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フィーナ・アルファドル
第9話 それから
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「リリア・ラテフィール、面を上げよ」
国王の言葉に、リリアはゆっくりと顔を上げる。
「此度の花嫁修業留学テスト、合格おめでとうございます」
「私には勿体ないお言葉でございます、王妃様。すべては我が親友、フィーナ・アルファドル嬢の助けがあったからこそです」
フィーナとレノードの活躍で、花嫁修業留学テストの策略は打ち砕かれた。
ベークラ侯爵を初め、手を染めていた者達は一網打尽となり、リリアは妨害を受けた最後の筆記試験を受け直して満点を取った。
ライーツ王国はリリアという非の打ち所のない才女をレィフット王国に嫁がせ、両国の親交はさらに深まることとなる。
国王両陛下はリリアに今回の件は王国側にも不備があったことを謝罪した。
リリアの身分では考えられない事だが、彼女は隣国の次期王妃となる。
アルフレッド王太子の国民からの信頼と、リリアのテストで示された能力。
二人が王夫妻となればレィフット王国はより強く計り知れない伸び代を持つ国となることは、近辺の国々は確信していた。
「リリア・ラテフィールよ、今回の不手際の詫びとして欲しいものはないか?」
国王からの問いに、リリアは少し考えて…
「フィーナ・アルファドルに、両国親善大使を任命する」
「……はい?」
突然国王に呼び出されたフィーナに告げられたのは、この国にはまだない称号を与えるというまた唐突な話だった。
「恐れながら陛下、両国親善大使とは初耳でございます」
「うむ、先程作ったからな」
「先程!?」
両国親善大使、ライーツ王国とレィフット王国をより強く結びつけた功績を称えて勲章を授ける。
それを付けていれば、両国を一切の手続き無しで行き来出来るという。
「リリア嬢が、お主に是非その勲章を渡して欲しいと言ってな」
国王の話を聞いてもいまいちピンと来ない。
元々、そんな勲章がなくても両国の行き来は大した手間ではないのだが…
従者が勲章を持ってこちらに歩み寄ってくる。
礼に従い、勲章を賜り手の中のずっしりとしたそれを改めてよく見ると
「っ…!陛下、これは…!?」
「リリアが、新しい勲章を作るなら絶対にその形にして欲しいと申していてな。なかなかよく出来ているだろう?」
まだ、フィーナもリリアも幼い頃に二人で話した思い出が蘇る。
「フィーナ、このお花はとても可愛いしいい匂いがするわね」
「それはカモミールよ。害虫避けに母様が植えているの」
アルファドル邸の庭にたくさん植えられたカモミールの花を、リリアはとても気に入った。
野菜と一緒に植えれば害虫避けになり、ハーブティーにもなるし香りも良くて愛らしいカモミールは、フィーナのお気に入りの花でもあった。
「カモミールって、まるでフィーナみたいね。強くて真っ直ぐで、とても綺麗な気高いお花だわ」
真っ直ぐに恥ずかしげもなく言うと、リリアはカモミールの花を一株譲って欲しいと頼んできて、その年で一番立派な株を鉢に植え替えてやると嬉しそうに持ち帰った。
それから毎年、リリアはその年に咲いたカモミールを押し花にしてフィーナの誕生日にプレゼントしてくれた。
今、手の中にある勲章はカモミールの花を象った愛らしい勲章。
両国親善大使という肩書きは、この勲章をフィーナに贈るため、
レィフットの王太子に見初められたライーツの娘が、親友に感謝を込めて贈った勲章だと、フィーナの功績として残すためだけに作られたものだと
リリアの精一杯のフィーナへの感謝の気持ちだと伝えてくれた。
勲章の裏には文字が刻まれていた。
「気高く優しい、私の最も尊敬する大好きな親友に送ります
リリア・ラテフィールからフィーナ・アルファドルへ」
気がつくと、フィーナは泣いていた
よかった、よかった
頑張ってよかった、リリアの頑張りが報われてよかった
リリアと友達になれてよかった
この勲章は、私にとって何物にも代え難い宝だ
フィーナは、王の御前であることを忘れて泣いた
王はそれを咎める事はなく、温かく見守っていた。
国王の言葉に、リリアはゆっくりと顔を上げる。
「此度の花嫁修業留学テスト、合格おめでとうございます」
「私には勿体ないお言葉でございます、王妃様。すべては我が親友、フィーナ・アルファドル嬢の助けがあったからこそです」
フィーナとレノードの活躍で、花嫁修業留学テストの策略は打ち砕かれた。
ベークラ侯爵を初め、手を染めていた者達は一網打尽となり、リリアは妨害を受けた最後の筆記試験を受け直して満点を取った。
ライーツ王国はリリアという非の打ち所のない才女をレィフット王国に嫁がせ、両国の親交はさらに深まることとなる。
国王両陛下はリリアに今回の件は王国側にも不備があったことを謝罪した。
リリアの身分では考えられない事だが、彼女は隣国の次期王妃となる。
アルフレッド王太子の国民からの信頼と、リリアのテストで示された能力。
二人が王夫妻となればレィフット王国はより強く計り知れない伸び代を持つ国となることは、近辺の国々は確信していた。
「リリア・ラテフィールよ、今回の不手際の詫びとして欲しいものはないか?」
国王からの問いに、リリアは少し考えて…
「フィーナ・アルファドルに、両国親善大使を任命する」
「……はい?」
突然国王に呼び出されたフィーナに告げられたのは、この国にはまだない称号を与えるというまた唐突な話だった。
「恐れながら陛下、両国親善大使とは初耳でございます」
「うむ、先程作ったからな」
「先程!?」
両国親善大使、ライーツ王国とレィフット王国をより強く結びつけた功績を称えて勲章を授ける。
それを付けていれば、両国を一切の手続き無しで行き来出来るという。
「リリア嬢が、お主に是非その勲章を渡して欲しいと言ってな」
国王の話を聞いてもいまいちピンと来ない。
元々、そんな勲章がなくても両国の行き来は大した手間ではないのだが…
従者が勲章を持ってこちらに歩み寄ってくる。
礼に従い、勲章を賜り手の中のずっしりとしたそれを改めてよく見ると
「っ…!陛下、これは…!?」
「リリアが、新しい勲章を作るなら絶対にその形にして欲しいと申していてな。なかなかよく出来ているだろう?」
まだ、フィーナもリリアも幼い頃に二人で話した思い出が蘇る。
「フィーナ、このお花はとても可愛いしいい匂いがするわね」
「それはカモミールよ。害虫避けに母様が植えているの」
アルファドル邸の庭にたくさん植えられたカモミールの花を、リリアはとても気に入った。
野菜と一緒に植えれば害虫避けになり、ハーブティーにもなるし香りも良くて愛らしいカモミールは、フィーナのお気に入りの花でもあった。
「カモミールって、まるでフィーナみたいね。強くて真っ直ぐで、とても綺麗な気高いお花だわ」
真っ直ぐに恥ずかしげもなく言うと、リリアはカモミールの花を一株譲って欲しいと頼んできて、その年で一番立派な株を鉢に植え替えてやると嬉しそうに持ち帰った。
それから毎年、リリアはその年に咲いたカモミールを押し花にしてフィーナの誕生日にプレゼントしてくれた。
今、手の中にある勲章はカモミールの花を象った愛らしい勲章。
両国親善大使という肩書きは、この勲章をフィーナに贈るため、
レィフットの王太子に見初められたライーツの娘が、親友に感謝を込めて贈った勲章だと、フィーナの功績として残すためだけに作られたものだと
リリアの精一杯のフィーナへの感謝の気持ちだと伝えてくれた。
勲章の裏には文字が刻まれていた。
「気高く優しい、私の最も尊敬する大好きな親友に送ります
リリア・ラテフィールからフィーナ・アルファドルへ」
気がつくと、フィーナは泣いていた
よかった、よかった
頑張ってよかった、リリアの頑張りが報われてよかった
リリアと友達になれてよかった
この勲章は、私にとって何物にも代え難い宝だ
フィーナは、王の御前であることを忘れて泣いた
王はそれを咎める事はなく、温かく見守っていた。
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