筆頭騎士様の夜伽係

蓮実 アラタ

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※29 二度目の初夜のやり直しを・後編

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「――ヴィラン様、どうしたんですか!?」

 突然涙を流すヴィラン様。
 まだ快感が逃げ切ってない身体を無理矢理動かしてヴィラン様を見あげると、彼もまた驚いたような表情をしていた。

「分からない……。何故今、私は涙を流しているのだろうか」

 どうやら彼自身も戸惑っているらしい。
 紫の双眸から流れ落ちた涙は頬を伝い落ちて止まる気配がない。

 ヴィラン様は雫となって手の平に落ちた涙をしばらく見つめ、そして呆然と独り言のように呟いた。

「ああ、そうか。……だからなのか」

 そうして彼は涙を流したまま柔らかく微笑むと、私を見下ろし、ぎゅうっと抱き寄せてくる。

 決して苦しくは無いけれど、振り解けない程の力で抱きしめられた私はそれを疑問に思ったまま、とりあえずヴィラン様に視線を合わせた。

「何か分かったんですか?」
「ああ」

 私の質問にヴィラン様は深く頷くと、額に口付けを落としてくる。
 それをくすぐったく思いながらも受け入れ、私は再度答えを聞こうと彼を見上げる。

「私はシュレナに愛していると言われて、とても嬉しかったんだ」
「嬉し涙、ということですか?」

 重ねて質問すると、ヴィラン様は「そうだね」と頷く。

「レナ……ミレーナを失ったあの日から、私はもう誰かの手を取ることはないと思っていた。一生消えない傷を抱えて、後悔と共に生きていくのだと。でも、違ったんだ」

 そう言ってヴィラン様は紫の眼を私に向ける。

「シュレナはそれを否定してくれた。私に一人にならないで欲しいと言ってくれた。一緒に居たいと言ってくれた。そこでようやく私は自分が誰かと共に居ていいんだと知ることができた」

 ヴィラン様はなおも零れ落ちる涙をそのままにして私に向かって微笑む。
 それは長年彼が自分に強いた呪縛から解放された姿だったのかもしれない。

「私は今、シュレナと共に居られて幸せだ。それを実感したら、自然と涙が出てきてしまったようだ」
「ヴィラン様……」

 彼はあまりに早くに婚約者を失い、途方に暮れていた。消えない過去と過ぎた後悔を抱えて、自分に強くあらねばと厳しくしてきた。

 それはある意味で良かったのかもしれない。彼はその通り、筆頭騎士と呼ばれるまでに強くなった。オーランジェ公爵家の名に恥じぬ強さを手に入れた。

 けれど同時にそれは、彼を孤独にさせていた。

 大事な人を失ったが故にそれを恐れ、誰とも距離を置いてしまう。なにか起きても、それを全て抱え込んでしまう。

 だから無意識に隣に立って寄り添ってくれる〝誰か〟を必要としていたのかもしれない。

 そうして彼は、ようやくその誰かわたしを手に入れることができた。
 私が傍に居ることを望み、ヴィラン様とと肌を重ねることで、彼はそれをより強固に実感したのかもしれない。

 良かった。
 ヴィラン様はこれで孤独に苦しむこともない。彼が私を必要としてくれていることがとてつもなく嬉しかった。

「ヴィラン様、少し顔を近づけてくれますか?」
「うん、これでいい?」

 私のお願いにヴィラン様は首を傾げながらも従ってくれる。顔が近づいてきたところで、私は彼の唇に自身のものを軽く押し当てた。

 ちゅっ、軽いリップ音をたてた触れるだけのキス。ヴィラン様は驚いたように口元を抑えて私を見ている。

 ふと思いついたちょっとしたイタズラ。ヴィラン様のその表情がおかしくて、少しだけ笑ってしまった。

「これで実感できましたか? 私はずっと貴方の隣に居ますから。ヴィラン様もずっと私と一緒に居てくださいね。ずっと愛しています」

 最後は恥ずかしさからちょっと頬を染めてしまう。ヴィラン様は私の頬に手を当てて、しっかりと応えてくれる。

「ああ、私もだ。シュレナを愛しているよ」

 そうして密着したまま、触れるだけの短いキスを交わした。

 ♢♢

「――大丈夫、ゆっくりするからね」
「は、はい……」

 すっかり蕩けきった蜜壷に押し当てられるのは、ヴィラン様の反り立った剛直。
 あまりの迫力に少し気圧されながら、私は緊張しきった面持ちで返事することしかできない。

 もちろん、初夜のやり直しをするからには、ということを覚悟していたのだけれど。
 いざ本番となると、どうしても怖いという気持ちが芽生えてしまう。

 微かに震える私に、ヴィラン様は少し困ったように眉を伏せて、私に覆いかぶさってきた。

「できることなら止めてあげたいけど、もう我慢できないんだ。シュレナが欲しい」

 紫の双眸に隠しきれない情欲の光を込めたヴィラン様。触れる吐息は熱く、彼の男根もドクンドクンと熱く脈打っている様子が分かる。

「いいんです。大丈夫。少し怖いですけど……それよりも」
「それよりも?」

 不安そうに聞き返すヴィラン様に私は淡く微笑んだ。

「ヴィラン様と繋がりたいという気持ちの方が大きいですから」
「わかった。絶対に痛い思いはさせないから」

 私の言葉に、何故か硬い意志を宿したヴィラン様は、ゆっくりと腰を下ろし始める。
 愛液で潤った蜜壷は潤滑油となってヴィラン様のモノを私の奥へと誘い、膣に圧迫感が生まれる。

「ん、んん……」

 ヴィラン様はまず慎重に浅く男根を出し入れする。ヌチュヌチュと音を立てて引き入れされると、時々擦れて花芯に当たり、その度に身体が反応してしまう。

「くっ、……気持ちいい?」
「ンンッ、はい……」

 ヴィラン様は意識してやっているのか、敏感な花芯が彼の亀頭に擦れて、なんとも言えない快感が生まれる。

 彼の腰が揺れる度に、合わせるように私の腰も揺れて、膣が収縮を繰り返す。愛液はとめどなく流れ、彼とモノをさらなる最奥へと導こうとしていた。

 最初は慣れない圧迫感に戸惑っていたけれど、浅く緩く貫かれるとだんだん慣れてきてしまって、今度は刺激の物足りなさに下腹部が疼く。

 もっと大きい刺激が欲しい。本能に導かれるままに彼の腰に自分の足を擦り合わせると、ヴィラン様がそれに気づいて微笑んだ。

「慣れてきたようだね。もっと奥にが欲しい?」

 ヌプリと音を立てて抜かれた彼の剛直。
 赤黒いそれは、今や初めに見た時より大きくなって存在感をあらわにしている。

 あれを中に入れられ、突かれたらどれだけ気持ちいいのだろう。彼によってすでに限界まで快感を高められていた私は、もはやそれだけしか考えられなかった。

 早く入れて欲しい。
 奥まで彼に貫かれて、愛されたい。
 それしか考えられなくなり、私は自ら脚の間に手を入れ、蜜壷の入り口へと彼を誘う。

「ヴィラン様が、欲しいです。お願いです。入れてください……」

 そう懇願すると、ヴィラン様はごくりと唾を飲み込んでから改めて私に覆い被さると――。
 今度は止まることなく、最奥までその剛直を割り入れた。

「ああ、ンンッ、はぁあっ……」

 私の中で、ヴィラン様のものが熱く脈打っているのが分かる大きな存在感を持った質量が、胎の中に満たされている感覚。

 散々慣らされたせいか不思議と痛さはなく、むしろジンジンと熱を持った気持ちよさが身体中に浸透していくようだった。

「大丈夫そうだね。動くよ?」
「ん、はいっ……あああああ!」

 ゆっくりと彼のモノが引き抜かれ、次の瞬間、勢いよく突き入れられた。
 ぱちゅん! と音を立てて入れられた男根は素早く抽挿を繰り返し、その度に卑猥な水音が静かな室内に響き渡る。

「あ、ひぁ、ぁあああ、ン、あああッ!」

 あまりの激しさに快感が押し寄せてきて声が止まらない。

 奥まで突かれ、引き抜かれる度に最奥が収縮し、ヴィラン様の陰毛が遠慮なく花芯に擦れて堪らない。

「あ、あああッ、ヴィランさまっ!」
「くっ、シュレナ、シュレナ!」

 互いに顔を近づけ合い、互いの身体を抱き寄せる。身を寄せあい、どちらからともなく深い口付けを交わす。

 舌を重ね、甘い口付けに蕩けると、今度は乳房を持ち上げられ、その先端をキュッと摘まれる。その瞬間、私は今まで感じたことの無いほどの快感が身体を駆け巡った。

「ん、は、……あ、ああ、ひ、――ぁああああッ!」
「くっ、キツ……! もう、耐えられないっ!」

 一際腟内がきゅうっとしまった瞬間ビクビクと腰が震え、胎の中に熱い飛沫を感じた。
 ビュクビュクと何度かに分かれてヴィラン様の熱いものが私の中に注がれる。

「ああああああっ!」

 絶頂と共に蜜壷に注がれた精に、私は甲高い嬌声を上げてしまう。
 終わりが見えない快感。ヴィラン様は限界まで私の中に入ったまま、ぐっと歯を食いしばっている。

 彼も気持ちよくなってくれた。そのことが嬉しくて、私は半ば朦朧とする意識の中でヴィラン様に見つめる。

「くっ、」

 やがて飛沫を出し切ったヴィラン様が、私の中から男根をヌプリと引き抜く。
 途端に蜜壷から彼に愛されたい証が流れ出して、ベッドを淫らに白く染めてしまう。

「ん、ふっ……」

 未だ収まらぬ快感に時々身体を痙攣させながらその様子を見た私は、多大な幸福感に身を包まれて、意識を手放した。

「――心から愛してるよ、シュレナ」

 ふと耳元で、ヴィラン様のそんな囁きが聞こえたような気がした。
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