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25.貴殿も注意されたし
しおりを挟む混乱する頭で魔法の本を見れば、山田さんから未来の日本人、つまり俺への注意書きが浮かび上がってきた。
『男女問わず、どのような組みあわせでも子を宿すので、貴殿も注意されたし』
注意ってなんだよ。
駄目だ。衝撃が強すぎる。続きは落ちついてから読もう。なんとかぎこちない笑顔を貼りつけることに成功した俺は、お礼をいってお店をあとにした。
コロゥニャちゃんは小さい手を振りすぎてバランスを崩し、丸まって転がった。お転婆ちゃん、かわいい。癒やしをありがとう。
「服のお礼。俺、ご飯、お金出す。決まり、ね?」
手をつないで歩きながら、俺は先手を打った。でもでもだってとごねるオーニョさんに、引き下がらないぞと言葉を重ねる。
「じゃ、助けて……くれた、お礼!」
命の恩人にお礼をしないなんて日本人の道義に反する。俺が言葉を尽くして伝えたら、オーニョさんはしぶしぶ頷いてくれた。よしよし。
オーニョさんが案内してくれた食べ物屋さんは、大衆食堂といった雰囲気だった。
夕飯には少し早い時間だが、それなりに賑わっている。
ピークの時間だと空席待ちかもしれないな。
丸いテーブルに四人掛けの椅子。さまざまな高さ大きさのテーブルがあるのは、お客さんがサイズを選べるようにだろう。
俺は洋服店の家族を思い出しながらそう思った。
「静かな店でなく、すまない。ただ、味は絶品だ。この国の、ほとんどの食べ物が、そろっている。ユーキは、何が食べたい?」
俺は曖昧に頷いて、メニューと見比べていた魔法の本から目を離した。
残念だけど、山田さん。料理の名前が分かっても、内容が分からなかったら使えないよ。
たまに 甘い、辛い、柔らかいと書いてあるだけ。
なのにお酒のページは、言葉を惜しまず説明を書きしるしている。
さては山田さん、飲んべえだな。
俺は唇をとがらせて、本のページを指で弾いた。
「だめ。選べない。オーニョさん、おススメ、お願い。いい?」
「では、ユーキが、嫌じゃなければ、いろいろな料理を注文して、少しずつ、食べてみないか? 残りは私が食べるから。つまり、同じ皿から食べても、ユーキが、嫌でなければ……」
「オーニョさん、賢い! ぜひ!」
解決策ににこにこする俺を見て、どこかほっとした様子のオーニョさんが笑顔をかえしてくれた。
俺は別に潔癖じゃないし。ペットボトルの回し飲みも平気なタイプだ。
正直、男同士でそこまで気を遣わなくてもと思う。
ひとまずメニューの中から、スープ、魚、肉、パン、パスタ、リゾット、サラダ、デザートまで、一通り注文してくれたらしい。楽しみだ。
さぁオーニョさん、今日のお礼です。
遠慮せずじゃんじゃん食べてください。もともとのお金の出所が俺じゃないのが申し訳ないけども!
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