俺の息子は猫獣人

橘 咲帆

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04.赤ちゃん用の歯ブラシ?

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「ねぇ、ねぇ、セキエイ?」
「んー?」
「大好き」
「そっか? ありがとな」
「んとね? 好きの意味わかってる?」
「好きの、意味……とは?」
「ラブだよ? ライクじゃなくて、ラブ。それも、家族愛じゃなく、性愛の方」

 うっと。ちょっと内心そうじゃないかなとは、思っていた。
 最近俺の私物──ことさら俺の体臭が付いていそうなものを書斎に集め、その上でごろごろしていたりしていたよな?うちのかわいい怪盗さんは、獣人の発情期の特徴である巣作りをなさっていたよな……。
 いや、でも、俺は男ぞ?お前より二十も年齢が上のおじさんぞ?

「なあに?目が泳いじゃってるけど? 俺、セキエイも俺の事好きなんじゃないかってうぬぼれてるんだけど?」
「いや、いや、いや、いや。ちょっと待て」
「いや、もう待たないかな~? 俺、セキエイに会ったときにビビってきたもん。この人、俺の番だって」

 お前に会ったのって、お前が五歳の頃だよな? 何? どういうこと? とんだ早熟さん?

「ごめんね。セキエイ。俺がセキエイに会ってから、セキエイの非番の日に家に入り浸ってるから、恋人なんて作る暇なかったよね? ……なんて殊勝なこと言っているけど、これ、計算だから」
「は?」
「セキエイに恋人ができないように、予防線」
「へ? ん……む……んちゅ♡……あ♡」

 おい、何処で覚えたんだ、この巧みなキスを? リアンの膝の上でお互いに裸。ぴっちりと肌と肌を重ね合わせて、風呂場での音響効果も相まって、ぴちゃぴちゃと響く水音が艶めかしい。

「顔、溶けてるよ? 気持ちいい?」
 
 リアンに出会ってから十三年、その前も仕事が忙しくて恋人なんていなかった。キスもその先も大学のころちょっと付き合ったときにしたくらいだ。キスなんて、キスなんて久々すぎる。気持ちいいに決まってる。でも、相手はリアンだぞ? 自分の息子のように感じていたリアンだぞ?

「待て、リアン。待って。冷静になろう。俺、男。お前、男。理解してるよな?」
「うん理解してる。関係ないよそんなこと。だってセキエイは俺の番だもん。それに、猫って雄同士でも交尾するんだぜ」
「は? そうなの?」

 それは知らなかった。猫の神秘! じゃあいいか……いや、いいのか?

「ねえ、ねえ? そんなこと言っても、セキエイ? 身体は正直なんだけど?」
 
 リアンの手にやんわりと俺の俺氏が包み込まれる。わあ。男って不便。性欲バレバレって不便。
 でもさ、リアン。お前のお前氏、先っぽに人間にはないものがついているが、それは大丈夫なものなのか?

「セキエイ、そんなに俺のちんこ見つめて、欲しくなっちゃった?」
「いや、お前のちんこ。小さい頃から何度か見てはいるが……その先端にある棘、大丈夫なのかなーって」
「あー気になっちゃう? 動物の猫は痛い棘なんだけど、猫獣人のは勃起しても柔らかいままだから、痛くないよ。びっしり生えてるでしょ? これ、程よく硬くて、赤ちゃん用の柔らかい歯ブラシに感触が似てるって言われてる。」

 耳元で囁かれる。

「コレでいろんなことろ擦るとすっごい気持ちいいらしいよ。」 
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