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プロローグ
クラウスは王子様
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広大な領地を支配するレーゼヴィブル王国。
その王都エストーリアにあるトリシャ宮殿。
花の都と称される王都エストーリアにおいて一際豪華絢爛な様式を誇る宮殿の中庭で、一組の男女が手入れの行き届いた薔薇園の東屋に向かい合って座っていた。
「アイリス……私との婚約を破棄して欲しい」
席に着くなりそう話を切り出したのは蜂蜜色の髪をした見目麗しい男。中性的な線の細い顔立ちながら容貌は整っていて、目元は暖かな陽だまりを思わせるオレンジ色。
その麗しいと評判の顏を強ばらせながら告げられた一言。
この国の王子であるクラウス・フォン・レーゼヴィブルからの唐突な申し出に、婚約者であるアイリス・エンツィーは静かに目を瞬いた。
この婚約は政略で組まれたものではあったが、二人は相思相愛で、将来は暖かな家庭を築いていこうと互いに誓い合った仲だった。
先日、王妃殿下が第二王子を産んでからというもののこの王子は何か考え込んでいるようにぼんやりとしていることが多かった。何かに悩んでいるということは分かっていた。しかし、そのうちいつものように相談してくれるだろうと高を括っていた矢先にこの話である。
自ら切り出したにも関わらず、婚約破棄の宣言を受けたアイリスよりも悲壮な雰囲気を漂わせているクラウスに、アイリスは過去の己の判断を後悔した。
──あの時無理矢理にでも話を聞いておくべきだったわ。
後悔先に立たず。まさにその通りだ。そんなことを思いながらアイリスは冷静に状況を整理する。
なんにせよ、この王子がどういう思考でこの結論に達したかを知らねばならなかった。
悲愴を通り越してもはや絶望的な表情を浮かべ始めたクラウスにはどうしてもこの婚約を破棄したくないという思いが伺える。
勿論アイリスもクラウスを愛しているので婚約を破棄するつもりなぞ毛頭ない。
──では何故王子は婚約を破棄しようとしているのか。
「……婚約破棄の理由をお尋ねしてもよろしいですか?」
「そ、それは……」
アイリスがそう問い返すと、クラウスは眉根を寄せて辛そうにキュッと目を閉じ──、
そして意を決したように告白した。
「私は、王子ではなく──女なのだ!!」
その王都エストーリアにあるトリシャ宮殿。
花の都と称される王都エストーリアにおいて一際豪華絢爛な様式を誇る宮殿の中庭で、一組の男女が手入れの行き届いた薔薇園の東屋に向かい合って座っていた。
「アイリス……私との婚約を破棄して欲しい」
席に着くなりそう話を切り出したのは蜂蜜色の髪をした見目麗しい男。中性的な線の細い顔立ちながら容貌は整っていて、目元は暖かな陽だまりを思わせるオレンジ色。
その麗しいと評判の顏を強ばらせながら告げられた一言。
この国の王子であるクラウス・フォン・レーゼヴィブルからの唐突な申し出に、婚約者であるアイリス・エンツィーは静かに目を瞬いた。
この婚約は政略で組まれたものではあったが、二人は相思相愛で、将来は暖かな家庭を築いていこうと互いに誓い合った仲だった。
先日、王妃殿下が第二王子を産んでからというもののこの王子は何か考え込んでいるようにぼんやりとしていることが多かった。何かに悩んでいるということは分かっていた。しかし、そのうちいつものように相談してくれるだろうと高を括っていた矢先にこの話である。
自ら切り出したにも関わらず、婚約破棄の宣言を受けたアイリスよりも悲壮な雰囲気を漂わせているクラウスに、アイリスは過去の己の判断を後悔した。
──あの時無理矢理にでも話を聞いておくべきだったわ。
後悔先に立たず。まさにその通りだ。そんなことを思いながらアイリスは冷静に状況を整理する。
なんにせよ、この王子がどういう思考でこの結論に達したかを知らねばならなかった。
悲愴を通り越してもはや絶望的な表情を浮かべ始めたクラウスにはどうしてもこの婚約を破棄したくないという思いが伺える。
勿論アイリスもクラウスを愛しているので婚約を破棄するつもりなぞ毛頭ない。
──では何故王子は婚約を破棄しようとしているのか。
「……婚約破棄の理由をお尋ねしてもよろしいですか?」
「そ、それは……」
アイリスがそう問い返すと、クラウスは眉根を寄せて辛そうにキュッと目を閉じ──、
そして意を決したように告白した。
「私は、王子ではなく──女なのだ!!」
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