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17.ルームキー
しおりを挟む「ユーキさんは日本語以外に、何か話せます?」
『あ、英語なら』
今まで奨学金の関係で真面目に学業に取り組んできた俺は、勉強にだけは自信があった。
実地で使ったことはないけども。
「それはよかった。いろんな渡来人とどんどんお話ししてみてくださいね。山田さんはお仕事の関係から、英語とドイツ語が堪能だったそうですよ。
さぁ、到着しました。ここです。この部屋がユーキさんの寝起きするお部屋になります。
スペアキーはこちらの預かりですが、これがユーキさんのお部屋の鍵ですよ。
この施設入り口の鍵と併用していますので、これ一個で大丈夫ですからね」
ルルルフさんの指先に引っかかっているのは、丸くて細いゴールドのリングだ。
『これが、鍵?』
「そうです。鍵なんです。どこにつけますか? アンクレット、ブレスレット、ネックレス、ピアス、指輪、ご希望はあります?」
『もしかして、鍵の魔道具的な?』
「そうなんです。これも魔道具なんですよ。身につけておくだけでいいので、持ち忘れや紛失も防ぐ優れものなんですよ。
なんとドアは、オートロックです!」
『すごい!』
「渡来人の皆さまにも、便利だとすごく好評なんですよ!」
ルルルフさんは自分の手柄のように、胸を張っている。
『あの(微妙な!)本のあとなんで、なんだか感動しますね! うーん。どうしよう。アクセサリーって慣れていなくて。邪魔にならないように、アンクレットにしようかな』
「了解です! ンッツオーニョ大佐、ユーキさんはアンクレットをご希望ですって。ふふふ」
オーニョさんは、くるくるとリングを見せびらかしていたルルルフさんからひょいとリングを取り上げて、俺の足もとに跪いた。
「ユーキ、右足、左足、どちらだろうか」
『へ?』
「右? 左?」
足に手を添えて、小首をかしげて聞いてくるオーニョさん。
視界の暴力だ。
俺は盛大にうろたえながらも、なんとか魔法の本を取り落とさずに答えることができた。
「あ、ひ、ヒダリ?」
オーニョさんは頷くと、小さなリングをぐっと広げながら足首に触れさせた。
あとはリングが自動でするっと足首に巻きつく。
『おぉ。魔道具すごい! えっと……』
俺は魔法の本を開いたまま、知りたい言葉を思い浮かべる。
文字は意志を持って動きだし、ふわっと浮かび上がった。
「オーニョさん、アリガト?」
「どういたしまして」
跪きながらにっこり笑うオーニョさん。
俺がやったら、きっとただの土下座だ。
男前は跪くのも様になるのね。
でも俺がいたたまれないから早く立ちあがってと、ぐいぐい腕を引っ張った。
男前の上目づかい、破壊力がすごい。
心臓に悪い!
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