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08.そして故国へ
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「はじめまして。こんにちは。私の日本語、おかしくないかしら」
シルバーと、ブラウン、ブルークラシックタビーの渦巻き模様に、少しだけオレンジの色が混ざっている。「パッチドタビー」といったところの毛色に、濃いグレーの瞳。パッと見で即、ひれ伏したくなるような威厳をたたえた猫獣人の女性。リアンの母親だ。リアンは「母ちゃんはいない。死んじゃった」とか言っていたけれども、しっかりご存命ではないか! これ以上の存在感を放つ女性を見たことがないぞ?
怪盗レックス──リアンの父親、ウレックスさんが予告した通り、盗んだ事実は猫獣人の獣化のカギとなる地下神殿の再発見という快挙の前にうやむやになった。リアンの母親、ベルナデッタさんの説得に応じず、絵を盗まれた持ち主達は獣化に苦しめられてきた猫獣人の怨嗟の的になりたくなかったのだろう。一様に口をつぐんだ。そして地下神殿の場所が明らかになった今日、絵は持ち主の元へと返されることになった。但し、保存状況が芳しくなかった持ち主の元には返さずに、なにがしかの金品と交換する交渉をベルナデッタさんが行っているそうだ。
俺は刑事を辞めた。
リアンが獣化しやすい特徴を持つ猫獣人だったからだ。
地下神殿で祈りをささげるという猫獣人の獣化を解除する方法について、これから謎は解明されていくのだろうが、今現在は地下神殿で祈りをささげる方法が一番安全性が高いと聞いた。俺は即決した。リアンが苦しむ姿を見たくなかったから……。そして、大義があったにせよ、「怪盗」の身内になるのは「刑事」としての外聞が悪い。俺なりのケジメだ。今はリアンの国に移住して、日々言葉の勉強をしている。その言葉の勉強なんだが、不思議とするする頭に入ってくる。リアンがさりげなく普段の会話に自国の言葉を織り交ぜていたらしい。リアン、お前、いつからこの未来を夢見ていたんだ……。
コーヒーの良い香りがする。褐色の肌の女性が伝統的な作法を用いてコーヒーの生豆をローストしている。リアンの生家である公爵家の午後は、メイド長によるコーヒーセレモニーを見ながら優雅に過ぎていった。
シルバーと、ブラウン、ブルークラシックタビーの渦巻き模様に、少しだけオレンジの色が混ざっている。「パッチドタビー」といったところの毛色に、濃いグレーの瞳。パッと見で即、ひれ伏したくなるような威厳をたたえた猫獣人の女性。リアンの母親だ。リアンは「母ちゃんはいない。死んじゃった」とか言っていたけれども、しっかりご存命ではないか! これ以上の存在感を放つ女性を見たことがないぞ?
怪盗レックス──リアンの父親、ウレックスさんが予告した通り、盗んだ事実は猫獣人の獣化のカギとなる地下神殿の再発見という快挙の前にうやむやになった。リアンの母親、ベルナデッタさんの説得に応じず、絵を盗まれた持ち主達は獣化に苦しめられてきた猫獣人の怨嗟の的になりたくなかったのだろう。一様に口をつぐんだ。そして地下神殿の場所が明らかになった今日、絵は持ち主の元へと返されることになった。但し、保存状況が芳しくなかった持ち主の元には返さずに、なにがしかの金品と交換する交渉をベルナデッタさんが行っているそうだ。
俺は刑事を辞めた。
リアンが獣化しやすい特徴を持つ猫獣人だったからだ。
地下神殿で祈りをささげるという猫獣人の獣化を解除する方法について、これから謎は解明されていくのだろうが、今現在は地下神殿で祈りをささげる方法が一番安全性が高いと聞いた。俺は即決した。リアンが苦しむ姿を見たくなかったから……。そして、大義があったにせよ、「怪盗」の身内になるのは「刑事」としての外聞が悪い。俺なりのケジメだ。今はリアンの国に移住して、日々言葉の勉強をしている。その言葉の勉強なんだが、不思議とするする頭に入ってくる。リアンがさりげなく普段の会話に自国の言葉を織り交ぜていたらしい。リアン、お前、いつからこの未来を夢見ていたんだ……。
コーヒーの良い香りがする。褐色の肌の女性が伝統的な作法を用いてコーヒーの生豆をローストしている。リアンの生家である公爵家の午後は、メイド長によるコーヒーセレモニーを見ながら優雅に過ぎていった。
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