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16話 お披露目会と決闘

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王都へは野営を一夜して何事も無く着いた
道中、助けた少女二人に色々聞かれたが誤魔化せる所は何とか誤魔化した
二人に聞かれ、答えた俺の事は

辺境伯家の三男
家族の事
魔法については幼いころからの修練の為
武術についてはゼロから教わったこと

等で、婚約者はいるのかと聞かれたがいないと答えると二人は嬉しそうな顔をした
公爵家先代当主ヴィルノー・フィン・ランシェスにも色々聞かれた
ヴィルノー先代はゼロについてが半分ほどだが
どこまで話していいものか判断に困るが事前に決めていたいくつかの内容を話すことにした
後は話せるならと馬車を乗り換える際に言われたことを話すか迷っている位だ
話した内容は

ゼロはSSSランク冒険者である事
うちで俺の家庭教師をする依頼を受けて2年経ったこと
教会関係者に知り合いがいる事
同行していたのはお披露目会までの間も簡単な修練をする為とついでの護衛

と、予め決めておいた答えだ
公爵様の話を聞いて1つ用事が増えたと言ってた事も伝えておいた
何の用事が増えたのだと聞いてきたので

「冒険者ギルドに行く用事が出来たと言ってました。気になる事があるとかで」

そう告げると「護衛の件か・・」と一人納得してしまった
そういえば俺には助けた褒美、ゼロにはあの件のお詫びが出ることになっている
俺は特に要らなかったがゼロには思惑があるようで、褒美と詫びを一緒にして要求しろと言われている
その内容とは・・・

「で、褒美は何が良いかな?辺境伯三男なら爵位は継げぬしやはり爵位か?」

「実はその事で師匠から僕の褒美も合わせて一つ頼んでおけと言われまして・・」

俺はスゲー言いづらかった
ん?なんで師匠と僕になってるかって?人前での猫かぶり用です
さて、話を戻そう
俺はその内容を口にするが公爵様は微妙な顔をした
少し考えこんでから返事をする

「それについては陛下に聞いてみてからだな。恐らく付き添いが必要であるから儂が付いて行く事にしよう。SSSランク冒険者と顔見知りになるだけでも利益はあるしな」

そう言って明確な返事は後日になった
それから数時間後に王都バウレストに到着した




王都バウレスト
初代ランシェス国王の名を冠した都である
王都は居住区・商業区・工業区・冒険者区・貴族街の5つに分かれている
入り口は貴族街を除く各区の4か所にそれぞれ門があり、警備隊の門番が街に入る際の犯罪者や賊の有無を確認している
一行は商業区にある門から貴族街へと向かった

貴族街には他の区との境に入り口の門番とは別に警備兵が配置され、他区から来た者は来訪目的を伝えてから訪問先の貴族家に向かう
これには2つの安全策が取られているためである
1つは当然だが貴族家への安全対策で、もう1つは平民への安全対策
馬鹿な貴族は勿論いるので平民が貴族街から帰ってこないのを防ぐためだ

馬鹿な貴族は気に入ると勝手に屋敷に囲い慰み者にしたりするので、平民から帰宅していないと報告を受けた際に、王国法律によって訪問した貴族家に前世で言う家宅捜索を行う為である
昔は相当多かったらしく、今では極稀にある位で、問題を起こした貴族家はお取り潰しで、当主は犯罪奴隷落ちになり、当主と関与した従者も犯罪奴隷落ちという厳しい処分が下される
家族は関与がなければ平民落ちで貴族街から追放のみ
財産は罰金として半分は国に取られ、もう半分は残された家族に渡される
逆に平民がこの法律を利用して貴族を貶めた場合は平民側が犯罪奴隷落ちだ
ランシェス王国はこのような法律が多く、結構厳しいが治安は抜群である

貴族街に入った一行は途中で分かれる
クロノアス家の馬車が王都の屋敷に着くと、ゼロがギルドに行ってくると言いその場を後にした
俺は旅の疲れを癒すため自室に向かい少し仮眠を取った

・・・・・目が覚めると夕方だった
リビングに向かうと学校に行っていた兄姉達が戻ってきていて久しぶりに子供達全員が揃った
最も双子の兄姉は1か月位前までは一緒だったが
久しぶりに家族全員が揃ったのだった
今回、義母が一緒なのは父なりの気配りっぽい
俺のお披露目会の時は留守番する事に変わりはないけど
夕食に関しては、今日は家族全員で商業区へ外食しに行った
途中ゼロと合流したのだが

「俺に気ぃ使わず家族で楽しんできな」

と1人酒場へと向かって行った
変な所で気を使うやつである
ルリとハクは王都の屋敷にてお留守番だ
流石に連れて行けないからね
家族は学校の事や近況、ここに来るまでの事をお互い話し合い楽しく食事した

王都に来て3日、今日はお披露目会の日だ
俺は慣れない衣装に身を包み王城へ向かう
王城の門番に父が紋章を見せ、門を潜り場内へと入る
初めての王城に俺は珍しく緊張していた
お披露目会場は王城1階のパーティー会場だ
とてつもなく広いし2階席もある
今は大人も子供も同じ1階にいる
次々と親子が入って来て、全員が揃うまでに30分くらいかかった
貴族って多いのな・・・

全員が揃うと王様が現れ壇上にて乾杯の音頭を取る
王の隣には第5王女と・・あれは王子かな?
周りを見ると公爵令嬢もいた
ドレスってお披露目会用だったのか
色々と周りを見ていると順番がやってきた

お披露目会とは陛下へ子供をお披露目し、各貴族との顔見せの場である
中には顔見せ後に婚約話も出たりするそうだ
俺は王様に一礼し王女と王子にも一礼する
顔見せが終わり壇上から降りるとヴィルノー公爵が曾孫であるティアンネ嬢を連れて俺達の方に来た

「クロノアス辺境伯。1週間ぶりですな」

「そうですねランシェス公爵。ご令嬢はドレスが良くお似合いですね」

社交辞令であろう
父と公爵は軽く挨拶するとそこに若い夫婦がやってきた

「お初にお目にかかりますクロノアス辺境伯。私はティアンネの父ヴァジス・フィン・ランシェスと申します」

「妻のティアーヌ・フィン・ランシェスです」

「この度は曽祖父と娘を助けて頂きありがとうございました」

「お初にお目にかかりますヴァジス殿、ティアーヌ夫人殿。グラキオス・フィン・クロノアスです。以後お見知りおきを」

お互いの自己紹介とヴァジス公爵様にお礼を言われお互い軽く雑談を始めた
俺とティアンネ嬢は横で話を聞いていたが、王様への顔見せが全員終わったようで、王様が「両親は2階にて歓談すると良い」と宣言し、大人達は全員2階に上がって行ってしまった

子供達は思い思いに話したり挨拶をしたりしている
俺はと言うとやはり上の兄達と同じ状態になっていた
とにかく女の子たちが集まって来て、男子達の嫉妬の視線がこれまた凄いのだ
その中にはティアンネ嬢もいるのだが、彼女は話しかけるでもなく笑顔で、時折目が合うと顔を赤らめて視線を逸らす
そんな中、俺に王族が声をかけて来たのだ
声をかけて来たのは

第5王女リリアーヌ・ラグリグ・フィン・ランシェス様
第1皇子にして王位継承権1位のフェルジュ・ラグリグ・フィン・ランシェス様

であった
周りからの視線が痛い・・・
そんなことを思いつつ挨拶をする

「第一王子にはお初に目にかかります。クロノアス家三男グラフィエル・フィン・クロノアスと申します。お声をかけて頂き光栄であります」

最後のは全然そう思って無いけど、社交辞令って必要なのだと転生して常々思った
貴族は、挨拶一つが子供であっても面倒くさいのだ

「そう畏まらないでくれないかな?今日は妹を助けてくれたお礼と、君と友達になりたくて来たのだから」

ん?妹?二人はこの場に居ると言う事は同じ年齢だよな?前世なら双子だろうがこの世界は一夫多妻制だし腹違いの可能性もあるんだよな?
聞くかどうか迷っていると第1王子は気さくに答えてくれた

「双子の妹だよ。母は正室だね。我が王家は母達の仲は凄く良いからその辺りは気にしなくても良いよ。因みに僕は上に4人姉がいる。全員腹違いだがもの凄く可愛がられてね。母5人に姉4人の着せ替え人形にされている」

何処かで聞いたような話だ・・・
そして最後の着せ替え人形を話す時の目は完全に死んだ魚の目だった

「自分も同じ経験をしてますが殿下程ではありませんね。心中お察し致します」

王族で第1王子でも母と姉には逆らえないのかと親近感が湧いた

「まだ堅いなぁ。同じ境遇の者同士、砕けて喋ろう。お披露目会は大人達には仕事でもあるけど子供達には関係ないんだ。だから砕けても構わないんだよ。僕はこれでも相当砕けて話してるんだよ。王子であるからこれ以上はムリだけどね」

何というイケメンであろうか
流石は王子と言うべきか・・
俺は王子の誘いに乗ることにした
後で両親に何を言われようが裏で何を言われようが知るか!
・・・・・俺もゼロみたいな感じに染まってきたなぁ

「わかり・・わかった。これで良いかな、殿下?」

「良い感じだね。身分はあるとはいえ友達との私事はこうあるべきだよ」

王子・・いや、殿下はご満悦の様だ

「それで殿下、他にも用事があるんじゃないの?」

「ん?一つ目は達成したよ。二つ目はリリアーヌとティアンネも交えて楽しくお喋りだけさ」

そう言うと俺にリリアーヌを助けた時の状況とか恐怖は無かったのかと詳しく聞かれた
殿下は冒険譚や英雄譚が好きらしく、憧れもあるそうだ
自覚はないが端から見れば俺も相当にイケメンらしい(殿下談)
そんなイケメン二人が美少女二人を交えて話をしているのだ
当然女子たちは群がる
男子たちは怨嗟の目を俺に向けてくる
一部は爵位の問題もあって向けてこないが逆に羨ましそうにしている
見てるだけなら話しに混ざれば良いのに

そして遂に耐えかねたか、1人の男子と取り巻きが近づいて来て、テンプレの如く俺に色々言ってくる
やれ自分は侯爵家の息子だの、辺境伯の三男より私となど、挙句にはうちの家族の悪口迄言い出した
流石にクソむかついたので俺は思いっきりぶん殴った
殿下もかなり冷めた目で見ていたので小声で「スカッとした」と伝えてきた
王女と令嬢達も俺が怒った事に「当然ですわね」みたいな顔をしているが、殴られた本人と親は当然クロノアス家に文句を言い始める
こういう時の場合に実は決闘がある
本来は子供に適用しないのだが、両家共に了承したので決闘となった
決闘のルールは

互いに決めた約束を破らない
万が一殺しても罪に問われないが降参後に悪意を持って殺した場合には罪に問う
以後禍根を残さない

である
これを守らない場合は王家から罰が下される

相手側の条件はクロノアス家全員の奴隷落ちと言う極めて悪質なものだったので、報復としてこちらはこのクソバカの命と教育の仕方が悪い両親の命と侯爵家の全財産に残りの家族の平民落ちに報復の禁止、クロノアス家へ一切危害を加えないだ
俺がそう言うと向こうも同じ条件に変えてきたので俺は受けた
取り巻きも参加したいならしても良いがこの条件を飲めるならとしたら誰も参加はしなかった
母は引いていたが父は

「ここまで侮辱されたら徹底的にやれ!!後の面倒事は俺がやってやる!!」

と超乗り気であった
決闘の条件は、お互い前代未聞のお家お取り潰し戦争になった
残りの家族を奴隷落ちにしないだけ俺の方が優しいと思うのだが
こういう相手は徹底的に潰さないと何をするかわからないからな

誰が見ても侯爵家側に非があるのは明白なので、侯爵側が先に出した条件にも表立っては何も言えないが避難の目が集中していた
お互い引くに引けなくなったので、条件の変更なく決闘が開始された
勝負の結果については言うまでもないだろう
馬鹿は魔法の才能があるから俺は勝てないとか、剣術も有名な者に教えて貰ってお墨付きだとか、他にも色々言っていたが弱い犬程よく吠えるものだ

まずは剣術で勝負してやったがお話にもならない
説明する気もないほど酷かった
魔法も酷かったな
初級のファイヤーボールが出来たからってそれで才能って・・・
威力も全く無いし・・・
俺は剣でボコボコにし、相手に降参をさせないように喉を潰し、身体でも降参を表せないようにした
この決闘は両家の命を懸けた物だ
降参しても命は無い・・・と思っていたのだが、侯爵家はここにきて陛下に陳情を申し入れている
流石に王様もやり過ぎな条件だと思っているのか・・・
もうバカは動けず、後は命を刈り取るだけだ
バカは青ざめ、涙を流し、股間からは暖かい液体を漏らしている
トドメを指そうと魔法を使おうとするが、陛下が制止の声を上げた

「もうその辺でよかろう。侯爵家は余が取り潰す。侯爵家は存命の対価に一族郎党犯罪奴隷落ち。既に嫁へ行っておる者は対象にせぬが一人でも報復に出れば当代の血筋と次代の血の者も全員一族纏めて犯罪奴隷落ちとする。財産については納税分を差し引いた全てをクロノアス家に分与とする」

陛下はそう告げ、この決闘はクロノアス家の勝利で終わった
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