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02 アスラン
ずっと君を愛していた 2
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「何故だ……何故なんだ……リステラ」
次の日になってもアスランはショックから立ち直れないでいた。
婚約を約束したはずだった彼女のまさかの裏切り。
十年後必ず迎えに行くと約束した彼女は、しかしアスランの求婚を拒否した。
十年前に交わした約束は、無惨にも破られてしまったのだ。
何故、何故。
アスランの胸中はその思いで埋め尽くされ、正常に物事を判断することが出来なくなっていた。
リステラがアスランの婚約を破棄したあの広間で唯一人、周囲が驚き、唖然としている中で一人だけ満足したように笑みを浮かべ、仕切りに頷いていた人物を見ていればアスランはここまで混乱もしなかったはずだ。
――唯一人、計画通り満足に事が進んで嬉しくて堪らないといった様子の王妃の顔を見ていたならば。
そんなことを知る筈もないアスランはただ混乱し、困り果てていた。
昨夜の彼女のことが脳裏から離れない。
見たこともないような冷たい声と表情でアスランの婚約を拒否したリステラ。
受け入れられるものと思っていた婚約を拒否され、アスランが呆然とする側で彼女はもう要件は済んだとばかりにアスランの方を二度と振り返ることなく去っていった。
「……いや、違う」
アスランは首を振る。未だショックから立ち直れないながらも頭を振り、必死に思考する。
――違う。彼女は一度だけ振り向いた。
大広間から出ていく直前、一瞬だけ、名残惜しそうにこちらを振り向いたのだ。
そしてアスランと目が合った。
アスランは何度も何度も不確かな記憶を振り返り、確認する。
「間違いない。あの時リステラは確かに、僕の方を見ていた」
そして自分の顔を見て、ほんの一瞬。
ハッとしたようにアスランの表情を確認して、その顔を辛そうに歪めたのだ。
まるで、自分の表情を見て後悔に苛まれたように。
まるで婚約を破棄したことを後悔したかのように。
それは自分の望みが見せた幻影だったかもしれない。
彼女に拒絶されたことを受け入れたくなくて、自分でそう思い込もうとしているだけなのかもしれない。
しかし、この事実がアスランの脆く崩れそうになっていた心を奮起させた。
絶望する手前で、その心を縫い止めた。一縷の望みを抱かせた。
――もし、リステラが婚約破棄を本当に望んでいないのだとしたら?
あの場で拒否しなければならない理由があったのだとしたら?
確かめなければならない。
彼女が何故婚約を破棄しようとしたのか。そしてリステラは今も自分のことを想ってくれているのではないか。
リステラの、真意を。
「確かめなければ。リステラの所へ……」
行かなければ。
それだけをうわ言のように呟き、アスランは自室を後にする。
まだ朝日が登ったばかりの王城は人の出入りもなく静かなもので廊下には人一人いなかった。
アスランはその中を供もつけず一人で進んでいく。
リステラともう一度話す。
彼の内心はそれだけで埋め尽くされていた。
決心した思いに突き動かされるようにひたすらリステラが滞在する部屋を目指すアスランの歩みに、もう迷いはなかった。
――そしてリステラのことで頭が一杯になっていた彼は皮肉にもまた気づけなかった。
アスランがリステラの部屋へと向かう様子を、廊下の壁の隅から王妃がじっと見つめていたことに。
次の日になってもアスランはショックから立ち直れないでいた。
婚約を約束したはずだった彼女のまさかの裏切り。
十年後必ず迎えに行くと約束した彼女は、しかしアスランの求婚を拒否した。
十年前に交わした約束は、無惨にも破られてしまったのだ。
何故、何故。
アスランの胸中はその思いで埋め尽くされ、正常に物事を判断することが出来なくなっていた。
リステラがアスランの婚約を破棄したあの広間で唯一人、周囲が驚き、唖然としている中で一人だけ満足したように笑みを浮かべ、仕切りに頷いていた人物を見ていればアスランはここまで混乱もしなかったはずだ。
――唯一人、計画通り満足に事が進んで嬉しくて堪らないといった様子の王妃の顔を見ていたならば。
そんなことを知る筈もないアスランはただ混乱し、困り果てていた。
昨夜の彼女のことが脳裏から離れない。
見たこともないような冷たい声と表情でアスランの婚約を拒否したリステラ。
受け入れられるものと思っていた婚約を拒否され、アスランが呆然とする側で彼女はもう要件は済んだとばかりにアスランの方を二度と振り返ることなく去っていった。
「……いや、違う」
アスランは首を振る。未だショックから立ち直れないながらも頭を振り、必死に思考する。
――違う。彼女は一度だけ振り向いた。
大広間から出ていく直前、一瞬だけ、名残惜しそうにこちらを振り向いたのだ。
そしてアスランと目が合った。
アスランは何度も何度も不確かな記憶を振り返り、確認する。
「間違いない。あの時リステラは確かに、僕の方を見ていた」
そして自分の顔を見て、ほんの一瞬。
ハッとしたようにアスランの表情を確認して、その顔を辛そうに歪めたのだ。
まるで、自分の表情を見て後悔に苛まれたように。
まるで婚約を破棄したことを後悔したかのように。
それは自分の望みが見せた幻影だったかもしれない。
彼女に拒絶されたことを受け入れたくなくて、自分でそう思い込もうとしているだけなのかもしれない。
しかし、この事実がアスランの脆く崩れそうになっていた心を奮起させた。
絶望する手前で、その心を縫い止めた。一縷の望みを抱かせた。
――もし、リステラが婚約破棄を本当に望んでいないのだとしたら?
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――そしてリステラのことで頭が一杯になっていた彼は皮肉にもまた気づけなかった。
アスランがリステラの部屋へと向かう様子を、廊下の壁の隅から王妃がじっと見つめていたことに。
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