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07.怪盗レックス
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はあ、初めてだと言うのにしっかり抱き潰されてしまった。鈍く腰が痛む非番明けの今日。俺はとある美術館の警備にあたっていた。
今日の警備は怪盗レックスの予告状に基づくものだった。怪盗レックス。かれこれ二十年近く前からシュバリエコレクションと呼ばれる絵画コレクションを盗み続けている怪盗だ。シュバリエコレクションとは中世における宗教戦争に赴く騎士団を描いた絵画シリーズだ。とあるヨーロッパの小国から盗まれたものであるとか、全て集めると埋蔵金のありかがわかるとかいう伝説がまことしやかに語られている。しかし、この美術館にシュバリエコレクションはあっただろうか……。
「おい、あそこレックスじゃないか?」
「レックスだ!捕まえろ!」
レックスは軽やかな身のこなしで俺達を翻弄する。あの身のこなし、猫か?
「まかれたか……」
俺たちはバラバラになって辺りを捜索する。ダンっ。不意に俺の身体が壁に押し付けられた。
「おい。お前。うちのカルネリアンが世話になっているな」
レックスだった。レックスが「うちのカルネリアン」とは? ──フードに隠されたリアンにそっくりな明るいオレンジの地の毛に、濃く茶色い縞模様、金色の瞳……。
「お前、リアンの親父か?」
「そうだ。」
「!お前には言いたいことがごまんとある。育児放棄とか、育児放棄とか、育児放棄とか。とりあえず神妙に縛につけ」
「育児放棄? 俺は充分カルネリアンの父親の役目を果たしていたぞ? カルネリアンが勝手にお前の家に家出しやがって帰って来なかっただけだ。それに、シュバリエコレクションに関してはまもなく俺が盗んだ事実はうやむやになる」
「は?」
「シュバリエコレクションは全て揃い、後は証拠の提出をして超法規的措置が行われるだろう」
「そんなことあるか」
「あるんだ。待っていろ。そうしたらお前とリアンを俺の国に呼んで結婚式だ」
「え?」
「俺の国は同性婚が認められている。リアンがお前に惚れ込んでいるのは仕方がない。認めてやる」
──怪盗の俺から一番大事なものを盗みやがって。
そう言い残し、怪盗レックスは見事な跳躍をして俺の元から去って行った。
今日の警備は怪盗レックスの予告状に基づくものだった。怪盗レックス。かれこれ二十年近く前からシュバリエコレクションと呼ばれる絵画コレクションを盗み続けている怪盗だ。シュバリエコレクションとは中世における宗教戦争に赴く騎士団を描いた絵画シリーズだ。とあるヨーロッパの小国から盗まれたものであるとか、全て集めると埋蔵金のありかがわかるとかいう伝説がまことしやかに語られている。しかし、この美術館にシュバリエコレクションはあっただろうか……。
「おい、あそこレックスじゃないか?」
「レックスだ!捕まえろ!」
レックスは軽やかな身のこなしで俺達を翻弄する。あの身のこなし、猫か?
「まかれたか……」
俺たちはバラバラになって辺りを捜索する。ダンっ。不意に俺の身体が壁に押し付けられた。
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レックスだった。レックスが「うちのカルネリアン」とは? ──フードに隠されたリアンにそっくりな明るいオレンジの地の毛に、濃く茶色い縞模様、金色の瞳……。
「お前、リアンの親父か?」
「そうだ。」
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「は?」
「シュバリエコレクションは全て揃い、後は証拠の提出をして超法規的措置が行われるだろう」
「そんなことあるか」
「あるんだ。待っていろ。そうしたらお前とリアンを俺の国に呼んで結婚式だ」
「え?」
「俺の国は同性婚が認められている。リアンがお前に惚れ込んでいるのは仕方がない。認めてやる」
──怪盗の俺から一番大事なものを盗みやがって。
そう言い残し、怪盗レックスは見事な跳躍をして俺の元から去って行った。
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