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一章
First Dead Person
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車で20分ほど。
千草たちは、邑徳(物語上の県名)の県営公園に来ていた。東京ドーム2個分もの敷地面積を持つこの公園は、景観もよく、地域住民の恰好のお散歩コースにされていたり、海外からの観光客も多々訪れていることで有名だった。
その公園の出入口には監視の警察官が人っ子一人、入らせまいと目を光らせていた。
「ここで事件があったのか?」
おぅ、と大和が小さく呟いたあと悲しげな顔をした。
「今回は特に酷ぇ。二人とも覚悟して欲しい。耐えきれんくなったら構わず声掛けてくんな」
事務所に来た時とは比べ物にならない程、緊迫した声で言葉を紡いでいく。
「君は決まって同じことを言うものだな。私なら大丈夫だ」
「ぼっ、僕も大丈夫です(多分)」
千草は御鶴に釣られてこう言ったが、実は少し不安に思っていた。
御鶴の事務所で働き始めてから一年。それなりの場数は踏んできたものの、凄惨な現場を見るのは未だに慣れていない。(慣れてしまうというのも怖いと思えるが…)
「そうか、いつもすまんね。ありがとな」
大和は申し訳なさそうに笑ってみせた。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
公園内をしばらく歩くと広い道に出た。
「あそこさ」
大和が指をさした方を見ると、何人かの人が忙しなく行ったり来たりしているのがわかった。
その場に近付いていく度に、心臓の音が段々と大きくなっていく。同時に掌も汗でびしょびしょになる。
足音がする。
ザッザッザッザッザッ、と砂利を踏む。
遂にそこへたどり着いた。
「う゛っ…!」
千草は「それ」を見るなり逃げ出したい衝動に駆られてしまった。
「そこ」には、一人の女性がうつ伏せになって横たわっている。女性の周りには、多量の血が広範囲に飛沫していた。血は既に黒っぽく変色しており、空気に触れてからいくらか時間が経っていることが分かる。
服装は白い長袖のブラウスにジーパン。靴はスニーカーで10月中旬にしては少し肌寒そうな格好をしていた。
「ご婦人か…」
御鶴は片手を胸に当てて黙祷し、千草もそれに続いた。
本当は怖くて仕方がなかったが、被害者の事を考えると居た堪れなくなったのだ。
少しの間があってから御鶴が口を開いた。
「今分かっていることを詳しく教えてくれ」
大和はまたおぅ、と言って頷いた。
千草たちは、邑徳(物語上の県名)の県営公園に来ていた。東京ドーム2個分もの敷地面積を持つこの公園は、景観もよく、地域住民の恰好のお散歩コースにされていたり、海外からの観光客も多々訪れていることで有名だった。
その公園の出入口には監視の警察官が人っ子一人、入らせまいと目を光らせていた。
「ここで事件があったのか?」
おぅ、と大和が小さく呟いたあと悲しげな顔をした。
「今回は特に酷ぇ。二人とも覚悟して欲しい。耐えきれんくなったら構わず声掛けてくんな」
事務所に来た時とは比べ物にならない程、緊迫した声で言葉を紡いでいく。
「君は決まって同じことを言うものだな。私なら大丈夫だ」
「ぼっ、僕も大丈夫です(多分)」
千草は御鶴に釣られてこう言ったが、実は少し不安に思っていた。
御鶴の事務所で働き始めてから一年。それなりの場数は踏んできたものの、凄惨な現場を見るのは未だに慣れていない。(慣れてしまうというのも怖いと思えるが…)
「そうか、いつもすまんね。ありがとな」
大和は申し訳なさそうに笑ってみせた。
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公園内をしばらく歩くと広い道に出た。
「あそこさ」
大和が指をさした方を見ると、何人かの人が忙しなく行ったり来たりしているのがわかった。
その場に近付いていく度に、心臓の音が段々と大きくなっていく。同時に掌も汗でびしょびしょになる。
足音がする。
ザッザッザッザッザッ、と砂利を踏む。
遂にそこへたどり着いた。
「う゛っ…!」
千草は「それ」を見るなり逃げ出したい衝動に駆られてしまった。
「そこ」には、一人の女性がうつ伏せになって横たわっている。女性の周りには、多量の血が広範囲に飛沫していた。血は既に黒っぽく変色しており、空気に触れてからいくらか時間が経っていることが分かる。
服装は白い長袖のブラウスにジーパン。靴はスニーカーで10月中旬にしては少し肌寒そうな格好をしていた。
「ご婦人か…」
御鶴は片手を胸に当てて黙祷し、千草もそれに続いた。
本当は怖くて仕方がなかったが、被害者の事を考えると居た堪れなくなったのだ。
少しの間があってから御鶴が口を開いた。
「今分かっていることを詳しく教えてくれ」
大和はまたおぅ、と言って頷いた。
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