝しむ4人

この事実を彼らに伝えるか否か・・いや、まだ来栖のを見ていない

俺は来栖のステータスを見てから判断する事にした



来栖のステータスは他の4人を凌駕していた・・・あまりにもかけ離れている

スキルもいくつかおかしいものがある

だが、注目したのは称号だ

来栖の称号にあったのは



召喚転移者(隷属の魂印)・神に呼ばれし者(邪神)・勇者(偽)・聖剣使い(邪剣使い)・希望を呼ぶもの(絶望の権化)



なのだが・・何だ、この隠ぺいの数は?明らかにおかしいだろ!

こいつは危険だ!・・だが、手を出すのはマズい・・・

隷属の魂印は消した瞬間にバレてしまうと全智神核が告げた

連行も危険か?と考えたが、気を付けるのは来栖だけで、他はどうにかできると判断し、俺は彼らに告げる



「大体は理解した。王都には同行してもらい、その紋章は返還してもらう。王都へと連行した際には、俺が一人一人尋問する。生命の安全と今回の不法侵入罪については、不問にすることを約束しよう」



「・・・わかった。俺達はどうすれば良い?」



「逃げられても困るから、迷宮攻略までは俺の後を付いてきてもらう」



「それは構わないが、一人で攻略できるのか?ここは協力して「必要ない」・・・」



勇者(笑)にそれだけ言うと、俺はデカい門の前に立ち、扉を開ける

5人についてこいと合図し、全員で中に入る

逃げられないと自覚させる為、何が来ても全力で潰そう

そして、蹂躙劇が始まる
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