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2章 四聖獣編 始まりの町ダーウィン
プロローグ
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辺りは暗闇に包まれ、静寂が支配していた。
真っ暗な闇の中にポツンと浮かぶ月だけが、唯一の光源となり、窓から月明かりが差し込む。
その中で。
私、アリーシャ・ウルズ・オーウェン改めリーシア・ウルディットと、ヴェガ・ダーツェット・クローエンシュルツ改めヴェガ・クロムはベットで向かい合っていた。
清潔なシーツは皺一つなく、魔術で加工された低反発のベッドは二人分の重みを感じさせないほど程よい弾力を伝えてくる。
暗闇の中にベッドで向かい合う男女二人。普通ならば、恋人同士の甘い時間を過ごしているのかな、とか思ってしまうだろう。
しかし、私たちは見つめ合いながら、互いに微動だにせず――、
正座していた。
「……」
「……」
長い沈黙が場を支配する。
お互い魔術で五感を補完しているので視界の暗さはあまり感じない。
それ故に、私がガチガチに緊張していることはヴェガに伝わってしまっているだろう。
「……」
「……」
ひたすらに重い空気が立ち込め、甘い雰囲気など皆無だった。
「……俺がソファで寝る」
やがて長い沈黙に耐えきれなくなり、最初にその話題に踏み込んだのはヴェガだった。
白かった髪を黒く染め、鍛え上げた褐色の肉体を寝巻き用の薄手のシャツで覆う彼は風呂上がりも相まって、絶大な色香を醸し出している。
その大胆に開いた胸元を見ないようにしながら、私も負けじと切り返す。
「駄目。ヴェガはこの宿に来るまでずっと夜見張りをしてくれてたでしょ。寝られる時にきちんと寝ないと身体が持たないよ。私がソファで寝る!」
「いや、リーシアだって野宿で身体が疲れているだろう。だったらお前こそベッドで寝られる時にきちんと横になってろ」
「いや私が、」
「いや俺が、」
互いに一歩も譲らず、睨み合う。
そしてお互いの寝巻きの姿を不意に見てしまい、慌てて目を逸らす。
そんな思春期の青少年みたいなことをずっと繰り返していた。
ヴェガのはだけた胸元から覗く厚い胸板を思い出してしまい、顔を真っ赤にしながら私は慌ててヴェガから目を逸らし、首をぶんぶんと振る。
どうしてこうなったんだろう。
本当は宿で二部屋取る予定だったのに。
そのはずなのに、なぜか宿は一部屋しか空きがなく、その部屋にはベッドがひとつしかなかった。
今一度問おう。どうしてこうなったんだろう。
今しがた思ったことを再度繰り返しながら、私は赤くなった頬を隠すために手で覆った。
真っ暗な闇の中にポツンと浮かぶ月だけが、唯一の光源となり、窓から月明かりが差し込む。
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暗闇の中にベッドで向かい合う男女二人。普通ならば、恋人同士の甘い時間を過ごしているのかな、とか思ってしまうだろう。
しかし、私たちは見つめ合いながら、互いに微動だにせず――、
正座していた。
「……」
「……」
長い沈黙が場を支配する。
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「……」
「……」
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「いや、リーシアだって野宿で身体が疲れているだろう。だったらお前こそベッドで寝られる時にきちんと横になってろ」
「いや私が、」
「いや俺が、」
互いに一歩も譲らず、睨み合う。
そしてお互いの寝巻きの姿を不意に見てしまい、慌てて目を逸らす。
そんな思春期の青少年みたいなことをずっと繰り返していた。
ヴェガのはだけた胸元から覗く厚い胸板を思い出してしまい、顔を真っ赤にしながら私は慌ててヴェガから目を逸らし、首をぶんぶんと振る。
どうしてこうなったんだろう。
本当は宿で二部屋取る予定だったのに。
そのはずなのに、なぜか宿は一部屋しか空きがなく、その部屋にはベッドがひとつしかなかった。
今一度問おう。どうしてこうなったんだろう。
今しがた思ったことを再度繰り返しながら、私は赤くなった頬を隠すために手で覆った。
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